日常生活の中で、あらゆる場所で国内外に「モノ」を運ぶための物流トラックを見かけることでしょう。特に、現在ではインターネット通販が日常生活に欠かせないサービスとなっていることから、物流業のニーズは今後もさらに増していくと考えられます。
私たちの日常生活を支えてくれている運送会社では、トラックドライバーが安全に業務を遂行するため、点呼の実施とその記録・保存が欠かせない業務とされています。しかしその一方で、適正巡回指導では、毎回のように「点呼の実施及び記録保存」の不備が指摘率の上位にランクインしていると言われています。
そこでこの記事では、運送会社で必要とされている『点呼業務』の目的や、どのような記録が必要になるのかを簡単にご紹介していきたいと思います。
点呼業務の目的
それではまず、運送会社で欠かせない業務となっている『点呼』の目的について簡単に解説しておきましょう。点呼業務の目的を簡単に解説すると「トラックとドライバーの安全を守ること」です。
点呼の際には、ドライバーの健康状態や乗車するトラックに何らかの異常はないかなどの注意すべき箇所をしっかりと認識し、運転前に確認を行うことで安全な運航を確保することが大きな目的となっています。そのため、運送業では点呼が監視対象とされており、その実施が厳しくチェックされています。なお、全日本トラック協会が公表している資料では、以下のように説明されています。
運行管理者は、乗務前点呼を実施し、運転者から本人の健康状態や酒気帯びの有無、日常点検等の報告を求め、それに対して安全を確保するために必要な指示をしなければなりません。乗務終了後には乗務後点呼を実施し、乗務した自動車、道路、運行の状況、酒気帯びの有無、ほかの運転者と交替した場合には、交替運転者との通告について報告を受けなければなりません。しかし、乗務前、乗務後のどちらかが、やむを得ず対面で点呼ができない場合は、電話その他の方法で点呼を行います。
引用:全日本トラック協会「運行管理業務と安全マニュアル」P.27
近年では、事業用貨物自動車による事故件数は減少傾向にありますが、完全に事故を無くすことは難しいのが現状です。
しかし運送会社による点呼業務も、トラックによる事故を限りなく『ゼロ』にするための手段の一つとして有効です。
点呼の種類と確認・指示事項、記録事項について
それでは、『点呼業務』で具体的にどのようなことを確認しなければならないのかをご紹介しておきましょう。ここでは、全日本トラック協会「運行管理業務と安全マニュアル」を参考にご紹介しておきます。
乗務前点呼
まずは、ドライバーが業務に入る前に確認しなければいけないポイントです。以下のような内容を確認します。
- 運転者の健康状態、酒気帯びの有無、疲労の度合、睡眠不足などの状況
- 日常点検の実施結果に基づいて、整備管理者によって自動車の運行可否が決定されたことを確認
- 運航に必要な携行品の確認(運転免許証、非常信号用具、業務上必要な帳票類など)
- 運行の安全を確保するために必要な指示(休憩時間や場所、道路状況、気象条件など)
乗務前の点呼では上記のような確認・指示事項となります。また、記録事項は以下の通りです。
- 点呼執行者名
- 運転者名
- 乗務する車両の登録番号
- 点呼日時
- 点呼方法(アルコール検知器使用の有無、対面でない場合は具体的方法)
- 酒気帯びの有無
- 運転者の疾病、疲労等の状況
- 日常点検の状況
- 指示事項
- その他必要な事項
乗務後点呼
次は、乗務後の確認・指示事項です。以下の通りとなります。
- 運転者の運転状況などの確認(車両、積載物の異常の有無、乗務記録、運行記録計などの記録)
- 工事箇所など道路状況に関する最新情報
- 酒気帯びの有無
- 次回の運行予定の確認を指示
乗務後点呼の記録事項は以下の通りです。
- 点呼執行者名
- 運転者名
- 乗務する車両の登録番号
- 点呼日時
- 点呼方法(アルコール検知器使用の有無、対面でない場合は具体的方法)
- 酒気帯びの有無
- 自動車、道路及び運行の状況
- 交替運転者に対する通告
- その他必要な事項
中間点呼(乗務前、乗務後のいずれも対面で点呼ができない場合)
上記の、『乗務前』『乗務後』点検について、いずれも対面での点呼ができない場合、乗務途中に少なくとも1回は電話やその他の方法で運転者と直接対話できる方法による点呼が必要です。中間点呼の確認・指示事は、以下の通りです。
- 酒気帯びの有無
- 健康状態についての報告(疾病、疲労、睡眠不足など)
- 運行の安全を確保するために必要な指示
中間点呼の記録事項は以下の通りです。
- 点呼執行者名
- 運転者名
- 乗務する車両の登録番号
- 点呼日時
- 点呼方法(アルコール検知器使用の有無、対面でない場合は具体的方法)
- 酒気帯びの有無
- 運転者の疾病、疲労などの状況
- 指示事項
- その他必要な事項
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まとめ
今回は、安全な運行を実現するための『点呼業務』の基礎知識についてご紹介してきました。点呼業務に関しては、監査の際に提出が求められますので、必ず記録として残しておかなければいけません。しかしながら、安全を守るためとはいえ、点呼は確認事項も多くそれなりに時間がかかってしまうことになるため、点呼を実施する運行管理者にとっては大きな負担になる業務とも言われています。
現状では、原則的に点呼は対面で行うこととなっているのですが、状況によってはそれが効率的な運行の妨げになってしまう場合もあると言われています。そこで近年では、テレビ電話などのように、画面越しで点呼を行うことができる『IT点呼』なるサービスも登場しています。こういった手法であれば、物理的にドライバーと管理者が対面していなくても点呼を行うことができ、効率化と点呼の質の維持が実現すると言われています。さらに、システム上に映像として点呼記録が残りますので、点呼記録の管理の面でも非常に楽になると言われています。
国からもIT点呼システムの活用が推進されるようになっていますので、こういった最新技術の導入による効率化を考えても良いかもしれません。