ガソリン燃料高騰!物流業界への影響は!?

最近では、テレビなどのニュースを見ていると、毎日のようにガソリンや軽油、灯油など、燃料の高騰に関する情報を耳にするのではないでしょうか?大阪や東京など、都市部で暮らしている方であれば、公共交通機関を移動手段のメインにしており、自動車を所有していないという方が増えていますので、燃料費の高騰に関しては「自分にはあまり関係が無い」と感じてしまっている方が多いかもしれません。

しかし、地方都市などは、移動に自動車が欠かせない場所が多いですし、ガソリン代の高騰に頭を悩ませている方は非常に多いようです。さらに、忘れてはいけないのは、日本国内の物流はトラックによる輸送が主役となっており、今回の燃料費高騰は、いずれ一般人の社会生活に大きな影響が生じると予想されています。さまざまな移動手段が存在する現在ですが、高速道路網が整備されている日本は、トンキロベースでの輸送機関分担率はトラックが50%以上を占めています。つまり、荷物を運搬する際には、多くの化石燃料が使用されることになるわけですので、今回の燃料費高騰が物流企業に大きなダメージを与えることになり、いずれ商品の値上げなどとして一般人の生活に影を落とすことになるわけです。実際に、2021年秋ごろより、さまざまな製品の値上げが公表されており、2022年4月以降も、生活必需品の値上げを公表しているメーカーは多いです。

そこでこの記事では、誰もが気になるここ最近の燃料費高騰について解説していきたいと思います。

参照:データで分かるトラック輸送

昨今の燃料代高騰について

それではまず、昨今の燃料代高騰について、どのような価格推移をしているのか、またこれほどまでのガソリン高騰がなぜ起きているのかなど、燃料代高騰周囲の情報を簡単にまとめておきましょう。通勤などで自動車を利用している方であれば、ガソリンが急激に高騰しているという実感があると思います。以下に、ここ5年間におけるガソリンと軽油の価格推移をご紹介しておきます。

■ここ5年間のレギュラーガソリン価格推移
画像出典:e燃費「ガソリン価格 推移期間」より

■ここ5年間の軽油価格推移
画像出典:e燃費「ガソリン価格 推移期間」より

このグラフから分かるように、2020年5月ごろ以降、ガソリンや軽油と言った燃料費は、恐ろしいほど急激に高騰しています。一般の方であれば、自動車の利用を控えるなど、多少は調整できますが、物流業界などにおいては、燃料コストが高騰しているから「荷物を運ばない!」と言ったような対処などできるはずもなく、現在では「荷物を運べば運ぶほど赤字が出てしまう…」と言うような悪夢のような状況になっていると言われています。

燃料代高騰の原因は?

それでは、2020年以降続く、急激な燃料代の高騰について、なぜこのような現象が起きているのかという問題についても簡単に触れておきましょう。今回の燃料費高騰については、値上がりし始めた時期を見て原因を想像できた方もいると思います。実は、この燃料費高騰に関しても、新型コロナウイルス問題が一つの要因になっていると言われています。
上のグラフからも分かるように、2019年末以降は、ガソリン価格が急激に下落していたのですが、ここで新型コロナウイルスを起因とした世界的なパンデミックが発生しました。そして、コロナウイルス問題により世界経済が混乱の一途をたどり、未知のウイルスに対抗するため、世界各国はロックダウンなどの非常に強い措置をとったことで、一時的に経済活動がストップしてしまうという状況になりました。この影響により、石油の需要が急激に減少し、原油余りから原油価格が急落、産油国が大打撃を受けてしまったわけです。

その後は、皆さんもご存知の通り、世界中でワクチン接種が進んだことから、世界経済は再び回り始め、原油需要が急速に回復し、小売価格が大幅な上昇を見せ始めたというのが現状です。そもそも、コロナウイルス問題発生以前から、地球温暖化防止対策として世界が脱炭素・脱石油に大きく舵を切っていたことから、産油国は石油消費量の先行きが不透明と言う理由で、石油採掘に対する投資を抑制する方向となり、石油の供給量が不足していると言われていました。

ここに、コロナ問題が発生し、石油需要の先行きはさらに不透明化が進んでしまったことで、産油国は世界各国から増産要請があったとしても、大規模な増産には動かないという状況だそうです。これが、現在の原油高騰の大きな要因で、経済が回り始め、世界中で石油の需要が高まっているものの、産油国が増産に動かないことから、需要と供給のバランスが崩れ、価格高騰が止まらないという状況です。

燃料代高騰への日本政府の対応について

ガソリンや軽油、灯油などは、私たちの日常生活に欠かせない製品でありますし、これほどまでの急激な価格高騰は、多くの人々に多大な悪影響を及ぼしています。そのため、日本政府へガソリン価格を抑えるための対策を急いでほしいという声が各所から上がっているのは皆さんもご存知だと思います。テレビや新聞などでも、燃料費高騰については毎日のように報道されていますし、「トリガー条項がうんぬんかんぬん」と言った情報を見かけることも多いですね。

そして、2022年3月4日付で、「原油価格高騰に対する緊急対策について」という資料を公表しています。今回の対策では「石油元売り事業者に対する支給上限を、5円から25円に拡充。」と言うのが最もわかりやすい対策となります。要は、ガソリンや軽油・灯油・重油の元売り会社に補助金をつけ、ガソリンがこれ以上高騰するのを防ぐといった対策のようです。

なお、3月13日には「当面ガソリン価格を172円に維持する」と言う岸田首相の演説があったことからも分かるように、日本政府としては、あくまでも燃料価格の「これ以上の高騰を防ぐ」というのが目標で、燃料価格の下落はあまり期待できないのではないかと考えられます。日本政府による「原油価格高騰に対する緊急対策」のリンクを貼っておきますので、ぜひ確認しておきましょう。

> 国土交通省「原油価格高騰に対する緊急対策

物流業界の動きについて

ここまでは、ガソリンや軽油の急激な高騰の背景にあるものや、日本政府の対応について簡単に解説しました。それでは、昨今の燃料費高騰は、物流企業にとってどのような影響があるのでしょうか?

正直な話、トラックによる運送をメインとした物流企業であれば、荷物を運ぶだけで燃料を消費するわけですので、これほどまでの燃料費高騰は企業の存続にかかわる大問題となっていることでしょう。実際に、あるインタビュー記事によると、中小の運送企業であれば燃料が1円上がるだけでかなりの負担増となってしまうとされており、これほどまでの燃料費高騰があれば、自社内だけでコストアップ分の吸収は不可能で、今後は荷主側への価格改定をせざるをえないのではないかと予想されています。運送コストが上昇すれば、当然、商品の価格に上乗せされていきますので、人々の日常生活に非常に大きな影響が生じてしまうでしょう。

なお、政府が講じている燃料代抑制対策がほとんど効果を見られないこともあり、全日本トラック協会が「燃料価格高騰対策特設ページ」なるものを作成し、適正な運賃・料金の収受、燃料サーチャージに理解を求めるための活動を行っています。

燃料サーチャージは、「燃料価格の上昇・下落によるコストの増減分を別建ての運賃として設定する制度」とされており、昨今の急激な燃料価格の変動で物流企業が受ける負担を軽減するための非常に効果的な取り組みになるのではないかと考えられます。燃料サーチャージについても特設ページが作られていますので、ぜひ確認しておきましょう。

> 全日本トラック協会「燃料サーチャージについて

まとめ

今回は、昨今の燃料代高騰について解説してきました。昨年から続く燃料代の高騰は、世界中で地球環境保全のため、脱炭素社会が目指されるようになっており、石油が減産傾向にある中でコロナ問題が発生し、需要と供給のバランスが崩れてしまったことが大きな要因だと言われています。ちなみに、今回の燃料費高騰について、多くの方は「いつガソリン価格が下落し始めるのか?」が気になっていると思いますが、現在のところ、下落する想定が付かず、今後も高騰を続けるのではないかと言う衝撃の予想になっています。と言うのも、世界が新型コロナウイルスによる経済的ダメージから未だ回復していない中、ロシアによるウクライナ侵攻が始まってしまい、世界情勢は今後さらに混とんとしてしまうと予想されているからです。

日本政府では、石油元売り事業者に補助金を出すという方法で、価格上昇の抑制を目指していますが、思ったような効果が出ていないのではないかと言われるようになっています。更に、もともと日本は、ガソリンなど自動車関連にかけられている税金が高すぎるのでは…という議論があり、今回の燃料高騰により、自動車を取り巻く税金に注目が集まるようになっています。電気自動車など、ガソリンを必要としない車が登場していますが、ガソリン車と同じように公道を走行するのに、「主に道路整備の財源に使用される」ガソリン税を支払わないのは不公平なのではないかと言う論調も出てきています。

いずれせよ、ガソリンや軽油価格は、しばらく高止まりすると予想されますので、多くの燃料を必要とする物流企業は、コストアップ分をどこで回収するのか慎重に検討しなければならないでしょう。