働き方改革が導入されて早3年。結局のところ『働き方改革』で何が変わった?

2018年に「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が成立し、その後も関連法案が整備されているなど、昨今『働き方改革』という言葉を耳にする機会が増えています。働き方改革は、政府が掲げた「一億総活躍社会」の実現に向けた施策のひとつという位置づけにあるのですが、さまざまな法整備が始まってから早3年の月日が経過しました。

そこでこの記事では、ここ最近、日常生活の中でも頻繁に耳にするようになってきた働き方改革について、実際のところどのような変革が推し進められているのかという点について考えてみたいと思います。また、この記事内では、東京都産業労働局が行った「働き方改革に関する実態調査」についても簡単に触れておきます。

働き方改革の要点

それではまず、働き方改革のポイントからご紹介していきます。少子高齢化が進む日本では、労働人口の減少が深刻な社会問題となっています。さらに問題はこれだけでなく、古くから習慣化している日本の働き方により、労働生産性の低下や長時間労働の常態化による過労死問題など、さまざまな問題が指摘されるようになっています。

働き方改革は、こういった問題を見直すためにスタートしたもので、私たちの働き方の改善方針として「労働時間の是正」「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」「多様で柔軟な働き方」が重要な柱とされています。ここでは、この3つのポイントについて、どのような取り組みがなされているのかをご紹介します。

労働時間の是正について

労働時間の是正に関しては、『「働き過ぎ」を防ぎながら、「ワーク・ライフ・バランス」と「多様で柔軟な働き方」を実現します』と言うことを見直しの目的としています。

労働基準法が制定された1947年から近年に至るまで、長時間の残業(月45時間・年360時間以上)に対しては、行政指導が入るものの、罰則などは用意されていないというのが実情です。つまり、事実上、残業時間の上限はないと考えられていて、これが長時間労働を生み出す原因の一つとなっていたと考えられています。
そこで今回の働き方改革では、70年前(1947年)に制定された「労働基準法」において、初めての大改革を行いました。2019年の労働基準法改正により、以下のような上限規制が設けられています。

引用:厚生労働省資料より

この法改正により、残業時間は、原則として「月45時間・年360時間まで」という罰則付きの上限が設けらています。なお、この時間外労働の上限規制は、大企業が2019年4月より、中小企業が2020年4月から適用されています。ちなみに、この残業時間の上限については、臨時的な特別の事情がある場合に限り、残業時間延長が認められています。
働き方改革による残業時間の上限規制については、以前別の記事で詳しくご紹介していますので、以下の記事もご参照ください。

関連記事:残業時間上限規制とは?2020年4月に向けて中小企業がおさえておきたいポイント

労働時間の是正については、残業時間の上限規制以外に以下のような対策に取り組むとされています。

  1. 「勤務間インターバル」制度の導入を促します
  2. 1人1年あたり5日間の年次有給休暇の取得を、企業に義務づけます
  3. 月60時間を超える残業は、割増賃金率を引上げます(25%→50%)
    ▶ 中小企業で働く人にも適用(大企業は平成22年度~)
  4. 労働時間の状況を客観的に把握するよう、企業に義務づけます
    ▶ 働く人の健康管理を徹底
    ▶ 管理職、裁量労働制適用者も対象
  5. 「フレックスタイム制」により働きやすくするため、制度を拡充します
    ▶ 労働時間の調整が可能な期間(清算期間)を延長(1か月→3か月)
    ▶ 子育て・介護しながらでも、より働きやすく
  6. 「高度プロフェッショナル制度」を新設し、選択できるようにします
    ▶ 前提として、働く人の健康を守る措置を義務化(罰則つき)
    ▶ 対象を限定(一定の年収以上で特定の高度専門職のみが対象)

参照:厚生労働省『働き方改革P.3-4』

雇用形態に関わらない公正な待遇の確保について

この部分は、簡単に言うと「正規・非正規間の格差解消」という問題です。最近テレビなどのメディアでも良く取り上げられている問題です。

厚生労働省が公表した「非正規雇用の現状と課題」によると、パートやアルバイト、契約社員などの非正規雇用労働者の人数や割合は、2019年まで増加の一途をたどっています。働き方改革が実行される前までで考えると、2019年の非正規雇用労働者は約2165万人となっており、労働者全体に占める割合がなんと38.3%に及んでいます。

ここで問題となっているのが、労働者全体の約4割を占めるほどの数になっているにもかかわらず、現状、非正規雇用労働者の立場が非常に弱いということです。これは、さまざまな面で正規雇用労働者との間に格差が生じていることが原因で、最もわかりやすい賃金で比較した場合、2019年の調査によると、正規雇用労働者の平均給与が503万円なのに対し、非正規雇用労働者の平均給与は175万円にとどまっています。もちろん、この調査に関しては、短時間労働のアルバイトや時短勤務のパートなども含まれていますし、フルタイムの非正規雇用労働者のみで考えると、ここまでの格差が生じることはないと思います。しかし、無視できるような格差ではないことから、『正規雇用労働者と非正規雇用労働者との不合理な待遇の差をなくす。』と言うことを目的に、以下のような対策が行われています。

  1. 不合理な待遇差をなくすための規定の整備
    同一企業内において、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で、基本給や賞与などの個々の待遇ごとに、不合理な待遇差を設けることが禁止されます。ガイドラインを策定し、どのような待遇差が不合理に当たるかを明確に示します。
  2. 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
    非正規雇用労働者は、「正社員との待遇差の内容や理由」など、自身の待遇について説明を求めることができるようになります。事業主は、非正規雇用労働者から求めがあった場合は、説明をしなければなりません。
  3. 行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争解決手続(行政ADR)の規定の整備
    都道府県労働局において、無料・非公開の紛争解決手続きを行います。「均衡待遇」や「待遇差の内容・理由」に関する説明についても、行政ADRの対象となります。

大手メディアなどでも『同一労働同一賃金』という言葉を耳にする機会が多くなっていますが、これは労働内容が同じであれば、雇用形態に関わらずそれに見合う待遇を確保するための取り組みで、働き方改革の中でも需要とされている対策になります。
なお、上述したような対策が功を奏したのか、2020年には右肩上がりで増加していた非正規雇用労働者の人数と割合が減少に転じています。

参照資料:「非正規雇用」の現状と課題
参照資料:国税庁「令和元年分 民間給与実態統計調査
参照資料:厚生労働省『働き方改革P.5-6』

多様で柔軟な働き方について

最後は多様で柔軟な働き方を実現するというポイントです。労働人口の減少や労働生産性の低下を食い止めるべく、労働者が柔軟に多様な働き方を実現し、快適な労働環境をつくるための制度が考案されています。
新型コロナウイルス問題で急速に進んだテレワークや在宅勤務については、新型コロナ問題を機に考案されたのではなく、働き方改革によって推進されていたものです。他にも、短時間勤務制度、フレックスタイム制度があります。

こういった取り組みによって、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方が実現しますので、育児や介護などで出社が困難な方や、地方在住の方が大幅に働きやすくなったと言われています。フレックスタイムの導入などに関しては、厚生労働省が『フレックスタイム制導入の手引き』などを作っていますので、一度確認してみてはいかがでしょうか。

参照:厚生労働省『働き方改革 別紙P.6-7』

働き方改革の効果は?

それでは最後に、働き方改革により、上述のような取り組みが始まってから3年を経過した現在、私たちの働き方が本当に変わってきているのかについて、労働者の声についても簡単にご紹介します。

ここでは、東京都産業労働局が2021年5月に公開した「働き方改革に関する実態調査」の中に掲載されている”働き方改革についての意見等”をピックアップします。調査結果の全体を確認したい方は、以下の調査報告書を読んでみてください。

参考:東京都産業労働局「働き方改革に関する実態調査

ポジティブな意見
  • 施策が施行されたことで、働き方の見直しや検討を職場が行いはじめたので、とても有難い。
  • 今の働き方改革や施策は主に内勤であれば順応するであろうし、働きやすくなる面があると思う。
  • 部署にもよりますが、弊社では 4、5 年前に比べて労働時間が大きく減少しているように感じています。
  • 残業ありきの仕事や、長い時間会社にいる人間が偉いと勘違いしている上司や従業員がまだまだ多くいる。日本のやり方はもう古いし、先進国として遅れていて恥ずかしい。どんどん変えてほしい。
ネガティブな意見
  • 休みが増えるのはありがたい反面給料がかせげなくなっている。ほぼ残業、休日出勤 0 では家族を養っていくのが多少困難である。
  • 収入が多くないので、残業代を入れて生活できていたが、残業が減って生活は前よりも悪くなった。働き方改革はけして良いとは思わない。
  • 働き方改革として国で動いてくれていても、実際のところはうまくごまかされ労働時間や有休取得などあまり変化はありません。残業代もつきません。タイムカードの導入もまだされていなく、残業 0 と毎月人事に提出してますが実際は何十時間も残業してます。もっと義務化、徹底できるような仕組みを作って下さい。
  • 同一賃金、同一労働の基準や現在障害者雇用で労働しているが、あまり基準が明確でないため、もう少し明確化してほしい。
  • 働き方改革をする事で、収入が下がったり、生活が苦しくなる様では困るので、私は働きたいと思いますし、「楽」をする事が幸せではないと思っています。
  • 業務量を減らさずに労働時間だけを減らすのは困難である。また残業時間=残業代でもあるので不足することにより生活困窮者が出ないような施策を打ち出して欲しい。

働き方改革に関しては、現状ネガティブな意見の方が目立つような気がします。例えば、会社のシステム自体は何も変わっていないのに、「残業時間を削減しろ」という命令だけあれば、何とか業務を終わらせるため、従業員が休憩時間を使って仕事をするようになり、余計に負担が増えているといった問題も生じています。他にも、残業代が少なくなることで、収入減に繋がるという問題点を従業員側があげています。

まとめ

今回は、ここ数年、誰もがよく耳にするようになっている『働き方改革』について、具体的にどのような変更が進んでいるのかについてご紹介してきました。「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が2018年に成立してから早3年の月日が経過しています。政府が掲げた「一億総活躍社会」の実現に向けた施策のひとつという位置づけなのですが、皆さんの労働環境は「働きやすくなったな!」と体感できるほど変わってきているでしょうか?

テレワークに関しては、2020年4月頃より一気に導入する企業が増えていますが、これは働き方改革が要因なのではなく、感染症対策のために行わざるを得なかった…というのが正直なところでしょう。この記事でご紹介したように、実際の労働者の目から見た「働き方改革」はまだまだ問題点の方が多いように感じとられているなど、なかなか難しい面も多いようです。
それでも、男性育休の取得推進や高齢者の就労機会確保など、労働者にとってありがたい制度の制定なども進んでいますので、より働きやすい社会の実現に期待しましょう。

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