身近にある『第四類危険物』の特徴。意外とややこしい引火点や発火点の違いもおさえておこう

今回は、さまざまな種類に分類されている危険物について、私たちの日常生活でも非常に身近にある『第四類危険物』の基礎知識をご紹介したいと思います。このサイト内でも何度かご紹介している『危険物』ですが、これは消防法によってその取扱いや保管方法が決められている物質の総称になります。名称から劇物や毒物など、人体に何らかの危険があるものとイメージする方も多いのですが、「通常の状態で保管・放置しておくと、引火性・発火性があり、火災や爆発、中毒などの災害につながる危険がある物質」の総称が『危険物』なのです。

そしてこの危険物は、それぞれの性質によって第一類~第六類に分類されており、その中でも『第四類危険物』は私たちの日常生活に非常に密接な関係があるのです。例えば、自動車の燃料であるガソリンや軽油、給湯器や暖房器具の燃料として使用される灯油なども『第四類危険物』に含まれています。したがって、これらの危険物は身近にあり過ぎて、ついその危険性を軽視してしまう場合も少なく無く、ちょっとした不注意で大事故を発生させてしまうことがあるのです。
そこでこの記事では、『第四類危険物』の基礎知識をご紹介します。

『第四類危険物』の基礎知識

それではまず、危険物の中でも『第四類危険物』に分類される物質の特徴などをご紹介していきます。第四類に指定されている危険物は『引火性液体』で、以下のような特徴を持つ物質となります。

引火性液体の特徴
引火性液体は、その名称からイメージできるように「燃えやすい」液体の総称です。引火性液体は、可燃性蒸気を発生させ空気と混合する性質を持っています。そして、引火性液体が発生させる蒸気の近くに点火源があった場合、引火・爆発してしまう危険が高い物質となっています。

『第四類危険物』もいくつかの種類に分類される

『第四類危険物』に分類される引火性液体は、多くの種類があるため、引火点の違いによって以下のように細かく分類されています。

  • 発火点が100℃以下または引火点が-20℃以下で、沸点が40℃以下の引火性液体 ⇒ 特殊引火物
    (エ一テル、二硫化炭素、コロジオン、アセトアルデヒド、酸化プロピレン、ペンタンなど)
  • 引火点が21℃未満の引火性液体 ⇒ 第一石油類
    (アセトン、ガソリン、石油ベンジン、リグロイン、ジオキサン、ベンゼン、トルエンなど)
  • 引火点が21℃以上70℃未満の引火性液体 ⇒ 第二石油類
    (灯油、軽油、クロロベンゼン、エチルベンゼン、スチレン、キシレンなど)
  • 引火点が70℃以上200℃未満の引火性液体 ⇒ 第三石油類
    (重油、クレオソート油、グリセリン、アニリン、ニトロベンゼン、エタノールアミンなど)
  • 引火点が200℃以上250℃未満の引火性液体 ⇒ 第四石油類
    (ギヤー油、シリンダー油、潤滑油、タービン油、マシン油、モーター油など)

引火性液体の分類は上記以外にも「アルコール類(炭素数が1~3個の飽和1価のもの)」と「動植物油類」があります。なお、引火点が低い物質ほど、常温で発火・爆発する可能性が高い危険な物質と言えます。

参考:日本危険物倉庫協会公式サイトより

『第四類危険物』の注意点や保管方法について

『第四類危険物』に中には、ガソリンや軽油、灯油など、日常生活でも非常に身近な物質がたくさん含まれています。そして、これらの物質には、以下のような共通の特徴がありますので、十分に注意して取り扱わなければいけません。

  • 可燃性蒸気を発生する(可燃性蒸気は空気より重い)
  • 水に溶けない、水に浮くという性質があるため、冷水消火が不可
  • 静電気を発生させやすいうえ、静電気の火花で引火することがある
  • 酸化剤と混合すると爆発の危険がある

上記のような性質を持つため、取り扱いには十分に注意しましょう。なお、保管する場合にも注意が必要で、気化すると可燃性の蒸気を発生する性質があることから、しっかりと密閉することができる容器に入れて保管しなければいけません。また、第四類危険物を入れた容器は、可燃性ガスがたまらないように風通しが良い場所で保管する、タンクなどに注ぐときには静電気を発生させないように流速を遅くするなどの注意点も覚えておきましょう。

おさえておきたい「引火点」や「発火点」の違いについて

第四類危険物を取り扱う際には「引火点」や「発火点」、「燃焼点」が何なのかをおさえておくことが重要です。上述した、第四類危険物の分類にあるように、引火点によって細かく分類されているなど、引火性液体では引火点が重要視されているのです。
ここでは、皆さんがおさえておきたい「引火点」や「発火点」の知識について簡単にご紹介しておきます。

そもそも「引火点」とは?

それではまず、引火点の意味からご紹介していきましょう。

引火点は、点火した際に、混合気体が燃え出すのに十分な濃度の可燃性蒸気が液面上に発生するための最低温度(液温)のことを指しています。可燃性液体は、その物質によって液体が蒸発する温度が決まっており、液体が蒸発する液温以上になった場合、蒸気を発生し始め、その蒸気に点火源を近づけると引火するのです。逆に言えば、液温が引火点よりも低い場合には、燃焼に必要な蒸気を発生させないため、点火源を近づけたとしても引火しません。
一例をあげると、引火点が-40℃のガソリンの場合、気温10度程度の寒い日でも蒸発し可燃性蒸気が発生しています。そのため、近くに点火源があれば引火してしまうことになるのです。セルフガソリンスタンドなどに必ず静電気除去シートがついているのは、日本国内の通常の気温であれば可燃性蒸気が発生しますので、点火源となる静電気による火花を発生させないためです。

発火点・燃焼点・沸点とは?

危険物の取り扱いを行う場合には、引火点以外にも「発火点・燃焼点・沸点」の意味を押さえておかなければいけません。それぞれの意味を以下にご紹介しておきますので頭に入れておきましょう。

  • 燃焼点とは
    燃焼を継続するのに必要な最低の液温のこと。一般的に引火点より高くなります。
  • 発火点とは
    危険物が空気中で点火源がなくても自ら発火する最低温度のことです。一般的に燃焼点よりも高いです。
  • 沸点とは
    危険物が沸騰する温度。危険物の中には100℃未満で沸騰するものがあります。(例:アセトアルデヒドの沸点は20℃)

まとめ

今回は、身近にある危険物である『第四類危険物』の基礎知識についてご紹介してきました。危険物に関しては、その名称から、特殊な場面でしか利用しない物質だと考えてしまう方も少なくありません。しかし、第四類危険物の中には、ガソリンや軽油、灯油なども含まれており、私たちの日常生活にも非常に密接な関係のある物質も珍しくないのです。

特に工場や倉庫などになると、施設内で使用する設備の燃料として、一定量の危険物を保管している場合も多くあります。したがって、この記事でご紹介した内容を今一度社内で周知し、事故防止に努めましょう。