高温多湿な日本は食中毒に注意!食中毒を防ぐための『食中毒予防の原則』とは?

今回は、食品を取り扱う施設で働く方全員がおさえておきたい『食中毒予防の原則』についてご紹介したいと思います。食中毒は、主にウイルスや細菌が原因となって引き起こされるのですが、高温多湿となる日本の夏場は特に細菌の増殖による食中毒事故に注意しなければいけません。普段から徹底した衛生管理がなされている飲食店や食品工場などであれば、一般家庭などとは異なり、細菌の増殖を招いてしまい、食中毒事故を引き起こすことなど考えられない…と思っている方も多いのではないでしょうか?

しかし、さまざまな技術が進化し高い衛生管理に対する意識を持つと言われる日本国内でも、食中毒事故を完全になくすことはできていないのです。それでは、日々のさまざまな食品を取り扱う食品関連施設において、食中毒事故を防ぐためにはどのような点に注意しておけば良いのでしょうか?

夏場の食中毒は『細菌』が原因

引用:厚生労働省資料より

上図は、令和元年に発生した食中毒について、その原因をグラフ化したものです。これからも分かるように、食中毒にはさまざまな原因があるものの、その主な原因は『ウイルス』と『細菌』なのです。どちらも、人間の目では確認することができないほど小さいもので、細菌などは温度や湿度などの条件が揃えば食品中で爆発的に増殖してしまい、それを食べた人が食中毒になってしまうのです。

細菌による食中毒については、6~8月などの夏場に多く発生するもので、代表的な細菌は腸管出血性大腸菌(O157、O111など)やカンピロバクター、サルモネラ属菌となります。これらの食中毒を引き起こする細菌の多くは、20℃程度の室温で活発に増殖し始め、人体や動物の体温(35℃)程度の温度になると増殖のスピードが劇的に早くなると言われています。さらに、細菌の増殖については、湿気の高さも関係していると言われており、高湿になるほど活発に増殖するなど、まさに高温多湿となる日本の梅雨から夏にかけては、細菌性食中毒の危険性が非常に高い時期と言えるわけです。
ちなみに、ノロウイルスなど、ウイルス性の食中毒に関しては、11月~3月などの冬場に増加します。したがって、日本国内では一年中食中毒が発生する危険があり、徹底した衛生管理が大切になるのです。

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食中毒予防の原則とは?

それでは、細菌の増殖に非常に適した気候となる日本の夏場において、食中毒事故を予防するためにはどうすれば良いのでしょうか?食中毒は、その原因となる細菌やウイルスが付着した食べ物を体内に取り込むことによって発生します。したがって、夏場に増殖する細菌による食中毒を防ぐためには、「食品に細菌をつけない」「食品に付着した細菌を増やさない」「食べ物や調理器具に付着した細菌をやっつける」という3つのポイントが大原則になると言われています。

ここでは、夏場に特に注意が必要と言わる細菌性食中毒を予防するための基本的な方法をご紹介しておきます。

食品に細菌を『つけない』ためには?

細菌性食中毒を防ぐためには、食品に細菌を『つけない』ということに注意しなければいけません。普段何気なく使っている私たちの手ですが、手にはさまざまな雑菌が付着しています。したがって、食品に食中毒の原因菌を付着させないために、徹底した手洗いが求められるのです。
食品を取り扱う施設で働く場合、以下のようなときには必ず手洗いをして、食品に細菌が付着するのを防ぎましょう。

  • 肉や魚、卵などを取り扱う前後
  • 食材を加工・調理する前
  • 調理途中でトイレなどに行った後
  • 食材を持ち込むため、梱包材に触れた後

食品工場などでは、作業場に入る前に丁寧な手洗いをすることが求められますが、一度手洗いすれば良いのではなく、細菌が付着する可能性があるものに触れた後も小まめに手洗いをする必要があるのです。また、調理に使用する道具についても、小まめに洗浄することや、食材によって使用する器具を替えるなどの対策が重要です。例えば、生肉や生魚を切った包丁やまな板などの器具から、加熱せずに使用する野菜などに菌がついてしまう恐れがあります。使用器具を替えない場合には、使用するたびに綺麗に洗浄・殺菌を行うなどの対策が必要になるでしょう。また、飲食店などであれば、冷蔵庫内に保管する際、解凍中の肉のドリップが他の食材に付着してしまう…などと言う危険がありますので、保管場所にも注意しましょう。

細菌を『増やさない』ためには?

食中毒事故を防ぐためには、細菌を『増やさない』ということも重要です。上述しているように、食中毒の原因菌については、高温多湿な環境下で増殖が活発になると言われています。しかし、10℃以下の低温環境では増殖がゆっくりとなり、マイナス15℃以下になると増殖が停止すると言われているのです。
つまり、食品に付着した細菌を増やさないためには、低温下で保存するということが重要になるのです。すぐに使用しない食品であれば、できるだけ低温な状況で保管しておくようにしましょう。

細菌を『やっつける』ためには?

最後は、付着した細菌を『やっつける』ための対策です。食中毒の原因となるウイルスや細菌はさまざまなものが存在するのですが、ほとんどの場合、加熱することによって死滅させることができます。したがって、肉や魚はもちろん、野菜なども加熱して食べれば安全なのです。例えば、肉料理の場合、中心部までしっかりと加熱することが重要と言われており、中心部を75℃で1分以上加熱することで食中毒の危険性をかなり下げることができると言われています。
なお、食材以外に関して、包丁やまな板などの調理器具に関しても、食中毒菌が付着している可能性がありますので、使用後はしっかりと洗浄してから殺菌を行うようにしましょう。

まとめ

今回は、食品関連施設において、食中毒事故を防ぐためにおさえておきたい『食中毒予防の原則』をご紹介してきました。この記事では、主に細菌によって引き起こされる食中毒を防ぐためのポイントについてご紹介してきました。上述しているように、食中毒の原因菌は、35℃程度の温度と適度な湿度が増殖に適した条件と言われており、まさに高温多湿な日本の夏は食中毒菌の増殖条件が揃っていると言えるのです。

したがって、夏場の食中毒を防ぐためには、食品に細菌を「つけない」、付着した細菌を「増やさない」、細菌を「やっつける」ためにはどうすれば良いのかという視点を持つことがとても大切になります。とても基本的なことですが、小まめに手洗いして、食品に細菌をつけないことや、低温下になる冷蔵・冷凍庫で食品を保管するなど、身近な部分に食中毒予防のポイントがあるということをしっかりと頭に入れておきましょう。