食品工場のカビ対策について。そもそもカビの生えやすい場所とは?

今回は、食品工場における『カビ対策』についてご紹介していきたいと思います。カビ対策については、食品工場に限らず、大量調理施設や一般の飲食店などといった食品を取り扱う施設では、頭を悩ませる衛生管理担当者様が多いことでしょう。
こういった施設にとってカビの発生とは、食品や製品への異物混入問題を引き起こすだけでなく、製品そのものや建物自体を劣化させる原因ともなる、非常に厄介なものなのです。さらに、カビが発するマイコトキシン(カビ毒)は、健康被害の原因となることも分かっていますし、大切な従業員の健康まで損ねてしまう可能性があるものなのです。
また、製造ラインなどでのカビの発生は、食菌性昆虫であるチャタテムシやヒメマキムシ等の繁殖まで促進させてしまう等、さらに異物混入の可能性を高めてしまう大きな危険をはらんでしまうものなのです。したがって、食品工場などで衛生管理を担当している方などからすれば、カビの管理は非常に重要なものだといえるでしょう。
そこで今回は、そもそも「カビが繁殖しやすい条件とはどのようなものなのか?」や、その対策についてご紹介していきたいと思います。

食品工場におけるカビ被害とは?

それではまず、食品工場などにおいて考えられるカビ被害にはどのようなものがあるのかを考えてみましょう。そもそもカビというものは、食品工場にありがちなでんぷんや糖分を含んだ物質を好むものですが、汚れやほこりなどでも栄養源になるものですので、どこにでも繁殖することが考えられるものなのです。このようなカビが発生した場合には、

  • カビが製品に入ってしまう等、異物混入問題の原因となる
  • カビが大量繁殖してしまった場合、建物の景観の悪化原因となる
  • 不衛生ですので、監査時の評価が低下する
  • 悪臭を発生させる原因となる
  • 建物の劣化を進める
  • 建物内で勤務する従業員に健康被害が発生する可能性がある

上記のような問題に発展する可能性があります。
製品に異物混入があった場合には、消費者からのクレームはもちろん、最悪の場合、食中毒の大量発生など、食品災害に発展してしまうなど、非常に大きなリスクをはらんでいるといえるでしょう。

カビが繁殖しやすい場所とは?

それでは、実際にカビが繁殖しやすい場所とはどこなのかという事についてご紹介します。一般的にカビが繁殖しやすい条件というものは、以下の通りです。

カビが発生しやすい条件
・温度:カビはダニなどと同様に25℃前後を好むといわれています。その為、15~30℃程度に保たれている場所はカビにとって繁殖しやすい場所と言えます。
・湿気:一般家庭でも梅雨時期はカビに注意といわれるように、カビは湿気が多い場所を好みます。カビは、相対湿度が60%を超えるとすごい勢いで増え始めます。
・場所:カビにとって栄養がある場所は増えやすいです。でんぷんや糖分はもちろん、汚れやほこり、塗料、壁材等も栄養になります。
上記のような条件と言われています。このような環境では、ものすごい勢いでカビが繁殖するようになるのですが、食品工場で考えた場合、湿気の溜まりやすい水回りなどは特に注意が必要でしょう。
以下に、具体的な場所と、それぞれの注意すべき点をご紹介しておきます。

1.原料食材の保管庫など
食品工場では、原材料を保管するための場所があります。こういった場所では、原材料に付着しているカビが、原材料の養分や水分をもとに保管庫内で増殖してしまうことがあります。保管庫の湿度や温度によっては、どれか1個にカビが付着していたため、他の食材にまでカビが繁殖する危険があるので注意が必要です。
2.シンクなどの水回り
一般家庭でもカビの繁殖ポイントとなる水回りですが、食品工場でも同様です。水回りは、常に湿度が高い状態にあるため、カビにとっては非常に条件が良い場所なのです。こういった場所については、特に注意深く管理する必要があります。
3.調理器具など
まな板などの調理器具や製造機械は、直接食品に触れるため、食物残渣が付着しやすく、カビの栄養源が付着したままになることが多いです。こういった部分は、直接食品に触れるという事もあり、常に清掃を行う事や熱湯消毒などのカビが生えにくくする対策を行うべきでしょう。
4.水蒸気が発生しやすい部屋の天井
調理エリアなど、水蒸気が発生し湿度が高い状態にある部屋では、水蒸気が天井に当たり、多湿になることによって天井にカビが生えるという事が多いです。天井のカビは、その下で作業を行う人間や製品にカビが降ってくる危険性があります。作業内容によって湿度が高くなると想定できる部屋は、換気扇などの設備で空気循環を考え、湿度が溜まらないように対策が必要です。
5.空調周辺
空調設備もカビが大量繁殖する部分です。エアコンや換気扇などは、室内の埃が堆積する部分ですので、カビの栄養源があるのです。さらに内部には水分が溜まりやすい設備となるので、カビにとっては絶好の条件がそろうのです。こういった部分にカビが繁殖してしまうと、部屋中にカビの胞子を送り続けることになり、人体にも悪影響があります。空調設備は、定期的な点検・清掃を行いましょう。

カビが発生してしまった時の対処法

それでは最後に、カビが発生してしまった場合の対処法をご紹介しておきましょう。カビの元となる菌は、空気中のいたるところに存在しており、条件さえ整えば一気に繁殖してしまうものです。その為、本来もっとも重要なことは、日々の清掃を丁寧に行い、カビが繁殖する条件を作らないという事です。しかし、いくら注意していたとしても、いつの間にか繁殖しているのがカビですので、「カビが生えてしまった時の正しい対処法」も知っておいて損はありません。
以下で、カビが生えてしまった時の除去ステップをご紹介します。

STEP1 アルコールスプレーで胞子を死滅させる

食品工場などでは、カビを見つけたときにデッキブラシなどでゴシゴシ擦るという方法が良くみられます。しかし、この方法は、カビの元となる胞子を空気中に飛散させてしまうのでやめましょう。
そもそもカビというものは、表面に無数の胞子が成形されています。その為、本格的なカビの除去の前に、表面の胞子を死滅させる必要があるのです。カビの除去を行う場合には、まずはカビにアルコールをスプレーし、10分程度放置しましょう。この工程で表面の胞子は死滅するので、その後濡れ雑巾などでしっかりとふき取ってください。

STEP2 カビの除去

STEP1で胞子を死滅させたら、いよいよカビ本体の除去です。この時には次亜塩素酸ナトリウムを利用して殺菌を行います。雑巾やペーパータオルなどに次亜塩素酸ナトリウムをしみこませ、カビの生えている部分にあててください。カビの除去が出来たら、その部分を十分に水で流し、乾いたら完了です。

ゴシゴシ擦るのはNG
カビ除去のために、デッキブラシなどでゴシゴシ擦るのは、空気中に胞子を飛散させるだけでなく、擦った部分に細かな傷が入り、その部分にカビが生えやすくなってしまう可能性があります。その為、上述したように溶剤をしみこませたタオルなどを利用してカビの除去を行ってください。また、カビの繁殖度合いによっては、プロのカビ取り業者に依頼したほうが良いでしょう。業者によっては、施設内でカビが大量に繁殖する原因を突き止め、改善案を出してくれる業者もあります。

まとめ

今回は、食品工場などにおけるカビ対策についてご紹介してきました。カビの繁殖に関しては、どれだけ注意をしていたとしても、見えない機械の中で繁殖している場合などもあり、異物混入事件にまで発展する可能性がある非常に恐ろしいものです。
しかし、本稿でもご紹介しているように、カビは繁殖しやすい条件というものがありますので、その知識を持ってしっかりと対策を行うことで、カビの大量繁殖を防止することは可能です。特に、除湿や日々の清掃といったものを徹底することだけでも、大きなカビ対策となりますので、上述したカビの生えやすい場所は定期的に確認・清掃を行っていくようにしましょう。

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