太陽光発電の導入は『工場立地法』でも有利?

今回は、工場立地法と太陽光発電設備の関係性についてご紹介していきたいと思います。工場立地法は、簡単に紹介すると「工場の建設時は、公害や環境破壊などを防ぐため、積極的に地球の環境づくりに参加しましょう」という法律で、ある一定以上の工場を建設する際には、工場敷地面積に対する生産施設の面積制限と、一定規模の緑地、環境施設の確保を義務付ける法律となっています。つまり、一定の規模以上の工場を建設する場合は、いくら生産設備を増やしたいと考えていたとしても、緑地と環境施設の確保が必要なため、自由に生産施設を作れる訳ではないのです。
しかし、平成22年6月30日より、太陽光発電設備が工場立地法上の環境施設に位置づけられるようになりました。これによって、太陽光発電設備の面積相当分が環境施設面積に参入でき、工場の新設・増設時には敷地をより有効活用することが可能となっています。さらにこの変更によって、制度施行前に設置された太陽光発電設備も対象となりました。工場の敷地をより有効活用するためには最新の法の内容を理解しておいた方が良いでしょう。
そこで今回は、工場に太陽光発電設備を導入すると、工場立地法的にどのようなメリットが得られるのかを紹介したいと思います。

工場立地法のおさらい

それではまず、簡単に工場立地法がどのような法律なのかをおさらいしておきましょう。詳細は以前『工場立地法ってご存知ですか?いつ、なぜ出来たのかを知っておきましょう!』という記事内でご紹介していますので、そちらもご参照ください。
この法律は、冒頭でもご紹介したように、一定以上の規模を持つ工場に、積極的に地球の環境作りへの参加を求めるものであり、法律内で生産施設の面積制限をするとともに、緑地や環境施設を設けることを義務付けたものです。この法律の目的や対象は以下のようになっています。

目的
工場立地の段階から周辺の生活環境との調和を保つ基盤を整備し、公害の発生をしにくくする体制を整えさせることにより、早い段階での生活環境の保全を図ることを目的とする。
対象
◆業種: 製造業、電気供給業、ガス供給業及び熱供給業(水力発電所、地熱発電所及び太陽光発電所 は除く) かつ
◆規模: 敷地面積 9,000㎡以上 又は 建築面積 3,000㎡以上
届出義務
生産施設面積や緑地の整備状況について、工場が立地している都道府県、市に対し届出。
(届出から90日間は着工不可。但し、自治体の判断で短縮可。)
勧告・変更命令・罰則
準則に適合しない場合、是正の勧告を実施。勧告に従わない場合は、変更命令を実施。
変更命令に違反した場合等に、罰則規定あり。
参考資料:経済産業省 工場立地法における緑地及び環境施設について

工場立地法の面積要件


引用:経済産業省 工場立地法における緑地及び環境施設について

工場立地法の面積要件は上図のようになっています。生産施設とは、その名前からも分かるように、物品の製造や加工・修理を行う施設のことを指しており、業種によってパーセンテージは変わります。環境施設については、どのような物かいまいち分からないという人も多いかもしれませんが、これは「噴水や水流など、景観をよくする施設や屋外運動場や体育館」など、周辺地域の生活環境の保持に寄与する施設と認められるものが該当します。
つまり、工場立地法によって、工場敷地面積に対して25%以上の環境施設が必要になり、そのうち緑地は最低でも敷地面積の20%以上が必要になるということです。このような制限は、『工場の生産性』だけを考えた場合、『緑地・環境施設の確保が障壁となり、生産施設を広げることができない…』といった課題もあり、工場の生産性向上の足かせになることも少なくないでしょう。さらに、環境施設や緑地の整備は、景観を保つための除草作業や水やりなど、維持管理も必要になり、企業側はコスト負担を強いられてしまうものです。

太陽光発電設備が環境施設に

上記のような課題がある中、2012年に工場立地法の一部が改正され、産業用太陽光発電設備も環境施設として認定されるようになりました。

平成24年の一部改正
東日本大震災による電力需給逼迫等を契機に、エネルギーを巡る内外の経済的社会的な環境の変化が見られ、再生可能エネルギーを利活用することの重要性が一段と高まってきたことを背景に、太陽光発電施設の設置件数は急激に増えてきた。さらには、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」(平成23年8月30日法律第108号)の施行を控え、国内各地で設置に向けた積極的な動きが見られたことから、「工場立地法施行令」を改正し、電気供給業に属する発電所で太陽光を電気に変換するものについては、工場立地法上の届出対象施設から除外するとともに、施行規則を改正し、売電用の太陽光発電施設についても環境施設に位置付けることとした。
引用:工場立地法解説 P.18

この法改正により、工場の屋根や屋上などで売電用に設置した太陽光発電設備も環境施設として位置づけられるようになり、工場立地法の制限に課題を抱えていた企業にとっては、大きなメリットを得られるようになりました。
工場立地法の制限は、上述のように企業の生産性向上を考えた場合、大きな足かせになることもあります。特に、環境施設に定義されている『噴水や運動場、広場』といったものは、景観の向上やストレスの発散などの効果は見込めるものの、工場の生産性向上を考えた場合、そこまで魅力のある施設とは言えないものです。そこで、環境施設として太陽光発電設備を導入することで、さまざまなメリットが享受できるようになるのです。

太陽光発電設備を導入するメリット

工場の屋根や屋上に太陽光発電設備を導入する場合、企業にとって以下のようなさまざまなメリットが得られると考えられます。

  • 太陽光発電で発電した電気を利用することで、電力会社から購入する電気量を減らすことができ、工場のランニングコスト削減が見込める
  • 太陽光発電で発電した電力を売電することで、新たな収益モデルとなる
  • 災害時の非常電源として利用できる
  • 太陽光発電設備の面積が環境施設として計算されるため、従来は環境施設用のスペースとして確保せざるを得なかったものを、生産施設の増設や事務所など、その他施設のスペースとして活用できる
  • 環境に取り組む企業としてイメージアップにつながる

生産施設の屋上などに太陽光発電設備を導入することで、今までは環境施設のスペースとして確保しなければならなかった場所を、その他の用途で有効活用できるようになるというメリットがあります。他にも、太陽光発電の電力を活用できるため、工場のランニングコストの削減にも役立ち、環境に優しい発電方式のため『環境に取り組む企業』とCSR活動の一環として企業イメージアップにも可能となります。

しかし、太陽光発電は上記のような大きなメリットがある一方で、導入のために初期投資費用がそれなりにかかるということや、定期的な清掃やメンテナンスが必要になるという点は無視できません。特に、産業用の太陽光発電の場合、規模も大きくなるため、その分、導入費用も高額になってしまします。さらに、発電量が天候に左右されることもあり、想定した電力を確保できない…など想定外の事態もある程度考慮しておく必要があるでしょう。

まとめ

今回は、一定規模以上の工場に対してさまざまな制限をかける工場立地法と、太陽光発電設備の関係性についてご紹介してきました。本稿でご紹介したように、一定規模以上の工場となると、自由に工場建設を進めて良いわけではなく、生産施設や緑地、環境施設など、さまざまな面積要件に従わなければなりません。企業からすれば、生産施設が広ければ広いほど、生産性の向上が期待できるわけですから、できるだけ生産施設を拡大をしたいとの希望があるでしょう。しかし、工場立地法の関係上、諦めざるを得ない場合もあるのです。
そこで、こういった課題を解決できるかもしれない手法が、工場に太陽光発電設備を導入するという方法です。生産施設の屋根や屋上などに太陽光発電設備を導入すれば、それが環境施設に計算されるようになり、その他のスペースを生産施設の増築に運用することも可能になるのです。もちろん、太陽光発電設備の導入には、それなりのイニシャルコストがかかりますので、導入後に得られるメリットとよく比較すべきだと考えます。しかし、太陽光発電設備は、スペースの有効活用以外にも、ランニングコストの削減や企業のイメージアップなど、多くのメリットが享受できるものですので、検討の余地があるのではないでしょうか。

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