HACCPとFSSC22000の違いってなんだ?

2018年6月に衆議院にて可決された改正食品衛生法により、いよいよ今年の6月からはHACCPによる衛生管理が全ての食品関連事業者に制度化されました。ただし今回のHACCP制度化に関しては、1年間の猶予期間が設けられていることから、現在急いでHACCPへの対応策について調べているという事業者様も多いかもしれません。
そこでHACCPについていろいろと調べてみると、『ISO22000』や『FSSC22000』という別の食品安全管理手法に関する用語も目にするようになり、これらとHACCPとの違いはなんだ?ということに疑問を持つ機会も多くなることでしょう。そこでこの記事では、これらの食品安全管理手法に関する用語が何を示しているのか、それぞれにどんな違いが存在するのかについて簡単にご紹介していきたいと思います。

『HACCP』『ISO22000』『FSSC22000』は、全て食の安全を守るためのシステムとなるのですが、要求されるものが少しづつ異なりますので、この機会に覚えておきましょう。

『HACCP』『ISO22000』『FSSC22000』の概要

それでは、『HACCP』『ISO22000』『FSSC22000』について、それぞれの概要を簡単にご紹介しておきましょう。これらはすべて食の安全を守るための物なのですが、要求されるものが異なるため、「どのシステムを導入すべきか?」が取扱製品や取引先、どういった視点で食品安全の対策に取り組むかといった事により変わってくるのです。以下にそれぞれのシステムについて、その概要を簡単にまとめてみます。

  • HACCPの概要
    このサイトでも何度もご紹介しているHACCPですが、これは「Hazard Analysis and Critical Control Point」の略語です。食品製造の各工程に存在する危害を起こす要因(ハザード:Hazard)を分析し、それを最も効率よく管理できる部分(CCP;必須管理点)を連続的に管理して食の安全を確保するという管理手法です。
  • ISO22000の概要
    安全な食品を生産・流通・販売するため、HACCPを基にしてISO(国際標準)化したものとなります。品質マネジメントシステムの国際規格『ISO9001』とHACCPを内包したものが、『ISO22000』という国際規格となります。
  • FSSC22000の概要
    食品安全マネジメントシステムの国際規格であるISO 22000と、それを発展させたISO/TS 22002-1(PAS220)とを統合し、GFSIが制定したベンチマーク承認規格です。

参考:FACTAS®公式サイトより

それぞれの概要は上記のようになっています。

規格としての違い

上記の概要を見ればわかりますが、『HACCP』『ISO22000』『FSSC22000』という3つの規格は、「食の安全を守るため」という部分は同じですが、さまざまな部分が異なるのです。

そもそもHACCPというものは、主に食品製造業者を対象として、原材料の搬入から製造、出荷までの全ての工程を細分化し、そこで考えられる危険因子を分析してその回避方法を科学的根拠に基づいて行うというものです。HACCPでは、全工程において適切な衛生管理が行われているのかを監視・記録していくことになるため、これを導入すれば汚染された食品の出荷を未然に防ぐことができ、またどこで汚染されたのかを事後に検証しやすくなるというメリットがあるのです。

しかし、このHACCPに関しては、認証団体が複数存在しており、それぞれの団体によって基準や審査項目が異なるのです。そのためHACCPは、あくまでも『食品の衛生管理のガイドライン』と捉えられています。グローバル化が進んだ現在では、食品の流通過程が非常に複雑化しているため、ガイドラインではなく国際的に共通する食品安全の規格が求められるようになったのです。そこで誕生したのが『ISO22000』や『FSSC22000』という規格です。

『ISO22000』や『FSSC22000』という規格は、世界共通のものとなるため、国際取引の場では非常に信頼度が高く、これらの規格認証を受けていない企業の場合、商品の取り扱いを行わないということもあるのです。

その他の違いについて

それでは『HACCP』『ISO22000』『FSSC22000』について、上記以外にもどのような違いがあるのかをもう少し詳しくご紹介していきましょう。

前提条件プログラムの違い

食品衛生の基礎となる『前提条件プログラム』ですが、『HACCP』や『FSSC22000』では違いが存在します。HACCPでは、具体的な項目や基準についての定めが特になく、認証団体ごとに前提条件プログラムが異なります。しかし、ISO22000とFSSC22000では前提条件プログラムが明確に設定されているのです。
ただし、『ISO22000』では規格要求事項の中で「取り組むべき項目」を明確にしているものの、具体的な内容については各社で自由に選択して決定すれば良いことになっています。そのため、『ISO22000』を取得している会社でも、手洗いなどの取り組みルールに差異があり、衛生管理が行き届いた会社とそうでない会社が存在してしまったのです。実際に、『ISO22000』を取得している大規模な事業者でも食品汚染事故が発生するなど、『ISO22000』自体の信頼性まで損なわれつつあったと言われています。

そこで前提条件プログラムの手法も厳密に設定された『FSSC22000』が作られたのです。『FSSC22000』では、『PAS 220(現:TS 22002-1)』により各プログラムの手法が厳密に設定されており、認定条件が厳しくなっています。

HACCP ISO22000 FSSC22000
項目 認証団体によって異なる 明確になっている 明確になっている
内容 認証団体の基準に従う 具体的な内容は各会社が自由に決める TS22002(旧:PAS)シリーズに従う

ハザード管理の違い

ハザード管理は、食品の製造工程上で生じる異物混入や食中毒菌の付着など、さまざまな危険因子を予測し、科学的根拠に基づいて徹底した管理を行うことです。

HACCPでは、『日常的な管理』と『重点的な管理』のどちらかでハザード管理を行うことになっているのですが、『ISO22000』と『FSSC22000』では、その中間段階での管理(OPRP)も厳密に行われることになっているのです。

適応範囲の違い

次は適応範囲の違いについてです。HACCPの適応範囲については、承認団体によって異なります。もともとは「農場から食卓まで」に適用することを目的に制定されたものなのですが、日本に導入される際に、基本的に食品製造分野に限って適用されたため、小売りや農業分野などでは適用例が少ない状態になっているのです。
しかし、『ISO22000』や『FSSC22000』については、食品製造業者に限らず、フードチェーンに関わるすべての業種が対象となっています。食品の生産段階は当然として、フードチェーンに関わる包装材や人材派遣、クリーニングなど、間接部門まで対象が広がっていることから、総合的な食品安全対策となっているのです。

まとめ

今回は、食の安全を守るために作られているさまざまなシステムの違いについてご紹介してきました。いよいよ今年から「原則すべての食品関連事業者」に対してHACCPによる衛生管理の制度化がスタートしており、この記事をご覧になっている方の施設でもさまざまな対策に追われていることでしょう。

しかし、食の安全を考えた場合には、他にもさまざまなシステムが作られており、取り扱う製品やどういった取引先があるのかによってHACCP以外にも取得しなければならない認証が存在するかもしれないのです。したがって、それぞれの認証の特徴を知り、自社に最適な食品安全の仕組みが何なのか検討してみることからスタートしてみてはいかがでしょうか。