今回は、世界中で深刻な問題となっている『食品ロス』について、日本のフードチェーンが行っている食品ロス削減のためのさまざまな対策についてご紹介していきたいと思います。
『食品ロス』とは、まだ食べられるのに何らかの理由で廃棄されてしまうことを意味しており、さまざまな面で豊かになった現在では、世界中の約1/3の食品が捨てられていると言われています。特に日本国内は、衛生面を重視する傾向があるため、飲食店で食べ残しがあった時でも持ち帰りをするような文化はあまりありません。しかし、諸外国の対応を見てみれば、アメリカでは食べ残し食品を持ち返ることが推奨されており、持ち帰り用の『ドギーバッグ』と呼ばれる容器をお店側が用意しておくのが一般的になっているそうです。
このような中、日本国内でも『食品ロス』の改善のため、『食品ロス削減推進法案』が国会に提出され、「早ければ今国会中に成立する見通し」などといったニュースが3月ごろより報道されていました。もちろん、食品ロスの問題に関しては、食品に関連する企業だけの問題ではありませんが、食品工場などのフードチェーンでは、食品ロスを減らすため、積極的な対策が求められています。
本稿では、日本国内における食品ロスの現状をご紹介するとともに、各企業で進められている食品ロス対策をいくつかご紹介します。
Contents
日本における食品ロスの現状と食品ロス問題を取り組みべき理由とは?
それでは、日本国内における食品ロスの現状からご紹介しましょう。食品ロスとは、冒頭でご紹介したように、まだ食べられるのにもかかわらず、賞味期限や形崩れなどを理由に廃棄されてしまうことを意味しています。つまり、食品ロスは、食品工場など、大量の食品を扱う施設だけの問題ではなく、一般家庭や小規模な飲食店で廃棄される食べ残しなども含んでいるのです。しかし、普段の生活の中で『食品ロス』のことを考えて生活しているような人はあまりいないのではないでしょうか?
日本では、2017年頃より「インスタ映え」なる言葉が流行語になるように、SNSで『いいね』を獲得するため、写真映えする料理を注文してほとんど食べずに写真だけ撮って廃棄するような行為も珍しくありません。また、コンビニやスーパーなどでは、恵方巻やウナギ、クリスマスケーキなど、季節的なイベント食品が大量に売れ残り、廃棄されてしまっているという話題もしばしば耳にします。
毎日お茶碗1杯分のご飯が捨てられている!
引用:農林水産省資料より
それでは、食品ロスに関する具体的な数字を見ていきましょう。消費者庁が公表した資料によると、世界で廃棄されている食品の量は、なんと年間約13億トンもの量になるそうです。これは、全世界で人が消費するために生産される食糧の約1/3に当たり、毎年それが捨てられているのです。日本国内にいるとあまりイメージできないかもしれませんが、世界の人口はどんどん増加しており、2050年には現在より20億人近く増加して97億人になるとの予測も出ています。そのため、将来的な資源枯渇や食糧不足は世界的に問題視されているのですが、現実はこれだけ多くの食品が無駄にされているのです。
そして日本国内の食品ロス問題に目を向けてみると、平成29年度の推計で約612万トンとなっています。これは国連世界食糧計画(WFP)の食糧援助量の1.5倍の量になります。
日本の食品ロス612万トンのうち54%が事業系、46%が家庭系となっており、食品ロスを削減するためには事業者と家庭双方での取り組みが必要といえます。
現在日本は、食品ロスへの対応が世界的にも遅れていると言われており、一人当たりの食品廃棄量は世界一位で、『廃棄大国』などと不名誉な呼び名がつけられるほどです。24時間営業のコンビニが、そこかしこにあるように、いつでも簡単に食品が手に入るなど、豊かな生活ができる日本ですが、逆にそんな便利な世の中に甘んじて、軽はずみにものを捨てる個人や企業が多いのかもしれません。
参考資料:消費者庁『食品ロス削減関係参考資料』より
食品ロス削減のため!企業の取り組み事例をご紹介
それでは、日本国内の各企業で進められている食品ロス削減のためのさまざまな取り組みをご紹介していきましょう。
山崎製パン株式会社の食品ロス問題への取り組み
山崎製パン株式会社は、言わずと知れた『パン・和菓子・洋菓子』などの食品メーカです。生産工場は全国に29箇所あり、グループ全体で食を大切にする取り組みが進められています。以下で山崎製パン株式会社で取り組まれている対策の一例をご紹介します。
- 作りすぎの抑制
山崎製パン株式会社では、商品の大量廃棄につながらないよう、受注生産による『作りすぎ』の抑制を行っています。また、鮮度を保つため、コンピュータシステムを導入し、受注から納品までを迅速に行う体制が構築されています。 - 廃棄物に対する意識改善
生産活動に伴う廃棄物のほとんどが有効利用されるため、排出されるものを資源と考えるようにしているそうです。そのため、『廃棄物⇒排出物』、『食品廃棄物⇒未利用食品』と呼び、従業員の意識改善も進めています。 - 食品の有効活用
製品開発面でも食品の有効活用が進んでいます。例えば、総菜パンを作る過程で出る「食パンの耳」を使って作られた菓子は環境大臣賞なども受賞しています。 - 包装品の改善、少量包装
バリア性の高い包材への改善や 脱酸素剤、アルコール蒸散剤などの利用によって消費(賞味)期限が大幅に延長。また、単身世帯の増加に伴い、少量包装製品の販売もスタートしています。
吉野家の食品ロス問題への取り組み
外食チェーンの吉野家でもさまざまな食品ロス削減のための対策が取られています。外食業界では、余剰食品とユーザーをつなげるためのアプリが作られるなど、画期的なサービスの登場もあり、食品ロスへの認識が非常に高くなっています。フードシェアリングサービスと呼ばれるものは『TABETE(タベテ)』や『Reduce Go(リデュースゴー)』などがありますので、一度確認してみてください。
- 工場段階での取組
店内で提供できない規格外品を、他の商品へ再利用する取り組みが行われています。例えば、規格外品の牛肉や玉ねぎをハンバーグやドレッシングの原料とするなどです。 - 輸送段階での取組
全国各地にある配送センターの在庫を一元管理。それにより、在庫過多になった場合、他の配送センターに移動し、期限切れを発生させないようにするなど、食品をコントロールしています。 - 店舗段階での取組
食材の自動発注システムを導入し、過去の実績をもとに1日の使用量を予測し余剰食材が出ないようしています。また、牛丼作成時に出る牛脂を回収し、飼料へのリサイクルを実施しています。
参考資料:「(株)吉野家における食品リサイクル・食品ロス削減の取組について」より
まとめ
今回は、世界的な社会問題となっている食品ロスについて、日本国内の現状とフードチェーンが行っている食品ロス削減のための対策をご紹介しました。日本国内であれば、24時間オープンしているコンビニや深夜近くまで営業するスーパーマーケットも増え、非常に手軽に食品が手に入る便利な時代になっています。しかし、その便利さが、逆に食への感謝の気持ちを薄れさせ、簡単に食品を捨てる個人や企業を増加させてしまっているのかもしれません。
日本における1年間の食品ロスの量は約643万トンとご紹介しましたが、これは国連が世界全体に食料援助としておくる一年間の量の約2倍にもなります。つまり、日本で捨てられる食料が、きちんと必要とされる人の手に届けば、多くの食糧難に困っている人々を救えることになるということです。もちろん、このような単純な話ではないのかもしれませんが、個人個人がもう少し食品ロスへの意識を高めていかなければならないのではないでしょうか。
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