フロン排出抑制法とは?知っておきたい法律のポイントをご紹介!

今回は、平成31年3月19日の閣議決定で、フロン管理義務がさらに強化されることとなったフロン排出抑制法の基礎知識についてご紹介します。
フロン排出抑制法は、平成27年4月1日に全面施行された法律で、正式名称は「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律」という非常に長い名称となっています。法律の中身は何か?というと「フロン排出抑制法」という名称からも分かるように、業務用冷凍空調機器などの多くに充填されているフロン類の漏えいを抑制するというのが目的となっています。フロン類は、現在世界中で問題視されている地球温暖化への影響が大きいと言われていることから、フロン類が充填されている業務用冷凍空調機器などがきちんと管理されるように作られた法律なのです。そこで、法律の趣旨が名称からもわかりやすいように『フロン排出抑制法』と名付けられたのだと思います。
フロンは、皆さんが普段からよく利用するエアコンや冷蔵庫等の「冷媒」として多くの製品に使用されている物質です。そして、フロン排出抑制法では、「管理者」が業務用冷凍空調機器などの「第一種特定製品」を適切に扱うことが義務づけられており、この義務を怠ってしまうと罰則・罰金が科せられることになります。
そこで本稿では、フロン排出抑制法に関して、法律を守るためには何をしなければならないのか?などの法律の基本をご紹介します。

フロン排出抑制法の知っておきたいポイント

引用:経済産業省「フロン排出抑制法(パンフレット)

フロン排出抑制法は、上図のように、フロン類の製造から廃棄まで『フロンのライフサイクル全般』という大きな見方で、全ての関係者が協力してフロン類の漏えい量を削減しようというのが目的です。特に機器のユーザーとなる『管理者』に対しては、第一種特定製品を適切に扱い、使用時のフロン漏えいを少なくするための役割と責務が多く課されています。ここで言う『管理者』や『第一種特定製品』は以下のようなものです。

管理者とは
管理者は、原則として、当該製品の所有権を有する者(企業・法人)とされています。ただし、契約書などの書面において、「保守・修繕の責任を所有者以外が負う」とされている場合は、例外として、その企業・法人が管理者となります。

【管理者の具体例】
上述のとおり、業務用のエアコンディショナー、冷凍冷蔵機器を所有する事業者は、基本的に全て、管理者となります。したがって、管理者となりうる者の具体例としては、事業所や自社ビル等を所有する全ての業種の事業者(独立行政法人等の団体・機関を含む。)、医療関係(病院、介護施設等)、学校関係、飲食業関係、農林水産業関係(食品工場漁船等)、宿泊関係(ホテル、旅館等)、運輸関係(冷蔵冷凍倉庫、鉄道、旅客機、船舶)等が対象となります。
引用:環境省資料より

第一種特定製品
業務用のエアコンディショナー、業務用の冷蔵機器及び冷凍機器などの機器であって、冷媒としてフロン類が使用されているもの。ただし、カーエアコンは対象外となります。(※カーエアコンのフロン類は、自動車リサイクル法によって改修などが行われます。)

「管理者の判断基準」の遵守

フロン排出抑制法では、「管理者の判断基準」として遵守しなければならない事項が、以下のように決められています。

  • 適切な場所へ機器の設置等
    機器の損傷等を防止するため、適切な場所に設置し、また、適正な使用環境の維持・保全を行うこと。
  • 機器の点検
    全ての第一種特定製品は、3カ月に1回以上の簡易点検を行う必要があります。また、室外機の定格出力が一定以上の第一種特定製品については、簡易点検に合わせて、専門知識を有する者による定期点検を行わなければならない。
  • 漏えい防止措置、修理しないままフロン充填の原則禁止
    機器からフロン類が漏えいしていると確認された場合、点検・漏えい箇所の特定・修理を行わずにフロンを充填してはならない。
  • 機器の点検・整備に関する履歴の保存など
    適切な危機管理が行えるよう、機器1台ごとに点検・修理、冷媒の充塡・回収等の履歴を記録し、機器の廃棄まで保存しなければならない。また、この記録は、機器整備の際に、整備業者の求めに応じて開示しなければならない。

フロン類算定漏えい量の報告

引用:経済産業省「フロン排出抑制法(パンフレット)

第一種特定製品の管理者は、上述した通り、機器の適切な管理を行うため「点検・修理・充填・回収の履歴」を記録し保存しておく必要があります。そして、一定以上のフロン類漏えいを生じさせた場合には、管理する機器からのフロン類漏えい量を国に対して年次報告する義務があります。ちなみに、『一定以上のフロン類漏えい量』は、上図の計算式にあるように、CO2換算で『1,000CO2-t』以上となります。

フロン排出抑制法の基本としておさえておきたいポイントは、上記のようなことでしょう。ちなみに、点検や漏えい時の対応を怠ったり、フロン類をみだりに放出した場合は厳しい罰則が用意されていますので、今までこの法律について「聞いたことがない…」という方は、以下の参考資料で全貌を確認しておきましょう。
参考資料:経済産業省「フロン排出抑制法(パンフレット)

フロン排出抑制法の法改正について

フロン排出抑制法では、業務用冷凍空調機器などの廃棄を行う際、機器に充填されているフロン類を第一種フロン類充塡回収業者に引き渡さなければならないとされています。しかし、このフロン回収率は、10年以上3割程度に低迷しており、直近でも4割弱に留まってしまっています。そのため、2019年3月19日に「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。
法律案の概要を転載しておきますので、確認しておきましょう。

法律案の概要

(1)機器廃棄の際の取組
都道府県の指導監督の実効性向上
– ユーザーがフロン回収を行わない違反に対する直接罰の導入
廃棄物・リサイクル業者等へのフロン回収済み証明の交付を義務付け
(充塡回収業者である廃棄物・リサイクル業者等にフロン回収を依頼する場合などは除く。)
(2)建物解体時の機器廃棄の際の取組
都道府県による指導監督の実効性向上
– 建設リサイクル法解体届等の必要な資料要求規定を位置付け
– 解体現場等への立入検査等の対象範囲拡大
– 解体業者等による機器の有無の確認記録の保存を義務付け 等
(3)機器が引き取られる際の取組
 廃棄物・リサイクル業者等が機器の引取り時にフロン回収済み証明を確認し、確認できない機器の引取りを禁止
(廃棄物・リサイクル業者等が充塡回収業者としてフロン回収を行う場合などは除く。)
(4)その他
継続的な普及・啓発活動の推進のため、都道府県における関係者による協議会規定の導入 等
引用:経済産業省ニュースより

まとめ

今回は、フロン排出抑制法に関する基礎知識をご紹介してきました。この法律は、業務用冷凍空調機器の冷媒に使用されるフロン類の漏えいを少なくするために作られたものです。この記事を読んでいただいた方の中には、「自宅でエアコンや冷蔵庫を使用しているけど大丈夫?」と不安に思われたかもしれませんが、この法律は、あくまでも業務用として製造・販売された『第一種特定製品』が対象となりますのでご安心ください。
フロン類は、オゾン層を破壊し、地球温暖化の原因となると言われています。したがって、地球環境を守るためにも、ぜひ本稿でご紹介した内容は頭に入れておきましょう。

参考:フロン排出抑制法の対象となる機器は何?