降り積もる雪は意外と侮れない!積雪が建物に与える悪影響は?

1月中旬から2月にかけては、冷え込みもきつくなり、大量の雪が降る地域も多くおくあります。今年の冬に関しては、暖冬傾向にあるため、例年の冬と比較するとかなり降雪量が少ないと言われていますが、これから本格化する冬に向けてまだまだ油断することはできません。本来、暦の上では1月20日頃が『大寒』とされ、一年の中で最も寒い時期となるため、冷え込みがきつくなれば降雪量も増えてくると予想されます。

大量の雪が降り積もった場合には、交通機関にも影響が出てしまうため、出勤が困難になってしまうかも…ということを問題視する人も多いのではないでしょうか?しかし、大量に降り積もる雪によって困難を強いられるのは、何も交通機関だけでなく建物も同様ということを忘れてはいけません。豪雪地帯などであれば、降り積もった雪の重みなどで、屋根が崩壊してしまう…なんてこともあるのです。そこで今回は、冬場特有の問題である、降雪が建物に与える影響について考えてみたいと思います。

積雪が建物に与える影響とは?

それではまず、大量の積雪が建物に与える影響について考えてみましょう。積雪によって発生する建物の被害は、主に以下の3つがあると言われています。

  • 雪の重みで屋根が崩落する
  • 開口部が封鎖されてしまう
  • すが濡れが起こる

大量の積雪がある地域では、上記のような被害が出てしまう場合があります。雪と聞けば、「非常に軽いもので、いくら積もっても建物に影響を与えるような重みにはならないのでは…?」と考えてしまう人も多いのですが、豪雪地帯など、雪が降り積もることにより固くなった『しまり雪』と呼ばれる状態になると、1㎡あたりの重さで約250~500kgの重量になると言われているのです。つまり、雪が降り続けば、その分、建物への負担も大きくなっていくということです。
以下で、建物に出る被害をもう少し詳しくご紹介しておきましょう。

積雪による屋根の崩落とは?

これは、倉庫や工場などの大型施設だけでなく、一般住宅でもよく起こる雪による被害です。実際に、関東地方にある体育館で、積雪によって屋根が崩落した…という被害が過去に発生しています。
体育館ほどの大きな建物となれば、工場や倉庫などと同様に、鉄骨造で建てられるため柱や梁などの強度は十分にあります。しかし、降り積もった雪の重みで屋根だけが耐えられなくなり、屋根がたわんでしまい、最終的に崩落してしまう可能性があるのです。

積雪による開口部が封鎖とは?

これは、屋根の崩落よりもイメージしやすい被害だと思います。屋根に大量の雪が降り積もるような場所であれば、当然地面にも大量の雪が降り積もります。豪雪地帯のニュース映像などを見てみれば、人間の背丈よりはるか上まで雪が降り積もっている…なんてことはよく目にします。
このように、地面に降り積もる雪によって、窓や玄関などの開口部が封鎖されてしまう…という被害が出る場合があるのです。

すが濡れとは?

屋根に降り積もった雪は、室内からの熱や日射などで一度溶かされ、それが凍結し氷になります。このような現象が起きてしまうと、本来排出されるはずの水がせき止められてしまい、屋根材の隙間から室内へ水漏れが起こるのです。
このよう現象は、屋根の勾配が緩やかな建物ほど起きやすいと言われており、工場や倉庫など、勾配が緩やかな金属屋根が多い施設は注意が必要です。

工場や倉庫で行う積雪対策とは?

大量の積雪が建物に悪影響を与えるということは分かりましたね。それでは、積雪に耐えられるようにするためには、どのような対策を進めれば良いのでしょうか?ここでは、工場や倉庫など、大規模施設で行える積雪対策を考えてみましょう。

落雪屋根

豪雪地帯では、屋根に大量の雪が降り積もった場合、定期的に屋根に上がり雪下ろしを行います。しかし、大規模な工場や倉庫などの施設を考えれば、屋根の面積も大きく定期的に雪下ろしをすることはなかなか難しいことでしょう。そのため、大量の雪が降る地域であれば、自然に雪が落ちるよう屋根に角度をつけた設計がされます。こういった自然に雪が落ちる屋根を『落雪屋根』と言います。わかりやすい例を挙げると、世界遺産の白川郷の合掌造りの屋根です。白川郷では大量の雪への対策として、屋根勾配が約60度に設計されており、これにより雪が屋根に積もることが無くなるので積雪荷重による建物の負担がほとんどないと言われています。

近年、豪雪地帯の一般住宅では、スノーダクト式(無落雪屋根)と呼ばれる屋根が採用されることが増加しています。この屋根は、落雪屋根とは全く逆の考えで、屋根中央にダクトを設置し、そのダクトに向けて勾配をつける屋根となります。この屋根形状を導入すれば、落雪による事故の減少、つららの発生の減少などのメリットがあると言われています。しかし、屋根面積が大きくなる大規模施設では、大量の雪が屋根に残ることで、建物への負担が大きくなるというデメリットがあるでしょう。

排熱の有効利用

最近では、新しい試みとして、工場の排熱を有効活用した融雪対策が進められています。例えば、降雪量の多い北陸地方などでは、工場の排熱を道路融雪に利用することが始められています。今後、このような排熱の有効活用が工場や倉庫などの大規模施設でも考えられています。

参考:日経新聞「道路融雪に工場廃熱や下水処理水活用

まとめ

今回は、豪雪地帯にある工場や倉庫などの施設に対する積雪の影響についてご紹介してきました。あまり降雪が多くない地域に住んでいる方であれば、空からゆらゆら風に揺れながら降ってくる雪が建物に影響を与えるほどの重みがあるとは、なかなかイメージできないかもしれません。しかし、大量に降り積もった雪は、雪自身の重みでどんどん固くなり、『しまり雪』の状態になると屋根を崩落させてしまうほどの重みになるのです。特に、強度の弱い建物であれば、屋根の上に1mほどの雪が積もった程度でも、屋根だけでなく建物の倒壊を招いてしまう危険があると言われています。
近年では、短期間で大量の雪が降り積もる…などといった事も増えていますので、積雪が建物に大きな負担をかけるということをきちんと認識しておくことをオススメします。