少子高齢化が進む日本では、さまざまな業界で労働者の高齢化や人材不足が問題となっています。どの業界でも、新たな若手人材の採用は、事業継続のために必要不可欠な要素となりますので、採用活動に力を入れていることだと思います。当然、人材不足の波は物流業界も同様のことであり、多くの物流企業ではどのようにして新しい労働力を確保するのか…ということに常に頭を悩ませていることでしょう。
最近では、倉庫にロボットなどの最新テクノロジーを導入し、今まで人間の手で行っていた作業をできるだけ自動化することにより、施設の省力化・省人化などを目指すことも注目されていますが、倉庫の自動化を実現するためには初期コストがかかってしまうこともあり、気軽に行えるような対策ではありません。そこで近年では、物流業界でも積極的に女性社員の採用を行い、より女性が活躍できる会社を目指すという企業も増加していると言われています。
そもそも物流業界というものは、建設業界に次いで2番目に女性の就業率が低い業界と言われており、なんと物流企業の女性比率はたったの20%程度しかないと言われているのです。つまり、現在新たな人材の確保に頭を悩ませている企業であれば、積極的に女性を採用することで、自社の人材不足問題の解消に大きく近づける可能性があるということです。
もちろん、そのためには今まで男性社会であった物流業界で、女性でも働きやすい環境を作らなければならないでしょう。そこで今回は、より女性社員が働きやすい物流企業を目指すため、どのような対策を行えば良いか考えていきたいと思います。
女性が物流業界で活躍するメリットとは?
冒頭でご紹介したように、昨今さまざまな業界で人材不足が深刻化していると言われています。そのため、全ての業界で女性活躍が必要と言われるようになっており、日本政府も女性が、職業生活においてその希望に応じて十分に能力を発揮し、活躍できる環境を整備するため、「女性活躍推進法」なるものを制定したのです。
深刻な人材不足に悩まされている物流業界のことを考えてみると、他の業界と比較しても「女性の雇用」が非常に少ない業界として有名で、もし物流業界における女性比率が他業界並みの水準になったと考えれば、物流業界の人材不足問題が一気に解決してしまう可能性すらあると言われています。
もちろん、物流業界で多くの女性が活躍するようになった場合、労働力不足の解消だけでなく、さまざまなメリットが得られると考えられます。
- きめ細かいサービスは女性の方が得意と言われている
- 女性目線の新たなサービスの創出が期待できる
- 女性活躍に貢献しているなどとアピールでき、企業イメージのアップにつながる
そもそも、労働力不足だけの解消を考えた場合、シニア世代の再雇用や外国人の雇用、ロボットの活用など、他にもさまざまな手段が考えられます。
しかし、物流業界で積極的に女性活躍を推進することは、今まで難しかった女性目線でのきめ細やかなサービスや、新たなサービスの創出なども期待できるため、男性社会と言われていた物流業界の新たな面を作り出すことも可能になるのです。「女性の活躍を推進!」と聞くと、女性がバリバリ働いて、男性と渡り合っていくというイメージを持つ人が多いかもしれませんが、そうではなく、女性ならではの視点で会社の新たな価値を創出することも期待できるのです。
つまり、物流企業での女性活躍推進は、労働力不足だけでなく、企業価値の向上まで目指すことができるのではないでしょうか。
物流業界で女性活躍を推進するには?
それでは、物流業界で女性の雇用を増やすためにはどのような対策を行えば良いのでしょうか?冒頭でご紹介したように、物流業界での男女比率は『男:女=約8割:約2割』と言われているように、極端に女性の就業率が低くなっています。これは、物流業界は、荷役作業などの重労働が必要になることや、長時間労働が当たり前というイメージが強くあるためだと考えられます。
したがって、物流業界で働きたいと考える女性を増やすためには、女性が魅力を感じるような労働条件を考えなければいけないでしょう。以下で、女性活躍を推進するための具体的な対策を考えてみましょう。
荷役作業の軽減
物流業界で働く女性が少ない大きな理由として『荷役(貨物の積み下ろし)』があります。例えば、現場での作業が手荷役になると、女性だけでなく若者やシニア世代にも倦厭されてしまうことが多いです。
したがって、より女性の活躍を推進するためには、荷役作業の軽減は必要不可欠となるでしょう。例えば、自動倉庫や無人搬送車(AGV)の導入により人間が荷役を行わないようにしたり、人間が行うにしてもパワーアシストスーツなどの導入により荷役の負担を軽減させるなどの対策が有効です。
勤務体系の見直し
お子様の送り迎えや行事への参加のある主婦層の雇用を考えた場合、フレキシブルな勤務体系を構築することが非常に有効な対策となります。実際に、物流企業が主婦向けに出す求人広告に関して、「短時間勤務OK」と表記するだけで応募数が倍近くになった事例も耳にします。
最近では、ネット通販などの普及もあり、24時間体制で稼働している物流倉庫なども増えていることから、さまざまな人に合わせた働き方を認めることができるよう、多様な勤務体系に見直すのも一つの手です。
施設環境の見直し
倉庫などの物流施設は、コストを抑えるために最低限の機能を備えた無機質な建物であることが多いです。しかし、古い建物であったり、汚いイメージがあると働き手が集まりにくくなるのです。職場というものは通勤後、長時間を過ごす場所となりますので、居心地の良い職場環境を作ることは非常に重要です。
例えば、清潔な女性専用のトイレがあることはもちろん、休憩室の設置、制服に着替える必要がある会社であれば、女性専用の更衣室も必要になってくるでしょう。また、倉庫などは広大な敷地を確保するため、周囲にコンビニやレストランが全くないような場所に建てられることも多いです。そのため、施設内にカフェや託児所の併設することや、お弁当のデリバリーサービスを福利厚生として用意するというのも有効な対策になるでしょう。
まとめ
今回は、人材不足が深刻化している物流業界において、女性活躍を推進するためにはどうすれば良いのかについてご紹介してきました。
冒頭でもご紹介しましたが、昔から男性社会というイメージが根付いている物流業界は、そのイメージ通り女性の就業率が非常に低い業界となっています。物流業界で働く女性が少ない理由は、荷役作業のしんどさであったり、長時間労働が当たり前の業界という認識があるからでしょう。しかし、少子高齢化により若手人材の確保が難しくなっている近年では、物流業界でも女性の就業率を上げていく必要があるでしょう。
男女比率が「8:2」と言われているような業界ですので、他業界と同じような女性比率になるだけでも、物流業界の人材不足は大きく改善できる可能性があります。さらに、今まで女性が少なかった業界ですので、女性が活躍するようになれば、男性では思いつかなかったような新たなサービスの創出まで期待できるなど、非常に多くのメリットが存在すると考えられます。
現在、人材不足に悩み、女性雇用の推進を検討している物流企業があれば、本稿でご紹介した内容を参考にしてみてください。