『新人教育』を成功に導くには?初めて教育担当になる人がおさえておきたいポイント

今回は、企業が採用した新人に対して行う『新人教育』の際におさえておきたいポイントをご紹介します。今年は、世界中で猛威を振るっている新型コロナウィルスの影響で、「4月入社を7月入社に延期したい…」などと、企業で新入社員の入社時期先送りを検討しているという情報も出回っていますが、通常4月になると多くの企業で新卒社員が一斉に入社をしてきます。企業からすれば、新たな戦力となる新卒社員はいち早く育てたいと考えているのでしょうが、新人教育を担当することとなった社員の中には「新人教育を担当することになったけど、最近の若い人は何を考えているのかわからなくて教育方針に困る…」といった方や、「どう教育していけば良いのか分からなくて悩んでいる…」という方もいるのではないでしょうか?

さらには、せっかく採用した新人社員ですので、あまり厳しく指導して「すぐに辞められても困るし…」などといったことも考えてしまうでしょうし、最近では「どこまでがハラスメントになるのかが怖くて指導に踏み込めない…」なんて声もよく耳にするようになっています。そこで今回は、企業の新人教育担当者がおさえておきたいポイントを、失敗例などをもとにご紹介したいと思います。

新人教育におけるNG例は?

それではまず、新人教育を行う際のNG事例からご紹介していきましょう。そもそも企業が入社した新人に教育を施すのは、新人の戦力化を行い、企業全体の戦力底上げを狙ってのものだと思います。新人教育を行うことで、早期に利益を生み出せる社員を増やすことは、企業の生産性を向上させることになります。
しかしいくら『教育』だとは言え、とにかく厳しく叱責ばかりする…など、新人教育のやり方を間違ってしまえば新人が心を閉ざしてしまい、せっかく入社した社員の早期退職を招いてしまう危険があるのです。昨今の新入社員の離職状況を表した言葉には「7・5・4・3」現象などと呼ばれるものがあり、これは入社した社員が3年以内に離職する割合を示したものとなっています。実は、中学を卒業して就職した人は3年以内に7割が退職し、高卒で5割が退職、短大卒が4割、大卒が3割となっているなど、せっかく採用した人員の多くが教育の結果を見る前に退職してしまっているのです。
新人の早期退職が続いている企業などでは、新人教育の際、無意識にNG例に該当する教育方法を取っている可能性がありますので、これから新人教育を担当する方は以下に紹介するNG例を参考にしてみましょう。

NG例① 新人が理解できない業界用語を多用する

新人教育を行う場合には、「新入社員は業界にまだ慣れていない」ということを意識して、新人にもきちんと理解できるように説明しなければいけません。例えば、業界では当たり前のように使われる業界用語や社内でしか通じない用語などを使って説明したのでは、新人は教育担当者が何を伝えたいのか分からなくなってしまう場合があります。
「分からないことがあれば聞くように伝えている…」と思うかもしれませんが、新人側からすると上司に当たる教育担当者の話を何度も遮りいちいち質問するのは心苦しい…と考えてしまい、分からないまま話を聞き流してしまう…なんてことは非常に多いのです。技術的な話であれば質問もしやすいのでしょうが、業界用語などの基礎的な話になると「こんなことも知らないのか…」と思われるのは嫌だな…と考えてしまう新人は多いです。分からないことを質問できない…というのは、新人が早期退職してしまう大きな理由になりますので注意しましょう。

NG例② 仕事の目的や背景などを何も伝えない

皆さんが日々行っている仕事には必ずその仕事の目的や背景があります。したがって、簡単な仕事でも何の目的があるのかは初めにきちんと伝えなければいけません。例えば、新人に日報をつけさせるのであれば、「なぜ日報をつけなければいけないのか?」その目的と背景はきちんと説明しておかなければいけません。目的がわからなければ「なぜこの作業をしなければならないのか?」という疑問を持ち、それが不信感につながってしまうかもしれません。
目的や背景がわかれば、その作業に積極的に取り組むようになると期待できますので、教育の成果も上がりやすくなると思います。

NG例③ 組織の意向だけを押し付ける

自社に就職した人間は、当然会社のビジョンと同じ方向を向いていると考えて新人教育する方は多いです。しかし、新人個人のビジョンと組織のビジョンが完全に同じとは限りません。例えば、将来的には独立を考えている新人もいるでしょうし、できるだけ多く稼ぐことを目的にしている新人もいるなど、その人によって価値観は異なるものなのです。
したがって、個人のビジョンを完全に無視して、組織の意向だけを押し付けて仕事を丸投げしていたのでは、新人のモチベーションはどんどん下がってしまうことになるでしょう。もちろん、組織としての許容範囲もあると思いますが、まずは新人が考えている将来的なビジョンも理解したうえで教育を行っていくことが重要です。

新人教育を成功に導くには?

それでは、新人教育を成功に導くためにおさえておきたいポイントをいくつかの段階に分けてご紹介していきましょう。ここでは、最も基本となるポイントを簡単にご紹介しておきますので、新人教育の際には思い出してみてください。

  1. 仕事の理由付けを行う
    NG例でもご紹介しましたが、何らかの作業を行わせる場合には、その目的や背景をきちんと説明してあげましょう。新人に行わせる業務が「どんな仕事?」で「どんな意味があるのか?」ということを理解させ、新人に心の準備をさせてあげる必要があるのです。そうすることで、意味のある仕事に携われると理解できますし、新人自身が自分の存在意味を確認し仕事へのモチベーションも上がることでしょう。
  2. 手順や方法をしっかりと説明する
    教える側からすれば当たり前の作業でも、新人にとってはほとんどが「初めて経験する」仕事になります。したがって、「とりあえずこれをやっといて」などと指示をするだけでなく、手順や方法、注意すべきポイントなどをしっかりと説明しましょう。まずは頭で理解しなければ、いきなり完璧な作業ができるわけもありません。
  3. 教育担当者が実演し見せる
    説明した作業は、頭で手順などが理解できても、説明だけではなかなか行動に移せないこともあります。したがって、まずは説明した作業を実際に実演して見せてあげるようにしましょう。実際の形で見せることで理解度が大きく向上するはずです。
  4. 新人にやらせてみる
    『説明⇒実演』と、新人が一通り作業を理解すれば一度実際に経験させてみましょう。
  5. 結果を評価する
    新人が実際にやってみた結果をきちんと評価する必要があります。当然、作業に慣れている方のようにはいかないかもしれませんが、良い点は褒めてあげる必要があります。褒められるということは誰でも嬉しいものですし、「褒める」という行為には仕事への向上心を高め、良い考えや行動を定着させるという目的もあるのです。諸外国では一般的なのですが、『褒める』ことは立派な指導の一つなのです。つぎに、新人の成長を促すため、注意点があればそこについて具体的に伝えるようにしましょう。
  6. きちんと覚えたか後から確認する
    新人にやらせてみて、一度できたからと言って安心してはいけません。教えた内容について「本当に正しく理解しているのか?」を、しばらく経ってから確認してあげるなど、きちんとフォローしてあげる必要があります。

まとめ

今回は、『新人教育』を成功に導くため、教育担当者がおさえておきたいいくつかポイントをご紹介しました。企業を成長させていくためには、採用した新人の教育が欠かせないものになります。特に近年では、少子高齢化の影響で採用活動に苦労している企業も多いと思いますし、せっかく採用できた人材はきちんと教育を行い、長く自社の戦力として活躍してほしいと考えるものでしょう。
そのためには、教育担当者が行う新人教育が非常に重要になると再認識しましょう。