大規模倉庫における『火災の教訓』をご紹介します!

今回は、消防庁が公表している『大規模倉庫における火災の教訓』について簡単にまとめていきたいと思います。

一般住宅などでも火災は恐ろしいものですが、顧客の大切な商品を大量に保管する倉庫で火災が発生した場合、とんでもない損害が生じてしまうため、どの施設でも細心の注意を払い火災への対策を行っていることでしょう。しかし、消防設備などをしっかりと整えた施設であっても、火災の発生確率を0%にすることは難しいものです。

実際に、2017年2月16日には、文具などの販売を手掛けているアスクルが約200億円という莫大な費用をかけて埼玉県三芳町に建設した物流の一大拠点で大規模火災が発生し、非常に大きな被害を出したのは皆さんの記憶にも新しい事なのではないでしょうか。この倉庫は、2013年より稼働が始まったまだ新しい施設で、スプリンクラーなど消防法で定められている消火設備もしっかりと整えられていたのにもかかわらず、大規模火災にまで発展したのです。
この火災では、出火から7分後には消防隊が駆けつけており、最初はすぐに鎮火するものと考えられていたそうです。しかし、懸命な消火作業を行ったものの火の勢いが収まる気配がなく、なんと鎮火に至ったのは火災発生から12日も経過した2月28日のことで、火災による損失は100億円以上に上ったと言われています。

このように、火災は最新設備が整った施設であっても発生してしまう可能性があるものですので、火災発生時にどうすれば良いのか…ということは誰もがおさえておかなければならないことだと思います。

大規模倉庫における『火災の教訓』とは?

それでは、総務省消防庁が公表している倉庫における火災の教訓についてご紹介していきたいと思います。倉庫火災に関しては、何より火災を発生させない…ということが重要なのですが、どれだけ設備を整えていたとしてもほんの小さな不注意から火災が発生してしまい、莫大な被害を出してしまう…という危険は残ってしまうのです。したがって、火災を起こさないための対策に合わせて、万一火災が発生してしまった際の対処も考えておかなければいけません。
消防庁が公表している資料では、以下の3つの教訓が大切とされています。

  • 教訓① 火災発見時は直ちに適切な通報
  • 教訓② 屋内消火栓設備又は屋外消火栓設備を用いた確実な初期消火
  • 教訓③ 従業員全員が円滑に避難できることを確認する避難訓練

倉庫火災が発生してしまった際には、パニックになってしまい有効な初期消火活動が行えない…なんてことになってしまう危険があります。当然、人間というものは知識があったとしても、訓練をしていなければいきなり適切な行動を行うことなど誰にもできません。したがって、過去にあった倉庫火災を教訓に、効果的な消火活動ができるよう、普段から消防訓練を行うことが重要になるのです。
以下でそれぞれの教訓についてもう少し詳しくご紹介しておきます。

火災発見時に適切な通報ができるようにする

倉庫火災は「いつ」発生するのか分かりません。したがって、突然の火災でも適切な通報ができるように訓練しておく必要があるのです。

例えば、火災の発生場所や燃焼物などを具体的に想定し、ロールプレイング形式の模擬的な通報訓練をしっかりと行うことが大切とされています。そうすることで、火災発見時にパニックになることもなく、直ちに適切な119番通報が可能になるでしょう。適切な通報訓練に関しては、以下を参考にしましょう。

火災発見時のロールプレイング


引用:消防庁資料より

  1. 自動火災報知設備の受信機に付箋を貼るなどして、火災が起きている場所をプレイヤーに伝える(模擬的に火災の発生場所を決定し、コントローラーに付箋をつけましょう)
  2. プレイヤーは、自動火災報知設備の受信機に備え付けてある警戒区域一覧図などから火災の発生場所を特定し、現場に確認しに行く。
  3. 火災が起きている場所にプレイヤーが到着したら、詳しい発生場所や燃焼物等の具体的な状況を伝える(火災原因はあらかじめ決めておきます)
  4. 火災を発見し、周囲に大きな声で知らせる
  5. 119番通報を行う

火災報知機などを用いて、実際の火災発見までの流れを訓練しておきましょう。

通報時のシミュレーション


引用:消防庁資料より

実際に119番通報を行う際のシミュレーションも大切です。この時には、コントローラー(訓練指示者)から示された発生場所や燃焼物など、具体的な状況を正確に伝えるように訓練しましょう。

初期消火の訓練

倉庫などでは、消火器や消火栓など初期消火を行うための設備が整えられています。しかし、いざ火災が発生した時には、これらの消火設備を適切に使えなければ意味がないのです。特に大規模倉庫などであれば、大量の段ボールなど可燃物が多く存在するため、非常に延焼が早いのです。冒頭でご紹介した物流倉庫の火災は、段ボール片がフォークリフト内に取り込まれ、エンジンの熱により発火してしまい、周囲の段ボールに延焼した…というのが原因だと言われています。
したがって、こういった大規模火災を防ぐためには、消化能力が高い屋内消火栓設備や屋外消火栓設備を適切に使用できるようにしなければいけないのです。


引用:消防庁資料より

施設に備え付けられている消火設備を実際に使って放水訓練などを行いましょう。

従業員が円滑に避難できるよう避難訓練を行う

倉庫火災から従業員を守るためには、突然発生した火災下でも円滑に避難できるようにしておかなければいけません。特に、大規模倉庫になればなるほど、棚やコンベヤなど避難の邪魔になるものも少なくありませんし、火災発生時に防火シャッターが閉鎖されてしまい逃げ遅れてしまう人が出る…なんてリスクもあるのです。
したがって、普段から具体的な火災状況を想定し、火災が危険な状態になるまでの時間内に従業員全員が避難できるように避難訓練を行っておくのが大切です。なお、避難訓練を行った結果、避難に時間がかかり過ぎるようであれば、避難経路の見直しを行うなど、速やかに避難できるような対策を検討する必要があります。
また、火災による被害を拡大させないためにも、以下の設備は定期的に確認する必要があります。


引用:消防庁資料より

まとめ

今回は、消防庁が公表している『大規模倉庫における火災の教訓』をご紹介してきました。物流倉庫などであれば、顧客の大切な商品をたくさん保管していますし、多くの人間が働いていますの、火災が発生してしまうととんでもない被害にまで発展する恐れがあります。もちろん、どのような施設であっても、火災を引き起こさないためにさまざまな対策がなされているとは思いますが、どれだけ万全だと思える対策を行っていたとしてもほんの小さな人為的ミスから火災が発生してしまう危険もあるのです。

したがって、火災を起こさないための対策だけでなく、万一火災が発生してしまった時の対処法についてもしっかりと検討しておきましょう。