工場立地法ってご存知ですか?いつ、なぜ出来たのかを知っておきましょう!

今回は、一般の人の間では、その存在すら知っている人がいないかもしれない『工場立地法』についてご紹介していきたいと思います。もちろん、一般の方であれば、普段の生活の中でこの法律が関係してくるような場面も基本的にないでしょうし、わざわざ知っておく必要などはないと思います。しかし、現在、何らかの工場を運営している方や、工場建設に関わっている職種の方、はたまた今後、工場の設計や建設などの業界を目指している求職者の方であれば、知っておいて損はない知識だと思います。この法律をかみ砕いて説明すると、「工場の建設時は、公害や環境破壊などを防ぐため、積極的に地球の環境づくりに参加しましょう」といった意味合いの物で、一定以上の規模を誇る工場であれば、必ず守らなければならない法律となっています。
地球環境や公害などと聞くと、非常に幅広い問題でもありますし、何の決め事もなければ何をすればいいのかも、なかなかわからないものです。その為、日本国内では、工場を建設する際には様々な制約を守らなければならないのです。もちろん、これらの法律が作られたのは、それ相応の理由がありますので、本稿では「なぜ工場立地法が作られたのか?」「実際にどのようなことをしなければならないのか?」等についてご紹介していきたいと思います。

そもそも『工場立地法』が作られた理由は?

それではまず、「なぜ工場立地法が制定されたのか?」という点からご紹介していきましょう。この『工場立地法』が制定されたのは、高度経済成長期の終盤1973年の事です。この時代は、右肩上がりの経済成長を続ける陰で急速な工業化が進み、様々な環境問題が表面化した時代でもあります。皆さんも子供のころの社会科の授業で「水俣病」や「イタイイタイ病」、「四日市ぜんそく」「第二水俣病」といった各地の公害病の大量発生は習ったことがあるでしょう。このような状況下で、経済の発展と福祉の向上を目的として制定されたのが『工場立地法』という法律なのです。
この『工場立地法』は、一定以上の規模を誇る工場であれば、周辺地域の環境を守るために敷地面積に対して生産施設を一定割合以下に抑え、さらに敷地内には環境施設を作らなければならないという物となっています。これは、高度経済成長期後半になり、大量生産の裏返しとしてごみ問題や水質汚染などの様々な公害が問題となり、企業の公害責任が問われるようになったからなのです。
それでは、『工場立地法』の対象となる工場には、どのような要件があるのかも見ておきましょう。

工場立地法の対象となる業種について

工場立地法の対象となる業種は以下通りです。

  • 製造業
  • 電気供給業者(水力、地熱及び太陽光発電所は除く)
  • ガス供給業者
  • 熱供給業者

工場立地法の対象となる規模について

上記の業種条件を満たして、かつ以下の規模の工場は工場立地法の対象となります。

  • 敷地面積 9,000㎡以上 又は 建築面積 3,000㎡以上

上記の要件に該当する工場の場合、工場の新設・変更の際には、工場が立地している都道府県又は市に対し、届出を行うことが義務付けられています。届け出があった場合には、緑地面積や生産施設面積の敷地面積に対する割合等について調査が行われ、要件を満たしていない場合には勧告、変更命令が出されます。工場立地法の概要はコチラもご参照ください。

工場立地法のキーワードは『緑地面積』

それでは実際に工場立地法に準拠するために必要なことをご紹介していきましょう。工場立地法では、上にも出てきた『緑地面積』がキーワードとなります。そもそも『工場立地法』の目的は、

目的(法第一条)
工場立地が、環境保全を図りつつ適正に行われるようにするため、工場立地に関する調査の実施、工場立地に関する準則の公表及びこれらに基づく勧告、命令等を行い、これらを通じて国民経済の健全な発展と国民の福祉に寄与すること。
引用元:工場立地法の概要

上記のように定められており、工場の敷地内に一定以上の緑地を設けなければならないと決められているのです。

工場立地法における敷地利用について

工場立地法には、『緑地面積率』という基準が設けられており、その言葉からも分かるように工場の敷地全体に対して、一定以上の緑地が必要になるのです。ちなみに工場立地法における緑地の定義は、樹木の種類に限らず、最低でも10㎡以上の広さの物です。工場立地法における敷地利用時の面積制限は以下のように定められています。


引用:経済産業省資料より

尚、『都道府県・市は、地域の実情に合わせ、国の定める範囲内において、緑地及び環境施設の割合を独自に策定が可能』と定められているので、詳細な数値はあらかじめ確認する必要があります。さらに2012年に行われた法改正で、産業用太陽光発電システムが『環境施設』として認められることになったので、企業が土地を有効活用し、電力購入量を削減しながら、クリーンエネルギーを利用するなど、企業イメージアップの一環としても利用できるようになっています。

まとめ

今回は、一般の人であればほとんど関係がないように思える『工場立地法』の成り立ちや、実際にどのような法律なのかをご紹介してきました。本稿を読んでいただければわかるように、一見、工場の経営者以外には全く関係のなさそうな法律に見えるものですが、その内容を見てみると、私たちの生活を守るためには非常に重要な法律なのだとわかります。例えば、現在急速な成長を見せているインドや中国などといった諸外国では、深刻な大気汚染問題が人々を悩ませているというニュースは最近よく見かけますね。
日本でも高度経済成長期には、豊かになる生活の陰で様々な公害問題が表面化したのです。そして二度とこのような公害問題を引き起こさないために出来たのが『工場立地法』というわけです。近年では、大手企業の工場見学ツアーなども人気がありますが、敷地内に入ってみると、とても工場内とは思えないような緑地が広がっているものです。今後は、工場がどのようなものを作っているのか?以外にも、どれだけ地球環境を考えた対策を進めているのか?といった視点で工場を見てみるのも新鮮かもしれませんね!

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