新型コロナウイルスが食品業界へ与えた影響は?コロナ問題で売上が減った分野と増えた分野を考えてみよう

今回は、新型コロナウイルスによって食品業界にどのような影響が出ているのか?ということを考えてみたいと思います。現在でも世界中で猛威をふるっている新型コロナウイルスですが、日本国内でも感染拡大があり全国的に緊急事態宣言が発令される事態となってしまいました。国内の緊急事態宣言については5月末に解除されたものの、今回のコロナ問題が収束したとは決して言えないような状況が続いており、不便な生活を強いられている…と感じている方は非常に多いことでしょう。

さらに、この新型コロナウイルス問題の恐ろしいところは、日常生活に多大な制約が課されてしまう…というだけでなく、外出自粛による経済への打撃が深刻になっていると言う点です。テレビのニュースなどを見てみると、外食の自粛で飲食店などが今までにないほどの危機に陥っている…という情報が報道されていますが、実は危機に陥っているのは飲食店だけではないのです。『巣ごもり消費』などもあり、冷凍食品業界などは逆に好景気になるのでは?などと考えている方も多いかもしれませんが、今回の問題はそこまで単純な話ではないようです。
そこでこの記事では、新型コロナウイルスが食品業界に与えた影響を筆者の視点でご紹介したいと思います。

新型コロナウイルスが食品業界に与えた影響は?

それでは、新型コロナウイルによって食品業界がどのような影響を受けたのかについてご紹介していきましょう。新型コロナウイルスの感染拡大により、非常に幅広い業界に悪影響が出ていると言われていますが、ここではタイトルにあるように食品を取り扱う業界に絞ってご紹介していきます。

食品製造業界

食品製造業と言っても、取扱商品はさまざまなのですが、この業界は今回の新型コロナウイルス問題で非常に多大な影響を受けていると言っても過言ではありません。
一般消費者からすれば、緊急事態宣言が発令され自宅待機が求められたこともあり、冷凍食品やカップラーメンなどの保存可能食品を大量にまとめ買いしたという方も多く、新型コロナウイルスの感染拡大があっても逆に売り上げが伸びた分野ではないか?と考えている方が多いことでしょう。実際に、巣ごもり消費増加により、米飯類や麺類、冷凍食品、レトルト食品、パスタ類などは好調な売れ行きを保っているという報道も出ており、一般家庭向けの加工食品に関してはかなり好調で各企業も増産体制を敷いていると言われています。そのため、缶詰や備蓄食品などの製造を手掛ける企業では、3月後半から株価が急上昇した企業も存在するのです。

しかし、忘れてはいけないのは、こういった加工食品を必要とする場所は一般家庭だけではないということです。例えば、ホテルや飲食店、学校給食などに関して言えば、急激にその需要が落ち込んでしまい業務用食品に関しては売り上げが大幅に下落していると発表されています。そして、業務用市場は家庭用よりも規模が大きいため、いくら巣ごもり特需で家庭用食品の売れ行きが好調でも「家庭用の需要だけではカバーしきれない…」というメーカーも多く、食品製造業界全体で見ればマイナス影響の方が大きくなるのではと懸念されています。

スーパーやコンビニなど小売業界

今回の新型コロナウイルス問題によって好調に推移していると考えられている業界はコンビニやスーパーなどの食品販売業です。
実際に内閣府が5月に発表した4月の景気ウォッチャー調査の中では、新型コロナウイルスの感染拡大がある中でも景気が「良くなっている」と答えるスーパーがあったほどなのです。スーパーのコメントを一部抜粋すると他の業界では考えられないような状況になっている店もあるようです。

・新型コロナウイルス対策による巣ごもり需要により、食品の買上点数、客単価は大幅に伸びており、売上も前年比 130%以上となっている
・いわゆる新型コロナウイルス特需であるため、喜べないのが実情である
・新型コロナウイルスの特需で売上が前年比 110%と増加しているが、来客数は変わらない
・客数は前年より少し減っているが、新型コロナウイルス禍の影響により1人当たりの買上点数が増えているため、売上は前年を大きく上回っている
引用:内閣府「景気ウォッチャー調査(4月)」

上記のように、新型コロナウイルス感染拡大の中、多くの業界が苦戦している状況でも逆に売り上げが伸びているというスーパーは多いようです。これは、外出自粛が求められている、学校が一斉休校となったため子供の昼食用の食材が必要になるなどと言った事が大きな要因で、客数はそこまで増えていないものの客単価が上昇しているため好調を維持しているようです。
スーパー同様に、コンビニエンスストアでも客単価の上昇は見られており、好調に推移している店舗もあるようです。しかしコンビニ業界全体で考えた場合、テレワークを導入する企業が増加したため、オフィス街などにあるコンビニの売り上げが急激に落ち込んでしまい、全体でみると売り上げ減となっているようです。

コンビニエンスストア各社が発表した4月の営業実績によると、既存店売上高の前年同月比はセブン-イレブン5.0%減、ファミリーマート14.8%減、ローソン11.5%減、ミニストップ6.8%減となり、大手4社は前年割れとなった。
引用:流通ニュースより

飲食店業界

新型コロナウイルスの影響を最も受けた業界の1つが飲食店業界です。外出自粛が求められる中、壊滅的な業績悪化に苦しむ飲食店が増えていると言われています。
「3密の防止」や「人との接触8割削減」などが有効な感染予防対策と言われている昨今では、オンライン飲み会などと呼ばれるインターネットを介したコミュニケーションがもてはやされるようになっており、自治体から求められていた営業自粛期間が終了したとしても今まで通りにお店を再開できるのか…と不安になっている店舗が多いと言われています。
このような状況の中、テイクアウトに活路を見出そうとする飲食店が急増しており、来店以外の販売チャネルを増やして何とか売り上げ確保を目指しているようです。政府や地方自治体でもさまざまな支援策が検討されていますが、長期化が予想されているコロナ問題の中、飲食店業界の見通しはなかなか立たないのが実情でしょう。

まとめ

今回は、新型コロナウイルス問題が食品関連業界にどのような影響をあたえたのかについてご紹介しました。日本国内では緊急事態宣言が解除されたこともあり、新型コロナウイルス問題も収束に向かうのかな…と考えている方も多いかもしれませんね。しかし実際には、世界的規模で見てみればいまだに感染拡大のスピードは落ちておらず、6月26日のニュースではアメリカで1日に4万人近くの感染者が確認されたとの情報もあるほどなのです。

感染症を引き起こすウイルスはコロナウイルス以外にもたくさん存在しますが、どれも人間の目では確認できないほど小さなものです。したがって、常に近くにコロナウイルスがいると思って、誰もが感染症予防の意識を高く持つことが重要です。今後この問題がどうなっていくのかは、まだ見通しが立っていないのが実情ですが、全ての人が協力し、収束に向かって進むことを願っています。