工場や倉庫など、屋内での熱中症対策には何をすれば良い?

今回は、工場や倉庫内で働く従業員が、安全で健康に仕事をできるようにするため、注意すべきポイントについてご紹介します。2019年も春が終わり、これからどんどん気温が上昇することになります。普段の生活やレジャーなどを考えた場合には、天候も良く、とても過ごしやすい季節へと移行していくと言えるのですが、工場や倉庫での作業を考えると、作業中の熱中症が増加する季節になるなど、歓迎ばかりはしていられません。
特に熱中症に関しては、直射日光の影響を受ける屋外作業で発症するものだとイメージしている人が多いため、工場や倉庫など、屋内での作業では熱中症の危険性が軽視されることも少なくないでしょう。しかし、工場や倉庫などは、施設によってエアコンなどの空調が効きにくい場所もあり、取扱製品によっては空調の風を嫌うため、エアコンの使用すらできない環境もあるのです。こういった環境では、暑さだけでなく湿度も高くなりやすく、長時間その場で作業したときに体内に熱がこもり、屋外よりも熱中症のリスクが高まることもあるのです。
そこで今回は、工場や倉庫での作業において、従業員を熱中症から守るための対策としてどのようなことができるのか?についてご紹介します。

熱中症とは?

気温が上昇し始めると、テレビのニュースなどでも熱中症情報が盛んに登場しますので、『熱中症』という言葉自体はほとんどの方が耳にしたことがあると思います。しかし、名前は知っているけれど、「どういった症状が出るのか?」や「熱中症を防ぐにはどうすれば良いのか?」といった詳細な情報までおさえている人は少ないと思います。実際に、筆者を含め、熱中症になった経験がなければ、適度に水分を取っていれば熱中症にはならないと考えている方が多いのではないでしょうか?
ここでは、熱中症の基本的な知識を簡単にご紹介していきます。

熱中症は・・・

・体温を平熱に保つために汗をかき、体内の水分や塩分(ナトリウムなど)の減少や血液の流れが滞るなどして、体温が上昇し重要な臓器が高温にさらされることにより発症する障害の総称です。高温環境下に長期間いたとき、あるいはいた後の体調不良はすべて熱中症の可能性があります。
・死に至る可能性のある病態です。
・予防法を知って、それを実践することで、完全に防ぐことができます。
・応急処置を知っていれば、重症化を回避し後遺症を軽減できます。

引用:環境省「熱中症環境保健マニュアル 2018」より

環境省の資料では、上記のように説明されています。熱中症は、場合によっては死に至る可能性もある非常に恐ろしい病態ですが、しっかりと対策さえ立てれば、完全に防ぐことができるものなのです。したがって、大切な従業員の安全と健康を守るためには、熱中症をおこさないための対策をきちんとたてることが重要になるでしょう。
特に、熱中症を発症しやすい条件は以下のようなものと言われていますので、ぜひ覚えておきましょう。

労働環境について
工場や倉庫で熱中症を発症しやすい環境は、火を使う・加熱された製品があるなど高温な場所、発熱体から放射される赤外線による熱がある場所などです。他にも、風がない場所、湿度が高い場所などは、発汗するばかりで蒸発しにくいため脱水症状になり熱中症になりやすいです。
従業員の健康状態について
熱中症は、その時の健康状態も大きく関係します。例えば、風邪気味、寝不足など体調不良時は注意が必要です。特に下痢症状がある時は、脱水状態になっている可能性が高いので危険です。他にも、前日お酒をたくさん飲んだ、朝食を抜いている場合なども熱中症になりやすいと言われます。なお、持病で普段から薬を飲んでいる人は、内服薬によっては利尿作用がある、発汗・体温調整を妨げる作用を持つものもあり、脱水症状や塩分不足に陥ることがあります。

熱中症を防ぐための対策について

それでは、工場や倉庫での作業において熱中症を防ぐための対策を考えていきましょう。従業員を熱中症から守るためには、作業環境を改善することはもちろん、作業員自身の健康管理や熱中症対策への意識づけがとても重要になります。それぞれの項目について、簡単にご紹介しましょう。

作業環境から見た熱中症対策

従業員の作業環境から熱中症対策を考えた場合、「施設内の暑さをどのようにして軽減するのか?」ということが重要になります。

  • 作業環境によって、冷房、通風、除湿設備の設置を考える
    作業場所によって暑さや湿度の低減対策が必要です。例えば、発熱体の近くで作業する場合には、熱を遮る遮蔽物を設置するなどです。通風が悪い場所では、散水などの対策が取られますが、散水後の湿度上昇にも気を配りましょう。
  • 作業時の服装などの注意点
    屋外作業を伴う場合は、通気性の良い帽子(クールヘルメット)を導入したり、熱を吸収しやすい、こもりやすい服の着用が必要な場合は、作業時間を短くするなどの対策が考えられます。
  • 作業員の休憩場所を設置
    作業員が適度に体を冷やすことができるよう、氷、冷たいおしぼりなどを用意した休憩所の設置も有効です。また、水分や塩分の補給が、定期的・簡単に行えるよう、作業場に飲料を備えておくことも重要です。

作業管理面から見た熱中症対策

従業員の熱中症を防ぐためには、上司がきちんと作業管理を行うことがとても重要です。以下のようなポイントに注意して、熱中症対策を進めましょう。

  • 水分と塩分の摂取を徹底する
    熱中症対策には水分と塩分の摂取が重要です。そのため、「今のどが渇いているか?」などは関係なしに定期的に水分と塩分を摂取するようにしましょう。例えば、きちんと従業員が水分を摂取しているのかを確認するため、管理表などでチェックさせるのも良いと思います。ただし、塩分摂取制限のある疾患を有する従業員の場合は、主治医や産業医に相談してください。
  • 暑熱馴化を行う
    高温多湿な作業場所に慣れていない従業員は、暑熱馴化のため、作業時間を短くする、初めは負荷の低い作業をさせるなどの対策を行いましょう。
  • 緊急時のマニュアルを作成
    万一、緊急事態が発生した場合でも、迅速な対処ができるよう、責任者や指揮系統をしっかりと確認しておきましょう。
  • 作業場所・作業内容を考える
    高温多湿な場所での長時間労働は熱中症の原因となります。そのため、体の負担が大きい作業や過酷な作業環境の場合、作業時間を短縮するなど、環境に合わせたルール作りをしましょう。

従業員の健康管理も重要

工場や倉庫での熱中症対策として、従業員の健康管理状態を把握しておくことがとても大切です。

  • 作業前に作業員の健康状態を確認
    熱中症は、その日の体調も大きく影響するものです。例えば、前日何らかの理由で寝不足に陥ったなどでも、熱中症を発症してしまうリスクが高くなります。特に、風邪気味で熱がある、下痢などにより脱水状態にある従業員は熱中症の発症リスクが高いです。このような場合、作業時間の短縮や負担の少ない作業に従事させるなど対策を行いましょう。
  • 体調不良を訴えることができる雰囲気づくり
    熱中症は、早めの対処がとても大切です。したがって、何らかの異変を感じた従業員が気兼ねなく体調不良を訴えることができる雰囲気作りも重要です。例えば、作業中も定期的に従業員同士で健康状態を確認するようにするなど、体調を伝え合うようにしてみるなどの対策も有効です。
  • 緊急の連絡先などを提示しておく
    万一に備え、わかりやすい場所に医療機関への連絡先を提示しておき、迅速に対応ができるようにしましょう。
熱中症対策は、従業員個人個人の認識もとても重要です。したがって、気温が上昇し、熱中症への注意が必要な時期は、しっかりと睡眠をとる、朝食を食べて出勤する、異変を感じたらすぐに訴え出るなど、熱中症に対する知識を持たせるようにしましょう。また、最近では、冷感タオル冷感スプレーなど、手軽に熱中症対策を行えるアイテムが販売されていますので、積極的に利用するように指導しましょう。

まとめ

今回は、工場や倉庫における熱中症対策についてご紹介しました。熱中症は、毎年気温が上昇すると増加するもので、ひどい症状に陥るのも年配の方や小さな子供だけと考えている人も多いかもしれません。しかし、厚生労働省が公表している「職場での熱中症による死亡災害の発生状況データ」によると、毎年20人前後が熱中症によって死亡していることがわかります。特に、屋内での作業が主となる製造業は建設業に続いて第2位となっており、屋内だからと安心できる場所ではないのです。
従業員が安全で健康に働けるようにするため、本稿でご紹介した熱中症対策は、ぜひ覚えておいてください。

参考資料:職場における熱中症による死傷災害の発生状況

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