今話題の『社内大学』とは?その特徴やメリットをご紹介します。

さまざまな業界で人材不足が深刻化していると言われる中、ここ数年『社内大学』や『企業内大学』というものが注目されるようになっています。まだまだ「聞いたことが無い…」という方のほうが多い言葉かもしれませんが、今後のことを考えるとこの言葉は覚えておいた方が良いかもしれません。
『社内大学』を簡単に説明すると、会社側が社員に対して”学べる場”を提供するもので、社員が自主的に学びたいと思えるカリキュラムを選択して受講できる制度となります。少子高齢化が進む日本では、優秀な若手人材の確保に頭を悩ませる企業が増加しています。社内大学の設立は、社員教育の強化になりますので採用活動において他社との大きな差別化を図ることができます。さらに、入社した社員に関しても、その能力の底上げにつながるなど、さまざまなメリットが存在すると考えられているのです。

『超売り手市場』などとも呼ばれる現在の採用市場では、働き手側が会社を選ぶという様相が強くなっています。その中でも「入社後の自身のキャリアプランが実現できるのか?」を基準にする傾向が強くなっており、”学べる場”の提供は非常に魅力的に感じるものだと言われています。もちろん、企業側にとっても、採用した人材の能力を底上げすることができるというメリットがあるのです。それでは、近年注目されている『社内大学』の設立は、従来から行われてきた社内研修制度と何が違うのでしょうか?
採用した人材に『学べる場を提供する』と言う点では、どちらも同じようなものと思えるかもしれませんが、期待できる効果が大きく違ようです。

そこで今回は、今後もその注目度が高くなっていくと予想される社内大学について、従来の社内研修との違いやその特徴をご紹介したいと思います。

『社内大学』の特徴とメリット

それではまず、社内大学が「そもそもどういったものなのか?」という概要や、社内大学を設立することで得られるメリットについて簡単にご紹介していきましょう。

どのような企業でも、新たな人材を確保した際には、社内研修などの教育は必ず行っていることだと思います。新入社員への教育は、当たり前のように行われているのに、社内大学への注目度が年々高くなっているのはなぜなのでしょうか?
実は、社内大学については、企業や各部の担当者が用意したカリキュラムの中から、社員自身が『自主的に学びたいと思う物』を選択して受講できるというのが大きな特徴になっているのです。従来の社内研修というものは、採用した人材に対して企業が作ったマニュアル通りの教育を行っていくというものでしたが、社内大学では『社員自らが学びたいカリキュラムを選択して手を上げる』ということが重要とされています。さらに、社内大学で用意されるカリキュラムについては、社員自身が「学びたい・聞きたい」と考えているものについてきちんと汲み取り、講義内容を決めるというプロセスがとられています。そのため、自分が学びたいと思えるカリキュラムが用意されやすいと言う点でも、より高いモチベーションで学ぶことができ、社員の成長につながるのです。

従来の社内研修では、その会社が持つ独自技術やノウハウについては、OJTでしか学ぶことができませんでした。しかし、社内大学では豊富な知識を持つベテラン社員に講師を任せることもありますので、OFFJTとしても学ぶことができるようになるのです。こういった手法は、講師役となった既存社員自身についても、今まで感覚的に身につけてきた知識や技術を、人にわかりやすく伝えるため、理論的に整理しなおすチャンスになり、講師を担当した社員自身の成長も見込むことができるのです。

『社内大学』設立のメリット

社内大学を設立することのメリットをご紹介します。

企業側のメリット

  • 社内講師も成長できるなど、社員全体の能力を底上げすることができる
  • 採用活動で他社との差別化ができ、優秀な人材を確保できる可能性が高くなる
  • 優秀な人材を育成できる

社員側のメリット

  • 自身のキャリアプランを実現することができる
  • 専門的な知識を学ぶことができる
  • レベルの高いカリキュラムを無料で受講できる
  • 既存社員も講師を担当することで、さらなる成長につながる

このように、社内大学の設立は、会社側・社員側双方に大きなメリットがあると言われているのです。
学びの機会の充実は、社員のモチベーションをアップさせ、離職率の低下にもつながります。さらに、『超売り手市場』と言われる現在の採用市場では、企業はますます『選ばれる会社』になる必要性が高まっています。したがって、社員のキャリアプランの実現を手助けできる社内大学の設立は、採用市場での大きな差別化にもなるのです。

従来の社内研修との違いは?

上述しているように、社内大学が注目される以前から、企業は採用した人材に対する社内研修は必ず行っていることでしょう。それでは、従来の社内研修と社内大学の違いとはどこにあるのでしょうか?

一般的に、社内研修が行われる目的は、ビジネスマナーや通常業務に必要なスキルの向上となります。皆さんも『OJT(On-the-job Training)』という言葉は耳にしたことがあると思うのですが、これは、実務を通して先輩社員から若手社員へ知識やスキルを継承していくものです。しかし、OJTは、通常業務の中で研修を行うものですので、基本的に直近の業務についてしか学ぶことができず、社員自身が学びたいと考えていることとズレていることも珍しくないのです。もちろん、業務に必要な知識ですから、学ばなければならないものなのですが、社員がモチベーションを保ち続けるのはなかなか難しいものです。

一方、社内大学では、用意されたカリキュラムの中から、社員自身が能動的に選択し学習していくシステムになっているのです。さらにこのカリキュラムを作るプロセスでは、社員自身が「学びたい・聞きたい」と思うような興味のあるテーマを汲み取るという段階もあり、学ぶ側が高いモチベーションを保つことが可能なのです。さらに、等級や職種、成長段階に応じた講座が用意されていますので、自分の立ち位置に合わせてさらなる成長を目指すことができるなど、本物の大学顔負けの教育システムが整っているのが大きな特徴です。他にも、担当業務に直接関係のない講座について、自分の意志で学ぶことができるようになりますので、専門分野だけでなく幅広い知識・スキルを身につけることも期待できるのです。

社内大学では、外部の専門家が講師を担当することもありますが、既存社員が社内講師として登壇することも少なくありません。そのため、本来の担当業務とは関係のない部署の人員ともコミュニケーションがとれるなど、社内全体の人間関係の改善にも役立つでしょう。何より、社内講師は、今まで感覚的に身につけてきたスキルを、理論的に整理することができるようになるため、自身の成長に大きなプラスとなるのです。

まとめ

人手不足や採用難が深刻化している近年では、内部人材を育てる必要性に迫られた企業が、新たな社員教育の場として『社内大学』を積極的に設立することが増えていると言われています。この記事でご紹介したように、社内大学は従来の社内研修とは異なり、社員が能動的に学習できる環境を整えることができ、キャリアアップの実現につなげることができるのです。

日本国内では、トヨタやソフトバンクなど、資本力のある大手企業が積極的に導入している教育制度のように思えますが、近年では中小企業の中にも社内大学を設ける企業が増加しています。実際に、三和建設でも、平成29年4月より中堅・ベテラン社員を講師とする「SANWA(サンワ)アカデミー」を開講するに至っています。

少子高齢化が叫ばれる中、今後も人材獲得競争がどんどん激しくなっていくと予想されている現在では、内部人員の能力をどのようにして育成していくのかが非常に重要な課題となることでしょう。社内大学は、新入社員の教育だけでなく、全社員の能力を底上げすることができるとされていますので、設置を考えてみるのも良いのではないでしょうか。