需要増が続く物流倉庫とは?定義や業務内容など解説

今の時代、ネット通販で手に入らないものなどないと言えるほど、EC市場では多種多様な商品が取り扱われるようになっています。実際に、経済産業省が公表した「電子商取引に関する市場調査の結果」によると、国内のEC市場規模は右肩上がりの成長を続けており、今後もさらなる成長を続けると予想されています。

引用:経済産業省「電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました

このような状況の中、EC市場で取引される商品を安全に保管し、さらに顧客の手元に素早く届けられるようにする施設として物流倉庫の需要が年々増加していると言われています。一般的に、『倉庫』と聞くと、「今すぐに使用しないものを一時的に保管しておくための場所」と言うイメージで、出来るだけ多くのモノを保管できるスペースが求められる施設と考える方が多いでしょう。しかし、EC市場の拡大と配送サービスの多様化が進む現在では、倉庫は単なる保管スペースとして存在するだけでは、その役割を満たせなくなっています。このような状況下で、急激な需要増が続いている施設が『物流倉庫』と呼ばれる存在なのですが、この倉庫が通常の倉庫と何が違うのかいまいち分からないという人も多いと思います。
そこでこの記事では、物流業界で年々その存在感を増している物流倉庫について、この施設の定義や物流倉庫に求められている業務内容を解説していきます。

物流倉庫とは?

それではまず、年々、需要増が続いていると言われる物流倉庫について、これが通常の倉庫と何が違うのかについて簡単に解説しておきましょう。

冒頭でご紹介したように、倉庫の役割と言うのは、すぐに使用しないモノを『一時的に保管しておく』ことになります。例えば、売れる前の製品を保管しておくことや、何らかの製品を製造するための部品を保管しておくといった役割をイメージしていただければ良いと思います。
もちろん物流倉庫に関しても、通常の倉庫と同じく『さまざまな物品を保管する』という役割りはこなします。しかし物流倉庫の役割はこれだけでなく、商品が生産者から消費者の手に渡るまでの過程の中で、仕分けや流通加工、梱包に発送などと言ったことまで行う施設になります。つまり、物流倉庫は、単に顧客から商品を預かるだけでなく、『入庫・棚入れ・保管・流通加工・出庫』と言ったさまざまな役割をこなす施設を指していると考えてください。

なお、かつては商品を安全に保管することを目的とした倉庫も物流倉庫と捉えるケースもありましたが、現在では、より効率的でより安全な在庫管理や商品管理、配送などができるようにシステム化され、物流に関する多岐にわたるサービスを提供できる施設を物流倉庫と定義するようになっています。

物流倉庫の業務内容について

それでは、年々需要が高くなっていると言われる物流倉庫について、この施設がどのような業務を担っているのかについて解説しておきましょう。物流倉庫の業務内容は、簡単に「生産者から預かった商品を消費者のもとへ、正しく・安全に届けるまでの過程を執り行っている」と言えます。
一昔前までは、自社で製造した製品について、保管から配送までを製造メーカー自身が行うケースも珍しくありませんでした。しかし、自社で倉庫を保有し、こういった業務を担うことになると、施設の維持費はもちろん、物流業務に関わる人件費や光熱費、さらには商品を守るためのセキュリティ費など、多額の経費が掛かってしまうことになります。したがって、こういった経費負担を軽減する目的で、製品の保管から配送までを物流会社に依頼するという形態が増えており、商品を消費者の手元に届けるまでの一連の作業を行うための施設として物流倉庫が建てられています。

物流倉庫では、主に以下のような業務が行われています。

  • 入庫作業
    まずは顧客から預かる商品の入庫作業です。物流倉庫の入庫作業は、単に空きスペースに商品を保管していけば良いというわけではなく、商品特性に合った場所に保管しなければいけません。例えば、商品の品質を保てるようにや出荷頻度を考えた場所になど、商品ごとに適切な保管場所に置きます。なお、保管する商品について在庫や入荷日などの管理も行います。
  • 検品作業
    次は検品作業です。基本的に、商品が入庫する際に、商品の破損や傷、箱などに凹みが無いかなど、保管する物品に合わせて異常の有無を検査します。
  • 流通加工
    あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、物流倉庫の重要な業務として流通加工があります。これは、流通過程でのお客様のニーズに合わせた加工を行うことです。例えば、アソートや値付け、詰め合わせやラベル貼りなど、商品ごとに必要な加工を行います。
  • ピッキング
    物流倉庫の業務として一番に思い浮かぶのがピッキングだと思います。これは、注文伝票などにしたがって、保管場所から必要な商品を指示された数量、取り出す作業となります。
  • 仕分け作業
    ピッキングで取り出した商品を、お客様ごとに仕分ける作業となります。
  • 梱包作業
    仕分けが完了した商品を安全に配送できるように梱包します。例えば、割れる可能性がある商品については緩衝材などで包み、箱の中で商品が動かないようにスペースの調整をするといった作業も行います。
  • 出庫作業
    最後に、商品の個数や色違いなどの間違いがないかチェックし、商品を送り出します。

物流倉庫は、上記の一連の業務を請け負っており、安全に商品を保管するだけでなく、注文があった際に素早く・正しく商品の発送までを実現する施設となっています。

まとめ

今回は、EC市場の拡大に伴って、年々その存在感が増していると言われている物流倉庫について、物流倉庫の定義やどのような業務が行われているのかについて解説してきました。

倉庫と聞けば、「なんらかの物品を保管しておく施設」と言うイメージが非常に強いと思うのですが、物流倉庫は、単なる保管スペースとしてだけでなく「お客様の手元に正しく・安全に商品を届ける」ためのさまざまな業務まで請け負っている施設になります。今の時代、大手通販サイトでは「注文の次の日には商品が手元に届く!」と言った配送面のサービスで差別化を行うようになっており、一企業の配送部門だけでは通販業界の配送サービスについていけないような状況になっています。したがって、注文に即座に対応ができるような体制を作るため、配送面に関しては専門の物流会社の手を借りるというケースが多くなっているのだと思います。

EC市場に関しては、今後もさらに市場規模が拡大していくと予想されていますので、物流倉庫の重要性もさらに増していくのではないでしょうか。