寒い倉庫はモチベーションが下がる?倉庫で出来る防寒対策をご紹介

今回は、倉庫や工場など、大規模施設における職場環境について考えていきたいと思います。当たり前のことですが、日本には四季があり、冬はとても寒いものです。ここ数年は、様々な要因により『暖冬』が続いていると言われていますが、それでも1月から2月にかけては非常に厳しい寒さが続きます。昨年の1月・2月を思い返してみると、比較的降雪量も少ないと考えられる四国や九州地方でも大量の雪が積もり、道路上に自動車が立ち往生して身動きが取れなくなってしまったというニュースも多くありました。
働く環境によっては、こういった厳しい寒さのせいで仕事が非常に辛くなってしまう場合もあります。建設現場など、屋外での作業は当たり前ですが、屋内で作業を行う職場でも、寒さが従業員の負担になる施設も少なくないのです。特に、大型の施設になっていることが多い物流倉庫や工場では、その空間の広さから従業員の防寒対策が必要不可欠と言われています。
それでは、倉庫や工場は、なぜこれほどまでに寒くなるのでしょうか?本稿では、倉庫などの大型施設が寒くなる原因や、有効と考えられる防寒対策についてご紹介していきたいと思います。

倉庫や工場が寒い理由

倉庫作業や工場でのライン作業が「キツイ」「しんどい」と言われる理由の一つに「作業現場が寒いから…」と答える人は少なくありません。皆さんも同様でしょうが、極端に寒い場所や暑い場所というものは、働く環境に適しているとはいえず、そこで働く人の労働へのモチベーションに悪影響を与えてしまうものです。
一例をあげると、Cornell Universityの3人の教授が、室温と仕事の生産性に関する実験を行った所、

室温が25℃の場合、労働者は10%の誤り率で100%の時間をキーボード操作していたが、20℃では、25%の誤り率で54%のキー入力率に低下した
引用文献:Cornell Chronicle

という結果が出たのです。これは、オフィスでパソコンを使用した作業の結果です。労働環境が比較的良いオフィスでのパソコン作業でも、室温が5℃変わるだけでキーボードの入力時間が46%も低下するのですから、肉体労働も加わる倉庫内の作業で考えれば、さらに作業効率が落ちても不思議ではありません。
それでは、防寒対策を十分に行っていない倉庫や工場はなぜ寒くなりやすいのでしょうか。?主な原因を以下にあげてみましょう。

施設が大きく空間が広い

倉庫などが寒い原因は、単純に『広さ』からくるものが多いでしょう。例えば、一般住宅用のエアコンで部屋を暖める場合を思い浮かべるとわかりやすいですが、広い部屋ほど室内が暖まるのに時間がかかります。そして暖かい空気が逃げていかないように、エアコンを利用するときは誰もが窓や扉は閉めるでしょう。
しかし、倉庫の場合、大量の荷物を保管しておくことが目的となるため空間が広く、住宅のように暖かい空気が逃げないよう、細かく間仕切りを作ることも作業の妨げになることを考えると難しいでしょう。また、空間を有効利用するために天井を高くしている施設が多いのも、倉庫が寒くなる原因となります。

設備的な問題

上述のように、広い空間が必要になる倉庫や工場では、空間の広さに適した暖房設備が必要になります。当たり前のことですが、業務用の暖房器具となると、一般のエアコンとは比較にならないほど高額になり、それを取り付けるための工事代もそれなりのコストが必要になります。したがって、必要最低限の暖房器具の導入となっている施設も少なくないことから、工場や倉庫内で作業をする従業員から「寒い…」と声が上がることが多いのではないでしょうか。

取り扱い製品の問題

倉庫は、従業員が寒いからと言って好き勝手に温度設定を変更するわけにはいきません。一般的に、倉庫の役割というのは、消費者に運搬されるまでの間、製品を一時保管しておく場所です。したがって、保管する製品によって『保管温度帯』というものが決められているのです。わかりやすい例を挙げると「冷凍」「冷蔵」「常温」といった物です。
製品によっては、急激な温度変化に弱いものもありますので、倉庫内の温度は一定に保つ必要があり、そこで働く従業員はそれに合わせる必要があるのです。

倉庫作業が「寒くてツライ」と言われる理由は上記のようなことが考えられます。もちろん、細かく見ていけばそれぞれの業態や施設の作りによって、寒くなってしまう理由もあることでしょう。
それでは、様々な理由で寒くなってしまう倉庫や工場において、従業員のモチベーションを保つためにはどのような対策をすればいいのでしょうか?以下で、倉庫や工場における寒さ対策をご紹介していきます。

倉庫や工場における寒さ対策について

上述したように、倉庫や工場は様々な要因で『寒い施設』となってしまうものです。当たり前のことですが、従業員に対して「倉庫が寒いのは当たり前なのだから、寒さに耐えて仕事してください」といった対応では、労働環境としては問題があり、モチベーションの低下や生産性の低下を招いてしまう原因となってしまいます。そこで、ここでは倉庫や工場で働く従業員のために行われる一般的な寒さ対策についてご紹介します。
こういった寒さ対策には、施設が行う寒さ対策と、従業員個人が行う寒さ対策があります。

施設側で行える寒さ対策について

それではまず、施設側で行える寒さ対策についてご紹介していきましょう。

  • ビニールカーテンで間仕切りをする
    ビニールカーテンは、冬の屋台やカフェのテラス席などにも利用されるように、簡単に暖かい空間を作るのに非常に便利なアイテムです。上述したように、倉庫などの施設がなかなか暖まらないのは、空間が広いことや人や荷物の出入りも多く、暖かい空気が外に逃げてしまうことが大きな原因です。ビニールカーテンは簡単に設置することができ、広い空間を暖房設備が暖められる空間ごとに間仕切りすることが可能です。また、出入り口にビニールカーテンを取り付けることで、外から冷たい空気が入ることも防げるのです。
    ビニールカーテンは、設置するのに多額なコストはかかりませんし、取り付け・取り外しも比較的楽なので、広い倉庫の寒さ対策には持って来いのアイテムです。
  • ストーブを導入する
    最も手軽に寒さ対策ができるのはストーブを導入することでしょう。ストーブであれば、業務用エアコンの増設のように多額な費用も必要なく、必要な時に必要な場所に移動できるという利便性もあります。ストーブと聞けば石油を燃料とするものがイメージされるかもしれませんが、ハロゲンヒーターのように安全性が高いものなど種類も様々ですので、自社の倉庫に適したものを選択すればよいと思います。
    またストーブは、空間を温めるだけでなく、作業で冷たくなった手先を優先して暖めることもでき、繊細な作業が必要な倉庫や工場では非常に有効です。

個人で行える寒さ対策について

次は、個人で行える寒さ対策です。暑さや寒さと言うものは、人によって感じ方が大きく異なるものですので、ある程度は個人で対策する必要があるでしょう。

  • 着用する衣類で対策を行う
    近年では、各衣料品メーカーから様々な防寒対策用の衣類が発売されています。例えば、一見普通の肌着に見えるようなものでも、体から発せられる熱や水分を利用して保温する肌着は有名です。他にも裏起毛と呼ばれる仕組みは、近年ズボンやタイツなどにも応用されており、勤務する際に着用できる職場であれば有効な防寒対策と言えるでしょう。
  • カイロを使う
    冬場の防寒対策を行う場合、カイロは多くの方が使用するものですね。カイロにも衣類に貼りつけておけば長時間暖かさを保ってくれるものもあり、貼るタイプの物でない場合でもポケットに入れておけば指先を温めるのに重宝します。

個人でも上記のような寒さ対策を進めることで、寒さを和らげることが可能です。尚、寒さ対策を行う場合には「首・手首・足首」などを温めると効率の良い防寒対策が可能です。例えば、首回りは冷えを感じやすいと言われる場所ですので、ネックフォーマーをつけておくことや、タートルネックの衣類で対策を行うことで、体感する寒さが大きく違ってくると言われます。

まとめ

今回は、倉庫や工場における寒さ対策についてご紹介してきました。本稿でもご紹介したように、広い空間が必要になる倉庫などは、施設的に寒くなってしまう要因が多く存在しています。そのため、そこで働く従業員は「寒くてツライ」と考えてしまう人も少なくないでしょう。そのような環境ではモチベーションの低下はもちろん、生産性も低下してしまうと言われています。
倉庫や工場での作業は、取扱製品に合わせる必要もあり、広い空間が必要不可欠となるので、ある程度寒くなってしまうのは致し方ない面があるものですが、何の対策も施さず「とにかく寒さに耐えろ」といった職場環境では、従業員の定着率が低くなったり、ミスによる事故の発生も考えられます。人間の体は、暑さより冷えに強いと言われていますが、それでも常に寒い状況下での作業ではどうしても効率が下がってしまうものです。したがって、会社側、従業員側の双方がお互いに意見を出し合い、良いものを取り入れていけば、辛いといわれる倉庫作業も快適な作業現場にしていけるのではないでしょうか。