『わけアリ』商品の格安販売が大注目?そもそも賞味期限切れ商品の販売は違法ではないのか?

日本では昔から「もったいない」という精神を持って、物を大事にする文化が根付いています。しかし、近年では、「まだ食べられるのに何らかの理由で捨てられてしまう」という食品ロスが非常に大きな社会問題となっています。コンビニなどの登場もあり、手軽に食品が手に入る便利な時代になった一方で、その便利さが、逆に食への感謝の気持ちを薄れさせていることが食品ロスの原因とも言われています。

食品ロス問題に関しては、世界中で取り組むべきものだと考えられており、諸外国でもさまざまな対策が行われるようになっています。例えば、アメリカでは、レストランなどで出る食べ残しは持ち帰ることが推奨されており、持ち帰り用の『ドギーバッグ』と呼ばれる容器をお店側が用意しておくということが一般的となっています。日本でも、最近話題になっているのが、賞味期限切れの食品を破格の安値で販売する店が登場していることです。こういった対策に関してはテレビなどの大手メディアでも取り上げられることが増えていますので、皆さんも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?

しかし、ここで疑問に思うのは「そもそも賞味期限切れの食品って売っても良いものなの?」という法律的な問題です。例えば、冷蔵庫の中にある食品が、数日賞味期限が切れていた場合、もったいないとは思いながら食べずに捨ててしまう…という人が多いのではないでしょうか?自分の家の冷蔵庫にあるものでも「お腹が痛くなったら嫌だし…」などと考えて捨ててしまうものを、安いとは言え販売していると聞くと、「それは法律的にアウトなのでは?」と考えるのが普通だと思います。
そこで今回は、最近増加している『わけアリ』商品の格安販売について、簡単にご紹介します。

賞味期限切れ食品の販売ってOKなの?

それではまず、「賞味期限切れ食品の格安販売」と聞いて多くの方が疑問に思うであろう「それって法律的に問題があるんじゃないの?」という点からご紹介していきましょう。

答えから言ってしまいますが、賞味期限切れ食品に関しては、『販売そのものが法律に抵触することはない』です。食品の販売に関しては、食品衛生法などの法律が関係するのですが、こういった法律の内容に抵触するのは、「人の健康を害する食品を販売する行為」や、「食中毒などの食品事故を起こした」などと言った行為なのです。

賞味期限切れ食品の販売が「法律に抵触するのでは?」と考える人の多くは、賞味期限が表している意味を少し勘違いしている可能性が高く、そもそも「賞味期限が切れる=健康に害を及ぼす食品」というイメージ自体が間違っているのです。以下で簡単にですが「賞味期限の意味は?」という点もご紹介しておきましょう。

「賞味期限」と「消費期限」の意味を頭に入れておきましょう

スーパーやコンビニなどで食品を購入する場合、多くの人が商品の包装などに記載されている『賞味期限』を確認していることでしょう。しかし、実は非常に似た名前の『消費期限』というものがあるということはご存知でしょうか?多くの人は、この『賞味期限』と『消費期限』の意味を混同して捉えているのだと思います。そのため、「賞味期限切れ=健康に害を及ぼす」というイメージにつながり、捨ててしまうという行為になるのです。まずは、賞味期限と消費期限に関する正確な知識を持つようにしましょう。

『賞味期限』に関しては、その食品が「いつまで食べられるか?」というものをあらわしているのではなく、記載されている年月日まで「品質が変わらずにおいしく食べられる期限」を示しているものです。これに対して『消費期限』は、記載されている年月日まで、「安全に食べられる期限」ということを示しています。つまり、「賞味期限切れ食品」というのは、食べられないという訳ではありません。

ちなみに、『消費期限』を記載される食品は、弁当やサンドウィッチ、おにぎり、総菜、生クリームケーキなどで、日持ちしづらい食品に用いられます。これらの食品は、日にちが経過すると急激に品質が低下してしまうため、消費期限が表示されているのです。逆に、加工食品などは、記載された賞味期限を過ぎたとしても、品質が急激に下がるのではなく、緩やかに下がっていくものですので、賞味期限の表示がなされるのです。
賞味期限と消費期限の定義については、別記事の『『賞味期限』と『消費期限』は違う!まだ食べられるのに捨てられる食品を減らそう!』でもご紹介していますので、そちらもご参照ください。

参考:農林水産省「子供の食育」ページ

賞味期限切れ食品の販売を行うお店とは?

2016年には、デンマークのコペンハーゲンに「賞味期限切れ食品専門スーパー Wefood(ウィーフード)」がオープンし、世界中で話題になりました。このお店は、他のスーパーや小売で販売できない物を無償で引き取り、安価で販売するという方法を取っています。本来捨てられていた食品を格安で販売するということで、貧困問題、食品ロスの両面に貢献できると考えられており、今では他の国にも同様のお店がひろがっているのです。

日本国内でも、NPO法人「全国もったいない市場」が食品衛生上問題のない廃棄食品の再販売や生活に困っている方達に無償で譲るなど、食品を無駄にしないための活動の一環として『ecoeat(エコイート)』というお店の展開をしています。現在は、大阪府や兵庫県など関西地方が中心なのですが、本年度中にも東京町田店のオープンを予定しているそうです。エコイートの店舗詳細や、仕組みに関しては、公式サイトでご確認ください。

参考:NPO法人「全国もったいない市場」が運営するエコイートについて

まとめ

今回は、世界中で食品ロスが問題となっているなか、少しでも食品ロスの減少に貢献できると考えられている『賞味期限切れ食品の格安販売』についてご紹介しました。日本国内でも社会問題となっている食品ロス解決には非常に役立つ手法だと言われています。

本稿でご紹介したように、賞味期限というものは「食品が安全に食べられる期限」を示しているものではなく、「品質が変わらずにおいしく食べられる期限」のことです。つまり、保存方法を守ってさえいれば、多少賞味期限が切れたとしても、即座に健康に害が出るほど劣化するわけでもなく、十分に安全に食べることができるものなのです。今回ご紹介した活動は、今までは「まだ食べられるのに捨てられていた食品」について、それを必要とする人にきちんと届けるための活動でもあります。冒頭でもご紹介したように、日本人であれば「もったいない」という精神を誰もが持っていると思いますので、賞味期限や消費期限の正しい知識を持って、食品を無駄にするような行為を無くすように努力しましょう。