製造業の工場経営者の方であれば、「電気代の削減ができたら、もっと収益がアップするのに…」などと、施設の省エネ対策に頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか?様々な製品を製造する工場では、多くの機械設備を稼働させる必要があります。また、従業員の快適な労働環境を整えるためには、照明機器や空調設備をフル稼働させなければならない季節もあることでしょう。しかし、こういった工場内で使用する設備は、年を経るとともに老朽化してしまい、余計な電力が掛かってしまうこともあります。
もちろん、工場内の設備更新にはイニシャルコストがかかってしまいますが、老朽化した設備を新しくすることで、大幅にランニングコストを下げることも期待できるのです。さらに近年では、電力の自由化もあり、自社に最適な電力会社を選ぶことでコスト削減を実現することも可能です。そこで今回は、製造工場などで電気代削減が期待できる省エネ対策手法や、実際の成功事例についてご紹介します。
Contents
工場の電気代削減ができる一般的な省エネ方法は?
それではまず、工場などで電気代削減効果が得られる省エネ対策について、代表的な手法をいくつかご紹介しておきましょう。製造工場などで、大幅に電気代を削減したい…と考えている場合、設備投資によるコスト削減や、電力会社の切り替えが効果的です。例えば、工場内で使用している照明器具を入れ替えることや、空調設備の更新、電力会社の切り替えなどは、すぐに実行できる省エネ対策ですので、非常にオススメです。
工場内の照明をLED照明に切り替える
工場の照明器具にかかる電気代は意外にコストがかかっています。そこで、近年では、工場内の照明器具を高効率で長寿命なLED照明に入れ替える企業が増加しています。工場で行うLED照明の導入は以下のようなメリットがあると言われます。
- 照明にかかる電気代を削減できる
- 熱放出が少ないため、空調コストの節約にもつながる
- 蛍光灯や電球と比較して長寿命となるので、交換にかかるコストや手間を省ける
- 赤外線や紫外線の放出が少ない
最近では、工場へのLED照明普及促進のため、高天井用LED照明や、LEDベースライト、LEDダウンライトなどと、照明器具の選択肢も増加しています。したがって、作業場所ごとに最適なLED照明を選択することも可能です。
水銀灯からLED照明への切り替えで、年間の電気コストを100万円以上削減できたという事例もあるそうです。
空調設備の更新を行う
空調設備は従業員の労働環境を考えた場合、必要な設備と言えるでしょう。しかし、何十年も同じ空調機器を使用している場合、最新のものとは性能自体が劣ってしまいますし、老朽化により余計な電気代がかかってしまうことになります。したがって、工場の規模に合わせて、省エネ効果の高い空調設備に切り替えることも非常に有効な省エネ対策となります。
また、空調設備に関しては、フィルターの掃除を小まめに行うなど普段のメンテナンス状況や、適切な温度設定を守ると言った運用方法で、大きく省エネ効果も変わってしまいます。例えば、頻繁に人の出入りがある部屋などであれば、その都度空調の電源をオフにすると、逆に電気代が上がってしまう可能性もあるのです。つまり、工場内の空調設備は、使用する場所によって適切な運用方法を考える必要があるのです。ちなみに、屋外からの熱を遮る対策も効果的な省エネ対策になりますので、簡単にできる部分から対策を進めましょう。例えば、室内に直射日光が入らないよう、窓にブラインドを設置するだけでも、空調のコストを削減できます。
電力会社を見直す
これは、直接的に工場内の設備などを入れ替えるといった対策とは違いますが、工場のランニングコストを下げるためには非常に効果的な手法です。大規模工場や大型商業施設向けの施設では、2000年から電力自由化が始まっています。2016年に一般家庭でも電力の自由化がスタートしたので、一気に知名度が高くなっており、皆さんの中でも電力会社の切り替えを考えている方も多いのではないでしょうか?
「電力会社を変えた程度でコスト削減なんてできるの?」と疑問に思うかもしれませんが、実際に各種書籍を製本する工場では、電力会社の切り替えだけで年間約400万円程度の電気代の削減を実現したという実績もあるようです。電力会社の切り替えは、イニシャルコストなどもかかりませんので、今すぐ簡単にできるコスト削減手法としては非常にオススメです。
省エネ設備の導入には補助金を利用しましょう
工場で使用するさまざまな設備を省エネ設備に切り替える場合には、国や地方自治体が交付している補助金が利用できます。上述した照明設備や空調設備の入れ替えでも、高い省エネ効果が見込まれる場合には、導入にかかる費用の一部を補助してもらうことが可能です。また、生産設備に関しても、省エネ効果が高いと認められているようなものには補助金の申請が可能です。
補助金によって導入にかかる負担を抑え、ランニングコストの削減も期待できますので、一石二鳥になると思います。
省エネ対策の成功事例をご紹介
それでは最後に、実際の工場などで進められた省エネ対策の中でも、成功事例として報告されている事例をいくつかご紹介します。ここでご紹介する成功事例は、近畿経済産業局がまとめている『平成27年度工場・事業場における省エネルギー取組事例集』に掲載されている事例です。
新日本工機株式会社の省エネ対策の事例
まずは新日本工機株式会社で実施された省エネ対策からです。ここで行われた省エネ対策は以下のようなものです。
- 空調用送風機のインバータ化
- 空調用冷却ポンプのインバータ化
- 照明の高効率化としてメタルハイライド灯をLEDへ更新
- 工場以外の施設を省エネ改修
・外装・内装の改修により空調負荷の軽減
・窓の面積縮小及び、複層ガラスの導入で空調負荷を軽減
・照明の高効率化
・高い天井部分に天井を新設し、天井断熱を施す。これにより空調負荷を軽減
・空調を集中方式から個別方式に切り替えるなど、空調設備の省エネ改善を行った
新日本工機株式会社では、上記のような省エネ対策を実施し、2005年度から2014年度までに消費電力全体で30.7%の削減を実現しています。
株式会社TKX 長浜工場の省エネ対策の事例
次は、株式会社TKX 長浜工場の省エネ対策事例です。ここで行われた省エネ対策は以下のようなものです。
- 回帰分析による契約電力の引き下げ
- スライス工程の生産性向上による原単位の改善
- コンプレッサー室の換気設備の改善を行いエアー量を削減
- エアコンの室外機に日よけを設置
- 工場天井照明をLED化
まとめ
今回は、製造工場などで有効な省エネ対策や、実際に進められた省エネ対策成功事例をご紹介しました。本稿でご紹介したように、さまざまな製品を製造する工場では、非常に多岐にわたる機械設備が利用されています。もちろん、製造に直接関係する生産設備から、従業員の労働環境を整えるための空調設備など、どれも工場の運営には必要不可欠なものです。しかし、工場の運営に必要だからと、消費電力などを無視していれば、余計なエネルギーが掛かってしまうことになります。
そこで本稿でご紹介したような、省エネ対策を進めてみてはいかがでしょうか?もちろん、生産設備全てを入れ替えるとなると、多大なイニシャルコストが掛かってしまいますので、できるところから徐々に省エネ対策を進めると良いでしょう。近年では、国や地方自治体が大量のエネルギーを使用する大型施設での省エネ対策を推進しているため、企業が行う省エネ対策には豊富な補助金を利用できる場合もあります。まずは、自社の中でどういった部分を改善すれば省エネが実現できるか専門家などに相談してみることをお勧めします。
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