海洋プラゴミ削減への取り組み!使用済み漁網リサイクルで作られた製品をご紹介します

私たちの日常生活を考えてみると、「プラスチックに全く触れない日などない」と言えるほどプラスチックは身近で日常的なものです。例えば、飲み物の容器であるペットボトルやコンビニのレジ袋、食品を保存するラップなど、日用品の至る所でプラスチックが使用されています。

それでは、こういったプラスチックが使用後にどのように処理されているのかは皆さんご存知でしょうか?例えば、毎日のように触れているペットボトルに関して、「分別してからゴミ出しをする!」というところまでは意識しているものの、その後ペットボトルがどこに運ばれ、どのように処理されているのかなど、ほとんどの方が知らないのではないでしょうか?

実は、私たちの生活に非常に身近なこういったプラスチックが、地球環境汚染を引き起こしたり、海洋生物の生命を奪ってしまったりしていると言われており、世界中で解決すべき問題となっています。そこでこの記事では、海洋プラゴミの現状と、海洋プラゴミ削減のためにどのような対策が行われているのかについて解説していきたいと思います。

プラスチックによる海洋汚染の現状について

プラスチックごみを削減しなければならない…ということは、大手メディアなどでも取り上げられていることから皆さんもご存知だと思います。実際に、スーパーやコンビニなどでは、レジ袋の有料化がスタートし、今後は使い捨てスプーンなどのプラチック製品に関しても有料化が検討されています。

今まで買い物をすれば、何も言わなくてもレジ袋に詰めて渡してもらえていたものが、有料化された…ということで、不便に感じてしまう方も多いのですが、これも海洋プラゴミを削減するための一つの対策です。日常生活の中では、ほとんど気にすることもないのですが、実はこういった小さなプラチックゴミの蓄積により海洋汚染が深刻化しています。

近い将来の海は、魚の量よりゴミが多くなる!?

世界中で海洋ゴミが問題視されている近年では、日本近海にも多くのゴミが漂っており、何気なく浜辺に足を運んでみると、大量のゴミが打ち上げられていて嫌な気分になってしまう方もいらっしゃるでしょう。実は、こうした光景は、昨今、世界中の海岸で見受けられるようになっています。

一個人が一日に使用するプラスチックなど微々たるものと思うかもしれませんが、不用意に捨てたプラゴミが、いずれ海へと流れ出て、海底に沈んだり、海洋中に漂流したり、海岸に漂着したりしているのが現状です。そして、『年間800万トン』のゴミが世界中の海を漂っていると言われており、そのうち7~8割がプラスチックごみだと言われています。
そして海を漂うプラスチックは、重量換算すると2050年までに魚の量を上回ってしまうと予想されているほど海洋汚染が深刻化しています。

参考:環境省「海洋プラスチック問題についてP.4

海洋プラゴミの中でも漁網が海の生き物の害に

上述した通り、私たちの生活に欠かせないプラスチックですが、不用意にポイ捨てされるプラゴミが海にたどり着き、深刻な海洋汚染の原因となっています。そして、そのような海洋ゴミの大半を占めるプラスチックごみの中でも、『漁網』が海の生物の生命を危険にさらしています。
海に流出するプラゴミに関しては、小さなプラスチック片を海の生き物が誤って食べて死に至ってしまう恐れがありますが、漁網の場合は、さらに海の生き物に絡みつき、身動きが取れなくなったり、呼吸ができなくなったりして死んでしまう恐れがあります。実際に、ウミガメやアザラシなどに漁網が巻き付いていたという画像は皆さんも目にしたことがあるのではないでしょうか。

平成29年に、環境省が全国の海岸で漂着したプラスチックゴミを調べたところ、「漁網・ロープ」がなんと全体の41.8%(重量ベース)を占めており、「その他の漁具」も合わせると45%近くを占めています。こういった漁網は、長期間、海を漂い海の生物の生命を危険にさらすことから「漁具の幽霊」を意味する「ゴーストギア」などと呼ばれるようになっており、日本に漂着する海洋ごみ(人工物)の大部分を占めるようになっています。

こういった状況から、近年さまざまな企業が海を漂う漁網を回収し、それをリサイクル商品として販売するという取り組みを開始しています。海洋ゴミのリサイクルを行っている企業の中には、皆さんも耳にしたことがあるような有名ブランドもありますので、以下で海洋プラゴミ削減を目指してスタートした取り組みをご紹介します。

参考:環境省「海洋ごみをめぐる最近の動向

廃棄漁網のリサイクルについて

環境汚染を引き起こす海洋プラゴミの削減については、国をあげてさまざまな対策が行われるようになっています。分かりやすい例を挙げれば、上述した「レジ袋の有料化」が有名ですが、これ以外にも自然環境の中で、分解されやすいプラスチックの開発などが進められています。

そして近年では、民間企業が協力して、廃棄漁網のリサイクル商品を開発・販売するようになっています。ここでは、いくつかの企業の取り組みをご紹介しておきます。

廃棄漁網から生まれた鞄

この取り組みは海のプラスチックごみ問題の解決を目指して、製造から販売、リサイクルまで、プラスチックに関わる企業およそ30社が参画している一般社団法人「アライアンス・フォー・ザ・ブルー」と日本財団が始めたプロジェクトとなります。
使用済みの漁網は、これまで一部しかリサイクルされてこなかったそうですが、さまざまな技術を持つ企業が連携することで、『かばん』に再生するという取り組みが始まっています。このプロジェクトで製造される商品については、2021年10月1日から豊岡鞄オフィシャルショップにて販売を開始されるそうです。

参考:廃棄漁網から生まれた鞄をお披露目 「豊岡鞄」から10月1日(金)販売へ

アウトドア用品販売のパタゴニア

登山用品などのアウトドア用品や軍用品、衣料品の製造販売を手掛けるアメリカの有名ブランドです。日本国内でも非常に高い人気を誇るブランドですが、『ネットプラス・リサイクル・ナイロン』という独自の取り組みを行っています。この取り組みは、南米の漁業コミュニティから回収された使用済みの漁網を100%リサイクルして商品を製造するというものだそうです。

現在までで、廃棄された漁網400トン以上を回収し、パタゴニアの帽子のつばやパンツなど、さまざまな製品にリサイクルされています。

参考:パタゴニア公式サイト

まとめ

今回は、世界中で問題となっている、海洋プラゴミの現状や、大切な海を守るための取り組みとして始まっている「漁網のリサイクル」について簡単にご紹介してきました。プラスチックは、私たちの日常生活を考えてみると、非常に身近な素材となっており、丸一日プラスチックに触れずに生活するというのは、ほぼ不可能なのではないかと思えるほどさまざまな場所で利用されています。

ほとんどの方は、こういったプラスチックごみをきちんと分別し、適切に捨てていますが、それでも毎年大量のプラゴミが海を漂っているのが現状です。こういった海洋汚染を少しでも減らすため、政府による取り組みも行われるようになっていますが、何より重要になるのが、一人一人が「適切にプラスチックを取り扱う」ということではないでしょうか?
レジ袋の有料化など、プラゴミの排出削減を目指す対策なども打ち出されていますが、プラスチック製品を完全になくすというのは現実的な対策とは言えないでしょう。したがって、使用したプラスチックを「どのように処理すれば良いのか?」「リサイクルできるものはきちんとリサイクルする」という意識を全ての人が持つことが、海洋プラゴミ削減への最も近道かもしれません。