五輪需要でハイテンションボルトが不足!?「あって当たり前」な建設業界では工期遅延も発生!

今回は、いつもとは少し趣向を変え、『建設業界ニュース』として、現在建設業界で深刻な問題となっている『ハイテンションボルト(高力ボルト)』の不足についてご紹介していきたいと思います。
「ハイテンションボルトの不足が深刻!」と聞いても、建設業界にたずさわる人でなければ、何がそこまで問題なのか理解できない人も少なくないでしょう。しかし、このハイテンションボルトは、鉄骨の建築物などで、鋼材を接合するのに用いる部材であるため、ボルトの仕入れができなければ予定している工期で建物を建てることができなくなってしまうなど、建設現場からすれば非常に深刻な問題となるのです。
さらに、事業拡大を目的として倉庫や工場の建設を計画したとしても、通常の工期で建設が進まない可能性が高く、せっかくの売上拡大のチャンスを逃してしまう可能性まであるということです。現在は、『建築物の工期遅れ』など、建築業界内の問題としてとらえられている「ハイテンションボルトの不足」ですが、このままの状況が続けば、さまざまな業界にまで悪影響を及ぼす可能性すらある、非常に深刻な問題ととらえるべきものといえるのではないでしょうか?
普段であれば「あって当たり前」のハイテンションボルトが、ここまで不足してしまう理由は何なのでしょうか?

ハイテンションボルトの需給動向について

それではまず、ハイテンションボルトがどれだけ不足しているのか、国土交通省が行った需要動向調査についてご紹介しておきましょう。この調査は、平成30年10月25日~11月2日の間に全国の「鋼材関係を取り扱う供給側及び需要側」558社に行ったハイテンションボルトの需給動向などに関する調査です。この調査で発表された結果は以下の通りです。

○需給ひっ迫、納期長期化の要因としては、再開発を含めた建築等の需要が旺盛なこと、ボルトメーカーに対する材料供給が追いついていないことが主な要因とする声が聞かれた。
○高力ボルト(全般)の納期は、通常時の約1.5か月程度から約6か月程度まで長期化している。
○納期延期により工事工期に影響を受ける場合は、受注者と発注者で工期変更含めた調整して対応しているものもある。
引用:国土交通省 「高力ボルトの需給動向等に関するアンケート調査」の結果

これからも分かるように、全国的にハイテンションボルトの不足が深刻化しているのです。当たり前のことですが、1本でもボルトが足りない場合は、鉄骨を組み上げることができませんので、ボルトの不足が原因となり、工事工期の変更などの対応が必要になるのです。そもそも、通常納期であれば1.5カ月程度で手に入るハイテンションボルトが、4倍に相当する約6カ月程度まで長期化すると、ほとんどの現場で工期に影響が出てしまいます。
現在もハイテンションボルトの不足は続いていますし、解消にはまだまだ時間がかかると予想されていますので、しばらくは十分に注意が必要でしょう。

ハイテンションボルトが不足している理由

それでは、ハイテンションボルトがここまで不足している原因はどのような理由があるのでしょうか?上述した「高力ボルトの需給動向等に関するアンケート調査」で得られたいくつかの回答をご紹介します。

●東京オリンピック、大型再開発など、ここ数年建築の物件が多く、鉄骨需要が旺盛な状況が続いている
●ボルトの材料となる鋼材の供給が追いつかず、ボルトメーカーの生産がボルトの需要に追いついていない
●ボルトの材料となる鋼材は「自動車」、「機械」、「建設」で使用されているが、「自動車」、「機械」が好調であるため「建設」に回る量がボルトの需要に追いついていない
引用:国土交通省 「高力ボルトの需給動向等に関するアンケート調査」の結果

ハイテンションボルトの不足は、来年にせまった東京オリンピックの関連施設など、建設業界の好調な建設需要も関係していると言われています。
さらに、建設需要が高まる一方で、ハイテンションボルトの母材となる特殊鋼線材が不足してしまっていることも原因の一つといわれています。特殊鋼線材は、自動車生産に使う鋼材の母材にもなるもので、現在、堅調に推移する自動車業界でも特殊鋼線材の需要が高まっているのです。したがって、本来ハイテンションボルトに回されていた鉄源まで自動車生産に回され、建設に必要不可欠なハイテンションボルト用の母材が十分に回らなくなっていると言われています。他にも、2008年のリーマン・ショックによってハイテンションボルトを製造するメーカーの撤退や再編が進み、そもそも国内の生産力自体が縮小して、生産が追い付いていないという見方もあるようです。
このような状況の中、アンケート調査に回答した企業の83%は、「工事工期に何らかの影響がある」と答えており、その対応策として「工事工期や工法の変更等を官民発注者と協議する」や「必要分のボルトを早期発注する」などの対策が進められています。

まとめ

今回は、建設業界ニュースとして、倉庫や工場の建設には欠かせないハイテンションボルトが、全国的に不足しているということについてご紹介してきました。本稿でもご紹介しているように、五輪需要もあり好調な推移を見せる建設業界ですが、昨年夏ごろよりハイテンションボルトの不足が深刻な問題となっております。実際に、昨年の10月ごろには、完了する予定の物件がボルト不足だけのために完成せず、完成検査を受けることができないという報告も複数あり、国土交通省が緊急で調査を行ったほどです。
一般の方の感覚からすれば「ボルトが無いから工事が進まない…」といわれても、にわかには信じられないかもしれませんが、上述のように自動車業界など、他業界との兼ね合いもあるなど、さまざまな要因が重なり現在の状況にまで発展しているのです。さらに、今後もしばらくの間はハイテンションボルトの不足問題が解消しないとの予測が出ているため、工場や倉庫の建設・増設・建替えを検討している企業は十分な注意が必要になるでしょう。ハイテンションボルトは、どこにでもある小さな部材に見えますが、建設用鋼材をつなぎあわせるボルトが足りなければ工事自体が進みませんので、今後もボルトの需給動向は注視しなければいけません。
ちなみに、住宅業界をみても、屋根材や外壁材のトップメーカーであるケイミュー社が2019年2月1日より、一部商品の値上げ(約15%)に踏み切っています。これも鉄源の需要が高まって鋼材の価格が上がったことが原因の一部とも言われています。さらに、今後も工場や倉庫はもちろん、一般住宅の屋根に利用されることが増えている『次世代ガルバリウム』の値上げが予想されているなど、鋼材の不足は広範囲に影響が出てくるかもしれません。

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