基礎から学ぶ製造業のサプライチェーンマネジメント

企業のグローバル化が進む現在では、「全体最適」を目指す経営管理手法の『サプライチェーンマネジメント』が再注目されるようになっています。サプライチェーンマネジメントは、2000年頃に一大ブームになったという記憶がある方が多いと思いますが、人手・人材不足がさまざまな業界で深刻化している今、業務プロセスの中にある無駄を可能な限り省き、効率化を目指せる管理手法として再注目されていると言われています。

そこでこの記事では、製造業に関わる方がおさえておきたい『サプライチェーンマネジメント』の基礎知識を解説していきます。

サプライチェーンマネジメントとは?

「サプライチェーン(Supply Chain)」は、日本語にすると「供給の連鎖」という意味で、製品やサービスを開発・生産し、それが顧客の手元に届くまでの一連の流れのことを指しています。そして、製造業界では、原材料から製品に加工され、流通、販売を経て顧客の手元に届くという一連の流れがありますので、製造業を営むということは、まさにサプライチェーンに参加するのと同義と考えなければいけません。

それでは、昨今再注目されている『サプライチェーンマネジメント』とはどういったものなのでしょうか?

『サプライチェーンマネジメント』は、原材料の調達から製造、流通、販売までの流れをサプライチェーンとみなし、業務プロセスの最適化を目指していくというマネジメント手法です。例えば、現代のモノの一連の流れを考えてみると、自社だけで全てが完結するようなケースは少ないです。メーカーであれば、企画・開発や製造は自社で行うものの、エンドユーザーへの販売については、配送業者や卸業者・小売業者を介すのが一般的になっています。さらに、原材料や部品の調達に関しても、自社ではなく専門商社や協力業者に頼ることが多いでしょう。

つまり、サプライチェーンに関わる人間の側面で考えた場合、「サプライヤー → メーカー(自社) → 流通事業者 → 卸売事業者 → 小売事業者 → エンドユーザー」という一連の流れになります。ただ、情報やお金の流れについては、サプライチェーンを逆方向に流れることになります。
サプライチェーンマネジメントは、こうしたモノの流れやお金の流れを情報の流れと結びつけることで、サプライチェーン全体で情報を共有・連携し、全体の最適化を図るための手法となります。

『サプライチェーンマネジメント』では、サプライチェーン全体のバランスを見て連携管理することが非常に重要です。と言うのも、モノの流れを最適化させるには、サプライチェーンに参加する各企業が、『いつ・どこで・何を・どれだけの量を・調達するのか・製造するのか・届けるのか』と言った需要予測を共有しながら生産・流通・在庫管理を行っていく必要があるからです。
サプライチェーンマネジメントとは、サプライヤー、メーカー、流通業者、小売業者の関係性を個別に最適化するのではなく、サプライチェーン全体として統括し、最適化を図る手法です。

なお、サプライチェーンマネジメントが再注目されている理由について、以前別の記事で解説していますので、そちらもぜひご参照ください。

関連記事:再注目されているサプライチェーンマネジメント(SCM)とは?今、注目される背景や導入のメリットについて

サプライチェーンマネジメント導入のメリット

それでは、製造業の企業がサプライチェーンマネジメントを導入した場合に、どのようなメリットが得られるのかについても解説していきましょう。

メリット① 過剰在庫を回避できる

サプライチェーンマネジメントは、「いつ・どこで・何が・どれだけ必要か」と言う需要予測が行えるようになり、在庫管理情報と組み合わせることで、適正な在庫量や仕入れ量、製造量の見える化が実現できます。

その結果、製品はもちろん、原材料などの面でも過剰在庫を抱えてしまうリスクを回避することができ、無駄な保管費用や材料費などの支払いを防ぐことができ、資金繰りの悪化と言った経営上のリスクを回避できます。

メリット② 的確な経営リソースの投入ができる

サプライチェーンマネジメントによって、市場からの需要を的確にキャッチすることができるようになりますので、販売計画や生産計画を最適化することができます。

その結果、人手や経費と言った経営リソースを、的確に必要な場所に投入することができるようになると言われています。少子高齢化などの影響もあり、さまざまな業界で人手・人材不足が深刻化している中、サプライチェーンマネジメントが再注目されている要因はこの部分のメリットにあるとも言われています。

メリット③ 需要変動に柔軟に対応できる

近年は、SNSなどの発達もあり、顧客ニーズの変化が早まっていると言われています。実際に、テレビなどを見ていると、次から次に新たなモノが流行しているという情報が流れてきて、実際に何が流行しているのか正確につかむことすら難しくなっているような状況です。

サプライチェーンマネジメントを導入すれば、市場の情報から、在庫量や投入リソースを最適化することができるようになりますので、急速な需要変動にも柔軟で機敏な対応が可能になるとされています。人々のニーズが急速に変化する中、不用な在庫リスクを抱えることなく、的確にリソースを投入することができるというのは非常に大きなメリットになるでしょう。

課題
サプライチェーンマネジメント導入は、上記のように、製造業にとっては非常に大きなメリットがあるとみなされています。しかし、実際に導入を検討した場合には、さまざまなシステムの導入が必要になるわけですので、初期にかかるコストが莫大になってしまうという点が課題です。
さらに、サプライチェーンマネジメントは、自社内だけの問題で解決することができず、サプライチェーンの関係者全体で取り組まなければ意味がないという点も大きな課題になっています。原材料の調達から商品が消費者に渡るまでの生産・流通プロセス全体で情報の一元管理をしなければならないのですが、言葉で言うほど簡単なことではありません。

まとめ

サプライチェーンマネジメントは、原材料の調達から製造・流通・販売など、製造業者から顧客までのモノの一連の流れを包括的に管理する取り組みとなります。当然、常に特定のやり方が決まっているわけではなく、取り組む企業によって注意すべきポイントや行わなければならないことは変わってきます。

サプライチェーンマネジメントの本質は、消費者の行動や市場動向を的確かつ迅速につかみ、売れる製品を売れる量だけ製造するという需給最適化を実現するための手法です。現代社会は、消費者のニーズが多様化しているだけでなく、常にニーズが急速に変化していってしまう時代なので、サプライチェーンマネジメントの重要性は今後さらに増していくのではないでしょうか。