世界中で問題となっている食品ロス。諸外国で行われている対策はどんなの?

今回は、近年世界中で問題となっている『食品ロス』について、諸外国で行われている食品ロスに対する取り組みや、日本が食品ロス解決に抱える課題について簡単にご紹介したいと思います。

このサイトでも食品ロス問題は何度か取り上げ、大手メディアなどでも頻繁に特集されていることもあり、皆さんも「食品ロス」という言葉は耳にしたことがあるでしょう。食品ロスとは、簡単に言うと「まだ食べられるのに何らかの理由で廃棄されてしまう食品」のことを指しており、近年では世界中で解決すべき課題として捉えられています。特に、24時間営業のコンビニや飲食店が当たり前のように存在する日本では、年間600万トン以上の食品ロスが発生しており、これは国連が世界中の貧困にあえぐ人たちに食糧支援として送る1年間の量の約2倍に匹敵するほどの量となっているのです。

このような状況の中、令和元年10月1日より『食品ロス削減推進法案』が施行されました。現在の日本は、一人当たりの食品廃棄量が世界一位となっていることから、『廃棄大国』などと不名誉な呼び名がつけられてしまうほどの状況であり、世界的にも食品ロスへの対応が遅れていると言われています。それでは、諸外国で行われている食品ロス対策にはどのようなものがあるのでしょうか?また、諸外国で一定の効果を出しているような食品ロス対策が日本国内で浸透しないのはなぜなのでしょうか?
この記事では、日本も参考にすべき諸外国の食品ロス対策と、日本での課題を考えてみたいと思います。

諸外国で行われている食品ロス対策とは?

それではまず、諸外国で行われている食品ロス対策をいくつかご紹介していきましょう。

  • アメリカ:ドギーバック
    アメリカでは、レストランなど、外食時に出る食べ残しを客が持ち帰ることが推奨されています。そのため、お店側があらかじめ食べ残し食品を持ち帰るための『ドギーバッグ』と呼ばれる容器を用意するのが一般的となっています。
  • フランス:食品廃棄の量に対して罰金徴収
    フランスでは、2016年2月から「食品廃棄禁止法」という法律が施行されています。これは、400㎡以上の大型スーパーにて、売れ残りや賞味期限切れ食品の廃棄を禁止し、さらに廃棄量に合わせて罰金が徴収されるという仕組みになっています。余った食品に関しては、貧困層へ行き届くようにボランティア団体などに寄付することが義務付けられています。
  • デンマーク:賞味期限切れ食品の専門スーパー
    日本でも近年登場していますが、デンマークでは、2016年に世界初の賞味期限切れ食品を専門に扱うスーパーマーケット「WeFood」がオープンしています。
  • スペイン:余剰食品をシェアできる連帯冷蔵庫を設置
    スペインでは、地域ごとに『連帯冷蔵庫』という名前の公共の冷蔵庫が設置されています。これは、一般家庭やレストランなどで生じる余剰食材を入れる冷蔵庫となっており、今までは捨てられていた食品を貧困者の手に渡るように考えられた措置です。これにより、食品ロスを減らすと同時に、必要とする人に食べ物を届けることができるようになっています。

諸外国では、上記のような様々な取り組みが進められています。

諸外国の対策は日本でも効果的なのか?

それでは、上述のような諸外国で一定の効果を出している食品ロス対策は、日本国内でも浸透するものなのか?という点について考えてみましょう。

実は、アメリカで浸透している『ドギーバッグ』については、日本でも普及活動が行われていたということはご存知でしょうか?正直に言うと、ほとんどの人が『ドギーバッグ』という言葉すら耳にしたことがない…というのが現状なのではないでしょうか。アメリカでは一定の効果を出しているドギーバッグなのですが、日本国内では衛生面の問題が壁となり、なかなか浸透しない…というのが現状なのです。これは、アメリカと日本の気候の違いが大きな原因であると言われており、高温多湿な気候である日本では、持ち帰りの最中に食材がダメになり、食中毒の危険性が高くなってしまう…という問題があるのです。もちろん、『ドギーバッグ』により持ち帰った食品に関しては、あくまでも自己責任で管理すべきものなのですが、それでも食中毒が発生してしまえば、お店に何らかの不利益があるかもしれない…という心理もあり、日本国内では『店舗側、消費者側』ともに浸透しないのが現状です。
デンマークで進められた賞味期限切れ食品を専門に扱うスーパーマーケットに関しては、日本国内でもNPO法人「全国もったいない市場」が運営している『ecoeat(エコイート)』が登場しており、今後こういった食品衛生上問題のない廃棄食品を再販売する店舗も増えていくのではないかと予想されています。

日本の食品業界の商習慣『3分の1ルール』がネック?

引用:農林水産省『食品ロスの削減とリサイクルの推進 ~食べものに、もったいないを、もういちど。P33』より

日本の食品ロス改善への大きな壁になっているのが、古くから日本の食品業界の商習慣として残っている『3分の1ルール』と言われています。『3分の1ルール』とは、工場などで製造されてから賞味期限に至るまでの品質保持期間を3分割して計算し、それぞれの期限を過ぎてしまうと「まだ問題なく食べられる食材」でも廃棄扱いにしてしまう仕組みです。この『3分の1ルール』では、上図の通り、「製造元から小売店に届く」までを納品期限、「小売りから消費者の手に渡るまで」を販売期限、「消費者が食材を食べるまで」を賞味期限として3つの期限を設定しており、それを過ぎてしまえば、賞味期限内の食品であっても店頭から撤去され、返品や廃棄処分とされてしまうのです。
このような制度は、「なるべく状態の良い食品を消費者に届けたい」という目的のもと設けられたと言われていますが、諸外国が設定している期限などと比較してもかなり短く設定されており、日本の判断基準が厳しすぎて多くの食品ロスを排出する要因となっていると指摘されています。
近年、経済産業省などから、この『3分の1ルール』を緩和する方針などが打ち出されているのですが、なかなか浸透しないのが現状です。しかし、日本国内の食品ロス改善のためには、こういった古くからある習慣を徹底的に改善していかなければならないのではないでしょうか。

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まとめ

今回は、近年世界中で注目されている食品ロス問題について、諸外国で行われている食品ロス改善のための対策や日本の現状をご紹介しました。本稿でもご紹介したように、さまざまな面で豊かになっている日本では、毎年大量の食品ロスが排出されています。

このような状況の中、日本でも『食品ロス削減推進法案』が施行されたのですが、どれほどの効果があるのかはまだまだ予想すらできないというのが現状でしょう。実際に、諸外国で効果を出している食品ロス改善のための対策などは、気候・衛生面・商習慣や、消費者の意識などの問題から、そのままの形を真似ただけでは日本で効果を出すのは難しいのではないかと考えられます。
まずは、「食べ残しをしない」「冷蔵庫の中の食材を食べきる」など、身近な部分から対策をしていく必要があると思います。