物流担当者が最低限おさえておきたい『倉庫業法』のポイントをご紹介!

今回は、一般生活の中ではほとんど気にすることが無いと言える『倉庫業法』についてご紹介します。倉庫業法は、その名前の通り、営業倉庫についてのルールを定めた法律です。
近年では、インターネット通販(Eコマース)の利用者が急増しており、洋服や電化製品を始めとして、日常生活に必要な生鮮食品まで通販サイトで購入し、自宅に届けてもらうというスタイルが定着しています。このような状況の中、物流の拠点となる各倉庫では、取り扱う商品の種類も急増しています。このようなことから倉庫は、Eコマース業界を支える非常に重要な位置づけになりつつあります。
しかし、こういった倉庫に自社商品の保管や出荷代行を依頼する荷主側の物流担当者様の中には、倉庫業法の存在すら知らないという方も多いのではないでしょうか?本来、倉庫業法とは、倉庫利用者の利益を保護するための法律ですので、倉庫業を営む事業者はもちろんのこと、倉庫を利用する荷主企業も倉庫業法のポイントは知っておくと良いでしょう。
そこで今回は、倉庫業法の基本と、おさえておきたいポイントについてご紹介します。

倉庫業法の目的について

それではまず、倉庫業法の立法趣旨について簡単にご紹介しておきましょう。一般の方が倉庫と聞けば「自宅の空きスペースに設置して、不要なものを保管しておく場所」などとイメージする方が多いかもしれません。しかし、倉庫というものは、自動車のナンバープレートのように、事業用と自家用に分類されており、「営業倉庫」と「自家用倉庫」に大別されるのです。

  • 自家用倉庫
    倉庫の所有者・使用者が、自らの貨物を保管する施設
  • 営業倉庫
    倉庫業法により国土交通省に定められた倉庫で、外部から委託を受けて商品の保管や入出荷を行う施設

倉庫は、上記のように大別され、倉庫業法は営業倉庫のルールを定めるために作られています。倉庫業法の立法趣旨は以下の通りです。

(目的)
第一条 この法律は、倉庫業の適正な運営を確保し、倉庫の利用者の利益を保護するとともに、倉庫証券の円滑な流通を確保することを目的とする。
引用:倉庫業法

倉庫業法の立法趣旨からも分かるように、この法律は荷主企業が不利益を被らないように保護するためのものですので、荷主企業側の物流担当者は、完全とは言わないまでも、倉庫業法のポイントぐらいは知っておく必要があるでしょう。

物流担当者がおさえておきたい倉庫業法のポイント

倉庫業法は、「報酬を得て顧客の商品を預かる」という倉庫業のルールを定めることで、荷主企業を保護するための法律というのは分かりましたね。それでは、実際に荷主企業の物流担当者が荷物の保管を依頼する際、知っておきたい倉庫業法のポイントをいくつかご紹介します。

倉庫業は登録制の事業であること

まず第一のポイントとしては、『倉庫業は登録が必要な事業』であるということです。倉庫業を運営するには、倉庫業法に基づいて国土交通大臣の行う登録を受ける必要があり、本来その登録を受けた倉庫だけが営業することを許されています。
そして、国土交通大臣の登録を受けるためには、施設の設備などさまざまな基準を満たす必要があるのです。倉庫業の登録を受けるための基準は以下のようなものです。

  • 倉庫の施設・設備が一定の基準を満たしていること
  • 倉庫管理主任者が選任されていること
  • 倉庫寄託約款の届出 … など
ちなみに、営業倉庫は保管する物品によって倉庫の種類が異なり、設備基準などが細かく規定され、それぞれの基準を満たしていなければいけません。倉庫業法は、このような厳しい基準を設けることで倉庫業界が健全に発展していくことを担保しているのです。つまり、物流担当者からすれば、国土交通大臣の登録を受けている倉庫は、各基準を満たした安全な倉庫だと判断できるわけです。
なぜこのようなことを知っておかなければならないかというと、倉庫業というものは空きスペースさえあれば、誰でも比較的簡単に営業することが可能であり、実際に現在も国土交通大臣の登録を受けずに荷主企業と契約し、倉庫業を営んでいる事業者が多く存在していると言われているからです。

登録を受けていない倉庫はリスクが伴う

次のポイントは、登録を受けていない自家用倉庫の利用にはリスクを伴うということです。上述しているように、登録を受けた営業倉庫は、倉庫業法で定められているさまざまな基準を満たしているため、防災や防犯の面で考えても自家用倉庫よりもかなり高い品質を持っています。また、預けた貨物に関しても、倉庫業者が保管責任を負っているため、有事の際も倉庫業者側が責任を取ってくれるのです。
つまり、登録を受けていない倉庫に商品の保管などを依頼した場合、本来満たしていなければならない基準が満たされていないため、防災・防犯上のリスクを荷主企業が持たなければならなくなるのです。さらに、そのような倉庫で火災や管理不足による商品劣化などの事故があっても、認可された倉庫ではないため保険がおりない…、相手が責任を取ってくれない…などのリスクがあります。
リスクを避けるために、登録を受けた営業倉庫と自家用倉庫には以下のような違いがあるということを頭に入れておきましょう。

営業倉庫は厳しい設備基準を満たしている
営業倉庫と自家用倉庫の最も大きな違いは「営業倉庫は倉庫業法に定められる厳しい基準を満たしている」ということです。営業倉庫は、顧客から預かった商品を安全に保管するため、外壁や床の強度、耐火・防火性能などに関する厳しい基準を満たしています。実際に、倉庫における火災の発生件数は、営業倉庫に対して、それ以外の倉庫が圧倒的に多いのです。

  • 2014年倉庫全体で530件の火災発生。そのうち営業倉庫の火災は4件
  • 2015年倉庫全体で502件の火災発生。そのうち営業倉庫の火災は2件
  • 2016年倉庫全体で443件の火災発生。そのうち営業倉庫の火災は2件

※火災件数は消防白書より抜粋

倉庫寄託約款が定められている
登録を受けている倉庫業者は、登録を受けるために『倉庫寄託約款』を定め、国土交通省に届出を行っています。したがって、登録を受けている事業者に貨物の保管を依頼した場合、特に契約書を締結していない場合でも、最低限の倉庫保管サービスのルールが定められています。そのため、預けていた貨物に何かトラブルがあった時には、この約款に基づいて処理することが可能なのです。
しかし、登録を受けていない倉庫の場合、何らかの契約をしなければ、民放・商法上の取り決めの他は、何の取り決めも行われないままサービスを利用することになります。つまり、何らかのトラブルが発生しても、倉庫業者に責任を求めることができない可能性があるのです。
参考:倉庫寄託約款
営業倉庫は火災保険がある
営業倉庫は、上述の通り、倉庫寄託約款に基づいて営業しています。そして、多くの倉庫業者は上で紹介した『倉庫寄託約款』を採用しており、この中には倉庫業者が荷主のために火災保険を付けると定められています。したがって、万一、火災が発生した場合でも火災保険で保証を受けることができるのです。
一方で、自家用倉庫の場合、預けている貨物に火災保険を付けているとは限りませんので、火災で損害を受けた場合でも何の保証も受けられないリスクがあるのです。ちなみに、自ら自家用倉庫を賃借する場合は、自らの責任で火災保険に加入しなければいけません。

まとめ

今回は、荷主企業の物流担当者様が、最低限知っておくべき倉庫業法の基本についてご紹介しました。本稿でもご紹介したように、倉庫業法というものは、荷主企業が不利益を被らないために作られた法律であるため、大切な自社商品を守るためには、どういった法律なのかはおさえておいた方が良いでしょう。
こういった法律は、倉庫業を営もうと考えている人が勉強すべきものだとイメージするかもしれませんが、決してそういうわけではなく、荷物を預ける荷主企業にとっても非常に重要なものなのです。