食品工場で起こりやすい異物混入とは?その原因と対策も考えてみましょう。

どの業界についても言えることではあるのですが、その中でも食品工場での『異物混入』は絶対にあってはいけませんし、万一、異物混入があった場合には致命的な事件にまで発展する可能性があります。日本では2021年6月にHACCP(ハサップ)が完全義務化となり、食品を取り扱う業界での衛生管理については、非常に厳しい目が向けられるようになっています。
もちろん、食品工場などでは万全を期して非常に厳しい品質管理・衛生管理体制が整えられているものなのですが、21世紀になった現在でも食品への異物混入事件は完全になくなってはいません。実際に、大手ファーストフード店で提供された商品に、人間の歯のようなものが混入しているのが見つかりSNSで大炎上したことや、学校給食で髪の毛やクリップなどの異物混入が確認され給食の停止をするなどの事例があります。
このような、品質管理に潤沢な予算を使えそうな大手企業でも異物混入をなくせない理由とはどのようなものがあるのでしょうか?本稿では、食品工場における異物混入に関して、どのような場面で発生するものなのかや、その対策についてご紹介していきたいと思います。

食品工場で起こりやすい異物混入とは

それでは最初に、食品工場などで発生しやすい異物混入についてご紹介しましょう。そもそも『異物』の定義とは何なのかという事についてですが、これには非常に幅広いものが当てはまります。簡単に言うと、「本来その食品に含まれているべきでない物」全てが食品でいう異物に当たり、過去の事例を考えても様々なものがあります。記憶に新しいものでは、冒頭でご紹介したような『歯』やインスタントラーメンに虫の死骸が混入していた、何らかの金属片が含まれていたなどが思い浮かびます。これらの異物は、本来食品に含まれていてはいけないものですが、様々な侵入経路を経てどこからか混入してしまうのです。
以下に、食品工場で考えられる異物とその混入経路をご紹介しておきましょう。

昆虫の混入について

食品工場で発生する昆虫の混入は、2つの経路が考えられます。例えば、食品加工中に、工場の中にいる昆虫がいつの間にか混入してしまうパターンと、加工食品に使用する野菜や肉に付着していた昆虫が処理不足で混入してしまうパターンです。食品工場内において昆虫の混入が発生した場合には、換気扇や通気口等、虫が工場内に入ってきやすい等の構造上の問題が考えられます。また、野菜等に付着した昆虫が食品に混入してしまう場合は、処理不足が原因となるので、品質管理や衛生管理体制の見直しが必要でしょう。

金属片など鉱物性の異物混入

針金や釘、プラスチック片などの異物混入も食品工場では考えられます。金属片等の鉱物性の異物は、工場内で使用している様々な機械が経年劣化を起こし、部品の一部が欠けて混入したり、塗装片が混入したりすることが考えられます。鉱物性の異物は、人が口にした際に口内や体を傷つける恐れがありますし、乳幼児などが飲み込んだ場合には命の危険まである非常に恐ろしいものです。このような異物混入を防ぐには、機械類の定期的な点検・清掃、パッケージなどの開封手順のマニュアル化などを徹底する必要があります。

カビやホコリの混入

カビやホコリなどの混入も、食品を口にした人の健康被害に繋がる非常に危険な異物です。さらにカビの混入などは、混入場所や時期の特定が非常に難しい為、大量の商品の自主回収が必要になる可能性もあります。
そもそも、カビやホコリが混入してしまうような状況であれば、食品加工に適さない環境になっているといえます。その為、こういった問題が1度でも生じた場合には、施設内の清掃はもちろん、設備の更新や管理体制など根本的な部分から見直しが必要になります。

従業員の髪や爪が混入

食品工場などであれば、様々な人がいろいろな工程で作業に関わります。その為、作業中に髪の毛が混入する、いつの間にか爪が割れて混入したかも…などといった事も考えられます。工場内で勤務する従業員は、異物混入を防ぐためにも、爪や髪の長さに注意し、お互いにチェックする体制などを作る必要もあると言えるでしょう。また、工場内で使用する制服や白衣なども、古くなりすぎてしまうと繊維くずが出やすくなるため、定期的なクリーニングはもちろん、管理と交換の仕組みづくりが重要となります。

異物混入を防ぐにはどうすれば良い

それでは、食品工場などで異物混入を防ぐためにはどのような対策を進めれば良いのかについて考えてみましょう。冒頭でもご紹介したように、品質管理や衛生管理に厳しい目が向けられるようになった現在でも、異物混入問題がしばしば発生するように「100%絶対に異物混入をさせない対策」という物は難しいでしょう。しかし、まずは水際で異物混入を防ぐという意識の元、従業員全体で何らかの対策に取り組んでいくべきと言えます。以下に代表的な異物混入対策をご紹介しましょう。

照明の明るさ・性能

異物を発見しやすくするためには十分な明るさが必要です。毛髪などの異物を見つけるためには1000ルクスの照度が必要です。
照明の設置については作業する人や機械が影になって、食品や手元が見えにくくなる可能性もあるため、照明を設置する場所や角度にも注意しましょう。

また、万が一照明が破損した場合でも破片が飛び散らないように飛散防止の機能がある照明、虫が寄ってこないようにLEDやUVカットランプなどの低誘虫照明を使用することもポイントです。

服装に注意する
食品工場などであれば、そこで働く従業員の異物混入対策を徹底する必要があります。当たり前のことですが、人体からの異物混入を防ぐための服装は重要です。清潔な制服、帽子、マスク、さらには靴など、身に着ける全ての物に注意を払う必要があるでしょう。食品品工場などで使用される帽子は、フードキャップなどとも呼ばれ、確実に頭をすっぽりと覆うように作られたものを使用しなければなりません。もちろん、髪の毛1本でも外部に出てはいけません。また、基本的に工場内での会話が禁止される食品現場ですが、指示などの会話は認められているため、唾液等が食品に飛ばないよう、きちんとマスクの着用を徹底しなければいけません。
これらのアイテムは、定期的なクリーニングや、新しいものへの交換のタイミングなども重要です。きちんとした体制作りを進めましょう。
食材の選別
昆虫等の動物性の異物混入は、原材料となる野菜や肉などに昆虫やその卵が付着して、外部から虫が侵入することもあるのです。その為、動物性の異物混入を防ぐには、原材料の丁寧な選別が重要です。主な対策としては、人力や機械に頼るしかありませんが、丁寧な洗浄、ふるいやメッシュなどを利用して野菜などに付着している異物を取り除くという方法を徹底しましょう。
機械の点検・整備
食品に直接触れる機械や包装のための加工機械など、製造ライン上にあるすべての機械のメンテナンスは非常に重要です。製造機械に劣化している部分はないか、耐用年数を超えて使用していないかなど、定期的にチェックを行いましょう。近年では、金属探知機やX線解析などを利用して異物混入の可能性がある箇所を検査する工場も増加しています。もちろん、このような対策は、大きな設備投資が必要になるのですが、異物混入による健康被害を防ぐには、メーカーの努力事項ではなく必須事項ともいえるような状況になってます。
その他
製品が完成するまで、様々な工程に分かれている食品工場などでは、それぞれの区画をきちんと定義することが大切です。そして、それぞれの区画に異物が持ち込まれないように対策を作るべきと言えるのです。例えば、作業員が区画に入る場合には、エアシャワーなどで体に付着したホコリやゴミをしっかりと取り除いた状態で入場できるような設備も必要になるでしょう。各区画では、それぞれ注意しなければならない異物も異なるため、区画の定義と、その区画内での対策をキチンと作るようにしましょう。

まとめ

今回は、食品工場において、起こりやすい異物混入と、異物混入を起こさないためにはどのような対策をすればいいのかについてご紹介してきました。食品を取り扱う業種であれば、徹底した品質管理や衛生管理を行っているもので、異物混入には細心の注意を払っていることでしょう。しかし、残念ながら21世紀になった現在でも、食品への異物混入を完全に防ぐ事が出来ていないのが現状です。食品工場などでの異物混入は、その経路が非常に多く、混入の可能性がある異物も広範囲にわたるため、完全に防ぐことはできないとも言われています。しかし、やはり人が口にするものですから、出来る限り100%に近づけるよう、異物混入対策を行っていかなければならないものです。
食品現場での異物混入を防ぐには、様々な対策を立てる必要がありますが、まずは製造・流通に携わる一人一人が「絶対に異物を混入させない」という意識改革から行っていく必要があるでしょう。

食品工場の異物混入対策でお悩みの企業様や、HACCPに対応した食品工場の建設、改修をお考えの企業様は三和建設へご相談ください。

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