湿度と静電気の関係について。冬場に静電気が発生しやすい理由をおさえておきましょう。

空気が乾燥する秋から冬にかけては、ドアノブなどに触れた際「バチッ」という音とともに手に痛みが走る現象が増えてきます。これがいわゆる『静電気』なのですが、何気ない日常生活の中で突然痛みがやってくるこの現象は、不快感や恐怖があり嫌な思いをしている方も多いと思います。

それでは、なぜ空気が乾燥する冬場になってくると静電気が発生しやすくなるのでしょうか?これからの季節、『危険物』の取り扱いが多い工場や倉庫などは、静電気による火花が原因となる火災の心配がありますので、湿度と静電気の関係はおさえておきたいものです。そこでこの記事では、危険物を管理する上で、誰もがおさえておきたい静電気の基礎知識をご紹介します。

そもそも『湿度』とは?

それではまず、「そもそも湿度とは何を指している?」という基礎知識からご紹介します。『湿度』という言葉に関しては、天気予報などでも耳にする言葉ですし、誰もが非常になじみ深いものだと思います。一般的に、「湿度は、空気中に水蒸気の形で含まれる水の量を、比率で表した数値」なのですが、実は一口に湿度といっても、計測の方法はいくつかの種類が存在するのです。ここでは、湿度の種類について簡単にご紹介しておきます。

  • 絶対湿度
    絶対湿度は、1立方メートルの空間に含まれる水蒸気の重さが何グラムかを示しています。つまり、絶対湿度は空気中に含まれる「水蒸気自体の量」を表すものです。気温などは関係なく『g/㎥』という単位で表されます。
  • 相対湿度
    一般的な天気予報などで聞かれる湿度がこちらです。空気中には、気温ごとに含むことのできる水蒸気の限界量(飽和水蒸気量)が決まっており、相対湿度はその限界までのうち何%まで含んでいるかを示しています。つまり、こちらは空気中に含まれる「水蒸気の割合」を表しています。
  • 実効湿度
    実効湿度は、過去の湿度の履歴を考慮して表す湿度です。木材など、水分を含む物の含水量を把握するために用いられます。この実効湿度は、火災発生の危険性を把握するのに非常に有効とされており、実効湿度が60~50%以下になると、火災件数が増加すると言われています。ちなみに、気象庁が発表する乾燥注意報は実効湿度を目安にしているそうです。

参考:ウェザーニュースより

静電気と湿度の関係とは?

それでは、湿度が低くなると(乾燥すると)静電気に注意しなければならない理由も見ていきましょう。そもそも、静電気とは、以下のような物を指しています。

静電気というものは「物質内に帯電している静止した電荷のこと」を指しています。この電荷は、摩擦などによって徐々に帯電するもので、逃げ場がない限りは溜まり続けてしまうものです。そして、溜まりに溜まった電気が、何らかの原因で電流となり、「手に痛みが走った…」「火花が見えた…」といった現象が起こるのです。こう聞くと、帯電させなければ良いと考えるかもしれませんが、摩擦によって帯電してしまうものですので、帯電自体を防ぐのは不可能といって良いでしょう。例えば、作業のために動いているだけで衣服に摩擦は起こりますので、自然と静電気は溜まってしまうものです。
引用:RiSOKO公式サイトより

子供のころに、下敷きを擦って髪の毛を逆立てて遊んだという経験がある方も多いと思いますが、これは下敷きが帯電したために起こる現象です。なお、静電気は『静』という文字が使われているため、微弱な電気の事を指していると考えてしまう人もいるのですが、それは大間違いです。実は、非常に大きなパワーを持っている雷も静電気の一種す。決して侮れない現象だと考えましょう。

静電気と湿度

上述したように、静電気はものとものの摩擦によって発生します。つまり、本来は季節など関係なく静電気は発生するものです。

しかし、日常生活上で静電気を意識するのは空気が乾燥してしまう冬場がほとんどなのではないでしょうか。これは、電気が物質によって伝わりやすかったり伝わりにくかったりするという性質を持っているからです。例えば、ゴムなどの『絶縁体』と呼ばれるものは「電気を通さない…」と子供のころに習った記憶があると思います。逆に、水は電気を通す物質です。

静電気と湿度の関係をおさえておくには、この電気の性質が非常に重要です。日本には四季というものがありますが、季節によって湿度が大幅に違います。そして、水は電気を通すという性質を持つことから、湿度の高い季節は発生した静電気が空気中に逃げてしまい、人体に伝わるものがほんの一部になります。こういった理由から、湿度が高い夏場などに静電気で痛みが走る…という経験が少なくなるわけです。冬場は、空気中の水分が少なくなるため、帯電した静電気の逃げ場が少なく、ドアノブなどに触れた時に人体に多くの電気が伝わるという仕組みです。

冬場の静電気は危険物の発火に注意

ここまでの説明で、冬場に静電気が発生しやすくなってしまう理由はある程度分かっていただけたと思います。最後に、倉庫や工場など、日常的に危険物を使用する場面が多い場所における、静電気の注意点を簡単にご紹介しておきます。

倉庫や工場などでは、設備の燃料としてガソリンを利用する機会が多いと思います。このガソリンは、第四類危険物に指定されている引火性液体なのですが、-40℃以上で引火してしまう物質です。つまり、ガソリンは、常温状態でも火種さえ近くにあれば引火して一気に燃え上がってしまう危険があるということです。その上、ガソリンは気化しやすいという特徴を持っているため、容器の近くに火が近づいただけでも引火してしまう危険があります。

最近では、セルフガソリンスタンドが増えていますが、こういった場所には必ず静電気除去シートが用意されています。これは、静電気に火花放電という現象が起きた際、その火花でガソリンが発火してしまい爆発してしまう危険があるからです。冬場にガソリンなどの危険物を取り扱う際には、できるだけ静電気が発生しない服装などを心がけ、安全に作業を進める必要があります。

まとめ

今回は、静電気と湿度の関係について簡単にご紹介してきました。日常生活を送る上での静電気であれば、ドアノブに触れた際に痛みが走る…程度の問題ですので、我慢すれば良いだけでそこまで深刻に考える必要はありません。もちろん、突然やってくる痛みがどうしてもいやだ…という方もいるとは思うのですが、静電気による痛みで命を落としてしまう…なんて場面などほとんどないと思います。

しかし、さまざまな危険物を取り扱っている工場や倉庫などであれば、静電気による小さな火花で爆発事故が起こってしまう危険があると考えなければいけません。上述したガソリンなどは、使用頻度が高いうえに、発火の危険性も高い物質です。こういった危険物を取り扱う際には、静電気の性質を良くおさえておき、安全に作業が進められるようなルールを作っておく必要があります。