食中毒が起きやすい季節到来!食中毒の原因となる細菌が発生しやすい場所とは?

今回は、食品を取り扱う施設が特に注意しておきたい「細菌が発生しやすい場所」についてご紹介します。

さまざまな食品を取り扱う工場や飲食店などであれば、食中毒などの食品事故は「絶対に起こしてはならない!」という考えのもと、普段から衛生管理に力を入れていることだと思います。特に、これから夏に向けて気温が上がっていくと、食中毒が増加する傾向にあり、より厳格な衛生管理が必要になるはずです。それでは、食中毒が増加すると言われる夏場には、どういった点に注意しておけば良いのでしょうか?

この記事では、夏場の食中毒の原因となるさまざまな細菌について、「施設内のどこが危険な場所なのか?」ということを中心にご紹介したいと思います。

夏場の食中毒は細菌が原因

食中毒と聞くと、多くの方が「夏場に急増するもの」だと考えているかもしれません。しかし実際には、食中毒というものは特別夏場に増える物ではなく、1年中注意しておかなければならないものです。以前、「食品工場必見!代表的な食中毒の原因菌とその対抗手段をご紹介!」という記事の中でもご紹介していますが、年度によっては冬場に発生した食中毒件数の方が多いような場合もあり、夏場だから食中毒に注意しなければならないというわけではなく、一年中徹底した衛生管理が必要です。

食品を取り扱う施設で勤務する方が頭に入れておきたいのは、夏場と冬場では食中毒の原因が異なるということで、12月~3月のような低温で乾燥した環境ではウイルス性食中毒が優位になり、4月~10月のように高温で多湿になる時期は細菌性食中毒が増加するのです。つまり、食中毒に関しては一年中気をつけて置かなければならないのに加えて、夏場は「細菌の繁殖をおさえる」ということを念頭に置いておくべきなのです。
以下で夏場に細菌性食中毒が増加してしまう要因をいくつかご紹介しておきましょう。

食品工場必見!代表的な食中毒の原因菌とその対抗手段をご紹介!

夏場に細菌性食中毒が増加する要因

それでは、なぜ夏場は細菌性食中毒が増加するのでしょうか?答えは簡単で、夏場の食品工場など、食品関連施設は細菌が増殖するのに非常に適した環境になっているからです。
一般的に、細菌が増殖する条件は以下のようなものと言われています。

  • 細菌の栄養源がある
    食品そのものや食品残渣、調理器具などに付着した汚れは細菌の栄養源となってしまいます。そのため、これらを長時間放置してしまうと、あっという間に細菌が増殖するのです。
  • 適度な水分がある
    食品中の水分を利用して細菌が増殖します。
  • 温度条件
    食中毒の原因となる細菌のほとんどは、10~60℃という温度条件で増殖すると言われています。さらに、最も細菌の発育が進む温度条件は36℃程度と言われています。

細菌が増殖する条件は上記のようなものとなっています。つまり、高温多湿な日本の夏は細菌にとって非常に増殖しやすい環境と言え、夏場の細菌性食中毒が増加してしまうのです。

細菌が増殖しやすい場所はどこ?

それでは、食品工場など、食品を取り扱う施設において、食中毒の発生を防ぐために特に注意しておかなければならない場所についてご紹介していきましょう。当然、以下に紹介する場所以外は注意しなくても良いというわけではなく、下で紹介する場所が「細菌が繁殖する条件が整っている」ということで、より徹底した衛生管理が必要になるということです。

調理器具

まずは、食品の加工に使用している調理器具です。食品工場や飲食店などでは、包丁やまな板、ザルなど、食材に直接触れる調理器具がたくさん存在します。そのような調理器具について、洗浄が不十分であったり、使用した後に洗浄もせずそのまま放置しておく…と言った対応をしてしまうと、調理器具に付着している細菌が増殖してしまうリスクがあるのです。そして、次の食品に使用した際、細菌が食材に移ってしまうことになるのです。

他には、生肉を切ったまな板を、洗浄もせずにそのまま野菜を切る…などの使い方をしてしまった場合、生肉に付着していた食中毒菌が野菜に付着してしまう危険があります。したがって、調理器具による細菌の増殖を防ぐためには、使用する食材の種類ごとに調理器具を分けたり、使用後は小まめに洗浄するなどの対策が必要です。

清掃用具

意外と見落としがちなのが、ふきんや雑巾などの清掃用具です。汚れた場所を綺麗にするために使うものですので、「清掃用具は綺麗」だと勝手に認識してしまっていませんか?

そもそも調理現場で使用する清掃用具は水分を多く含んでいます。さらに、食品残渣や食品から出たドリップなどを拭き取るために使用している…ものですので、細菌の付着や増殖に非常に適したものと言えるのです。したがって、キレイにするために使用する清掃用具が、小まめに洗浄・殺菌されていない場合には、清掃用具内で細菌が増殖してしまっており食中毒の原因になることがあるのです。

こういった清掃用具からの細菌の増殖を防ぐためには、使い捨てのふきんを使用したり、小まめな消毒や用具自体の定期的な交換を徹底する必要があるでしょう。

ゴミ袋など食品残渣の周辺

食品残渣などを入れておくゴミ袋は細菌が非常に増えやすい場所です。特に、気温の高い夏場は腐敗も速くなりますので、ゴミ袋を放置してしまうと細菌の増殖を招く以外にも異物混入の原因となる害虫が集まってしまうリスクも存在します。

食品残渣などをまとめたゴミ袋は、毎日の作業終わりに処理することになると思うのですが、作業中でも使用する食材からは離れた位置に配置しておかなければいけません。作業場所の近くに食品残渣があると、水はねや何かの拍子に食材が触れてしまうことで、細菌が移ってしまう可能性があります。

作業着や作業員自身の手

食中毒の原因は、食品の加工を担う作業員自身であることもあります。例えば、くしゃみを手で受け止めた…複数人が触れたドアノブを触ったなど、食品に直接触れる手に細菌が付着している可能性もあるのです。

したがって、食品を取り扱う時には必ず手袋をする、手袋をしない現場では作業中に顔などを触らない、作業場所以外では作業着を着用しない、作業後には必ず洗濯するなど、作業員自身の清潔が保たれるような対策が必要です。また、飲食店や一般家庭でも多い食中毒原因として、手に傷がある状態で調理をする…というものがあります。実際に、手の傷が原因となった食中毒事故はたくさんありますので、食品に直接触れる従業員の手に傷が無いかしっかりとチェックしておきましょう。

まとめ

今回は、夏場の食中毒の原因となる細菌についてご紹介してきました。この記事でもご紹介したように「夏場は食中毒が増加する季節」と考えている人がいるのですが、実は正確に言うと細菌性食中毒が増加する季節なのです。そもそも、食中毒というものは、一年中発生するものであり、夏場と冬場で注意しておかなければならない「食中毒の原因」が異なるだけなのです。

食中毒の原因となる細菌が最も繁殖しやすい温度条件は36℃前後と言われているため、高温多湿になる日本の夏は細菌にとって非常に好ましい季節なのです。さらに、食品工場や飲食店などは、細菌の栄養源となる食品残渣などがたくさん存在するため、適切な洗浄や殺菌が行われていない施設では、あっという間に細菌が増殖し、食中毒が発生してしまう…なんてことになるのです。
食中毒の原因となる細菌については、繁殖しやすい条件というものがありますので、夏場は特にそういった部分の清掃は念入りに行うようにしましょう。