最近よく聞く『代替肉』とは?代替肉の種類やそのメリットなどを考えてみよう

皆さんは『代替肉』というものが何なのかご存じでしょうか?近年では、環境問題や食糧問題、人々の健康志向など、さまざまな観点から代替肉への注目度がどんどん高くなっていると言われています。

しかし、日本国内だけで言えば、まだあまり浸透しているとは言えないのが実情で、『代替肉』という言葉は聞いたことがあるものの、具体的に「何の肉なんだろう?」と不思議に思っている方も多いのではないでしょうか。自分が口にするものとなると、味だけではなくやはりその安全性がどうしても気になってしまうものですよね。

そこでこの記事では、そもそも代替肉がどういったものなのか、人が口にしても安全なのかなどについて簡単にご紹介していきます。

『代替肉』とは何だ?

それではまず、『代替肉』がどのようなものなのかについて簡単にご紹介していきましょう。代替肉という名称から「肉ではなさそう…」ということがイメージできると思うのですが、これは牛肉や豚肉、鶏肉などといった動物の肉を使用せず、大豆や小麦などの植物を原料として本物の肉のように加工した食品です。代替肉という言葉を聞いたことがない人でも『大豆ミート』というのは耳にしたことがあるのではないでしょうか。

ちなみに代替肉は「だいたいにく」という読み方になり、別名では疑似肉、植物性タンパク、フェイクミート、プラントベースミート、オルタナティブミートなど、さまざまな呼び名が使われています。2021年現在では、動物の肉と比較した場合、代替肉の方が割高になってしまうため、まだまだ市場規模はそれほど大きくないのが実情です。しかし、代替肉専門のレストランがちらほら登場するようになっているなど、代替肉のメリットがもっと大きくなって行けば将来的に動物性の肉に取って代わる時代が来るのではないかとも言われています。

代替肉については「味が良くなさそう…」といった感じで、あまり良いイメージを持っていない人も多いのですが、実はマクドナルドやケンタッキーなど、世界的な大手チェーン企業が既に代替肉の使用を開始しています。日本国内でも、モスバーガーやドトールなどがパティに植物性の代替肉を使用したものを開発していますし、スーパーやコンビニなどでも代替肉を使った商品が続々と登場するようになっていることから、代替肉と気付かずに口にしていたなんて方も多いかもしれません。

参考:モスバーガー「ソイパティの開発」

どんな代替肉があるのか?

「代替肉は食べたことがない!」と考えている方が多いのですが、上述したように日本国内でも既に代替肉を利用した商品は販売されるようになっていますし、知らずに口にしていた…なんてこともあると思います。ちなみに、日本ではまだそれほど多くの代替肉商品があるわけではないのですが、海外ではかなり広く普及するようになっており、ハンバーガー関連の商品やソーセージなどの加工肉は多くの代替肉商品があると言われています。

最近では、ベジタリアンやヴィーガンという考えも広く普及してきましたし、今後は代替肉を使った商品の種類はさらに増えていくと考えられるでしょう。現在では、以下のような企業が代替肉メーカーとして有名です。

  • ビヨンドミート(Beyond Meat)
    世界で最も成功していると言われる代替肉メーカーがビヨンドミートです。ビヨンドミートは、えんどう豆のタンパク質が主原料で、本物そっくりな肉汁の演出のためビーツのエキスが使用されています。ビヨンドミートでは、ハンバーガーパティ、ビヨンドバーガーを中心に、チキンやソーセージ、ミートボールなどの商品が開発されています。
  • インポッシブルフーズ(Impossible Foods)
    「ビヨンドミートより美味しい」といわれ、その真似できない高い技術力で注目されているのが、インポッシブルフーズです。インポッシブルフーズの代替肉は、大豆が主原料となっているそうです。大豆は人によってアレルギーの懸念があるのですが、タンパク質含有量はえんどう豆より多く、代替肉の原材料としては非常に優秀だと言われています。なお、このメーカーでは、チキンなどは作られておらず、バーガーパティー(ひき肉)のみとなっています。
  • ガーデイン(Gardein)
  • ガーデインは北米を中心に有名な代替肉メーカーで、大豆、えんどう豆、小麦のタンパク質を主原料に代替肉を作っています。ガーデインは、商品ラインナップが非常に豊富で、バーガーパティ以外にも、チキンナゲットやポークソーセージ、ビーフジャーキーやフィッシュフライなど、約60種類もの商品を開発しています。中には、アレルゲン対応としてソイフリー(大豆不使用)やグルテンフリー(小麦不使用)などの商品もあり、さまざまな人に配慮した商品開発が行われています。

日本国内では、まだまだその知名度が低い代替肉ですが、世界には上記以外にもさまざまな代替肉メーカーが存在し、40年以上の歴史を誇るような老舗メーカーもあります。
もちろん、日本国内にも代替肉を製造している企業は存在しています。近年では、大塚食品が大豆ベースの代替肉ハンバーガー「ゼロミート」の販売を開始(2018年)したことが注目されていますが、実は業務用チョコレートなどで世界シェア3位を誇る不二製油は、世界に先駆けて代替肉を手掛けてきたメーカーとしても有名です。不二製油は、なんと1950年代から大豆原料の食品素材を開発しており、1957年に「大豆ミート」製品の販売を開始しています。その他にも、「粒状大豆タンパク」、「粒子状大豆タンパク」など、60種類以上もの大豆ミート素材を業務用として提供しています。

参考:不二製油「大豆ミート」ページ

気になる代替肉の安全性は?
代替肉が思った以上に広く普及し始めているとわかったところで、気になるのは「代替肉の安全性」ですよね。上述したように、原料が植物由来ですし、安全性に問題はないと考えてしまう人が多いことでしょう。しかし実際には、代替肉に対する安全性を懸念する意見は根強いと言われています。
なぜかというと、代替肉は「食品添加物が多い」ということが理由です。代替肉を作るには、メチルセルロースや着色料、二酸化チタン、酸化防止剤、さらにうまみ成分となるイノシン酸ナトリウムなど、さまざまな化学物質が含まれています。そのため、代替肉をメインに食べていくと考ると、こういった食品添加物の摂取量が増えてしまい、それによる健康面への影響が心配されているわけです。今後日本国内でも、代替肉が浸透していくと考えられていますので、可能な限り食品添加物が含まれていない代替肉の開発が期待されます。

『代替肉』のメリットとデメリット

それでは最後に、世界中でその注目度が高くなっていると言われる代替肉について、どういったメリットが存在しているのか、また克服すべきデメリットは何かをご紹介していきましょう。

『代替肉』のメリット

『代替肉』のメリットについては、地球環境に優しいということと、体に良い食材だという2点があげられます。
例えば、現在世界中が協力して克服しなければならないと言われているのが地球温暖化ですが、温暖化の原因といわれている温室効果ガスについて、なんと約15%は家畜産業が原因となっていると言われています。家畜の代表である牛については、頻繁にげっぷやおならをするのですが、これにCO2の約28倍とも言われる温室効果を持つメタンガスが大量に含まれています。したがって、こういった家畜の飼育が減れば、それだけ温室効果ガスの排出量が減り、地球温暖化を抑えられると考えられているわけです。
さらに、多くの家畜を飼育するためには、広大な牧場が必要になりますので、その分、森林の伐採が進んでしまいます。つまり、家畜が減れば、こういった森林伐採の必要性も少なくなり、地球環境保全に役立つと言われています。
健康面で考えた場合、食品添加物の問題があるものの、植物性であることから、低カロリー・低脂肪というメリットが得られます。他にも、食物繊維や大豆イソフラボンなどといったファイトケミカル(植物栄養素)が摂取でき、人の体に良いという点が大きなメリットと捉えられています。

『代替肉』のデメリット

最期は、代替肉が普及していくことで生じるデメリット面です。現在、代替肉のデメリットといわれているのは、動物性の肉と比較して価格がどうしても高くなってしまう…ということや、代替肉の普及で失業者が増加してしまう…という点です。
価格に関しては、まだまだ代替肉が普及しきっていないというのが大きな原因と考えられます。それにしても、それなりに普及し始めていると言われるアメリカで、種類によっては約4倍の価格になってしまうものもあると言われるなど、日常生活で口にする肉としては、なかなか手が出ない価格だと言えるでしょう。なお、大型スーパーとして日本でも有名なコストコが、2024年までに現在の肉と同等か、さらに安い値段で代替肉の販売を目指すと言っていますので、注目しておきましょう。

もう一つの深刻な問題が、代替肉が普及してしまうと、現在畜産業を生業にしている人たちの仕事が失われてしまう…という点です。要は、失業者が大量に発生するのではないかという懸念ですね。日本国内はもちろん、世界中の多くの人が畜産に関わっているわけですので、そういった畜産によって生計を立てている人たちが生活できなくなってしまうかも…というのは、非常に深刻な問題だと言えるでしょう。代替肉などは、工場での大量生産が一般的でしょうし、雇用の面で考えれば、悩ましい問題かもしれませんね。

まとめ

今回は、近年、日本国内でも消費されるようになってきた代替肉の基礎知識をご紹介してきました。簡単に言うと、植物を加工して肉のような味や食感を再現した食品の事を指しています。諸外国では、ベジタリアンやヴィーガンという考えを持つ方が増えていることもあり、かなり昔から代替肉の開発が行われてきました。日本国内では、まだまだ知名度が低い状態ですが、大手チェーン店などでも代替肉を使ったメニューの販売をスタートするなど、今後は急速に普及していくと予想されています。
ただし、雇用の問題や食品添加物の多さ、価格の高さなど、もう少し解決しなければいけない問題もありますので、どういった動向になっていくのかを注視しておきましょう。