インフルエンザの出勤強要は違法?インフルエンザに関する会社のルールは決めておくべき!

冬場の仕事現場では、インフルエンザへの対策が非常に重要になります。日本では毎年秋から冬にかけて、インフルエンザが全国的に流行してしまいますので、大手メディアなどでもインフルエンザに関する注意喚起が盛んに行われています。インフルエンザは非常に感染力が強いため、インフルエンザに感染した社員本人だけが困るわけではないというのが特徴です。例えば、インフルエンザに感染していることに気付かず出勤してしまった社員がいた場合には、他の社員にまで感染が広がって業務の遂行に悪影響が出てしまう危険もあります。よって、会社としてインフルエンザに感染した社員への対応を誤るわけにはいかないのです。

そこで今回は、社員がインフルエンザに感染してしまった場合、何らかの法的な決まりはあるのかについてご紹介します。

インフルエンザに感染した社員の出勤に法的な決まりがあるのか?

冒頭でもご紹介したように、インフルエンザへの感染は自分だけの問題ではなく、周囲にも影響を与えるものです。それでは、社会的にも非常に危険なものと認識が広がっているインフルエンザについて、感染が分かっているのに会社に出勤するような行為は法的に問題がないのでしょうか?実は、学校などではきちんと法律によって出席停止期間が定められているのです。

学校にはインフルエンザに対する法的な基準がある

まずは学校におけるインフルエンザ感染者への対応からご紹介しておきましょう。会社ではありませんが、多くの人が同じ場所に集まるという点では会社と学校は同じです。そして学校には、児童生徒および職員の安全を守るため『学校保健安全法』という法律が制定されており、この中でインフルエンザ感染者への対応が明示されているのです。

インフルエンザに感染したときには、学校保健安全法施行規則第19条第1項および第2項で、インフルエンザの種類に応じて感染した生徒本人の出席停止期間が定められています。

  • 新型インフルエンザおよび特定鳥インフルエンザの感染
    治癒するまで。
  • 季節性インフルエンザ(鳥インフルエンザ(H五N一)を除く。)
    発症した後五日を経過し、かつ、解熱した後二日(幼児にあつては、三日)を経過するまで。
参考:学校保健安全法施行規則

学校では上記のようにインフルエンザ感染者の出席停止期間が決められています。また、同居する家族がインフルエンザに感染した場合でも、「学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで。」は出席停止と定められています。

会社はインフルエンザに対する法的な基準がある

学校では、上記のようにインフルエンザ感染者への対応が法律で定められています。それでは会社も同様に、法律によって何らかの決まりがあるのでしょうか?

現在のところ、会社におけるインフルエンザへの対応には法律的な定めがありません。労働関連法令では、さまざまなことが定められているのですが、インフルエンザに感染した社員の出勤停止期間などを定めた条文は一切ありません。そのため、会社独自でインフルエンザに感染した社員への対応策を決める場合には、上述した学校保健安全法施行規則を基準にする会社が多いようです。

インフルエンザ感染者への出勤強要は違法?

上述の通り、社員がインフルエンザに感染した場合でも、法律などでその対応が定められているわけではありません。それでは、インフルエンザに感染した社員に出勤を強要した場合でも違法ではないのでしょうか?

当然このような出勤強要に関しては問題があると考えられており、社員がインフルエンザの症状を訴えており、医師などの診断書が出ているのにもかかわらず出勤を強要した場合には、労働安全衛生法および労働契約法違反に問われる可能性があります。ちなみに、新型インフルエンザおよび特定鳥インフルエンザに関しては、感染症予防法により就業制限の対象とされていますので、これらに感染した社員に対して出勤の強要を行った場合には罰則の対象となります。

そもそも、労働契約法第5条では「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と定められています。したがって、インフルエンザに感染している社員に対して出勤の強要を行うような行為は、当該社員はもちろん、他の健康な社員までインフルエンザに感染する危険性をもたらすことを意味しますので、安全配慮義務違反に問われる可能性があるでしょう。

法的な罰則はない
新型インフルエンザや特定鳥インフルエンザを除く季節型インフルエンザに感染した社員に対し、会社が出勤を強要した場合でも、現在は法的な罰則規定はありません。しかし、会社の安全配慮義務違反と社員に生じた身体や生命への損害に因果関係が認められる場合、社員から損害賠償請求をされる可能性はあるでしょう。

会社ができるインフルエンザ対策とは?

それでは最後に、会社としてできるインフルエンザ対策について簡単にご紹介しておきましょう。冒頭でご紹介したように、毎年秋から冬にかけてはインフルエンザの感染が大流行してしまうので、会社としての対応策は作っておいた方が良いでしょう。

就業規則を整備する

まず重要になるのは、社内でインフルエンザの感染拡大を防ぐことです。そのためには、インフルエンザに感染した社員に対して、会社として出勤停止を命じることができるよう、その旨を就業規則に明記しておくのが良いでしょう。例えば、社員やその家族がインフルエンザ感染の疑いがある場合に対処できるよう、以下のポイントを押さえて就業規則に明記しておきましょう。

  • インフルエンザの疑いがある場合、早めに医師の診断を受けることを推奨する
  • 医師にインフルエンザと診断された場合、医師の診断書とともに感染した旨を会社に報告することを義務付ける
  • 出勤停止期間を命じる基準を明示する
具体的な内容は、各会社の業務内容や規模などに合わせて検討すべきですが、上記のようなポイントはおさえておきましょう。

インフルエンザの感染を防ぐ制度を作る

インフルエンザの感染を防ぐためには予防接種が推奨されています。そのため、社員のインフルエンザ感染を予防するために、予防接種にかかる費用を補助する制度などを設けることも有効だと思います。
また、会社の備品としてマスクやアルコール消毒剤などの備品を用意しておくのも良いでしょう。

企業が行うべきインフルエンザ対策とは?

まとめ

今回は、インフルエンザに感染してしまった社員に対する会社の対応についてご紹介しました。日本では、毎年インフルエンザが大流行する時期があり、全ての会社が社員のインフルエンザ感染に関する問題を避けて通ることができません。
したがって、全ての企業は、社員がインフルエンザに感染してしまった場合の『しかるべき対処法』というものを予め備えておかなければならないと言えるでしょう。インフルエンザは、感染した社員だけでなく、感染拡大により会社全体の問題にまで発展しかねない恐ろしいものだ。としっかり認識しましょう。