今回は、さまざまな物品を保管する倉庫の、保管温度帯によって異なる倉庫の特徴についてご紹介します。
『倉庫』と聞けば、一般住宅の庭などに設置される「雑多なモノを保管しておく場所」といったイメージを持っている方も多いですが、営業用倉庫となれば保管する物品に合わせた温度管理が必要になります。例えば、人が口にする食品を保管する倉庫となれば、食品の鮮度を落とさないため一定の温度を保っていなければいけません。
特に近年では、インターネット通販でさまざまな商品が取り扱われるようになっており、顧客の手元に商品が届くまで、一時的に大切な商品を保管する倉庫の重要性が年々高くなっています。日本では、四季の影響による温度・湿度の変化も考慮する必要があるため、倉庫に求められる機能は多岐にわたります。
そこでこの記事では、日本の物流業界を支えるさまざまな倉庫の種類と、それぞれの特徴についてご紹介していきます。
倉庫の種類をそれぞれの特徴について
インターネット通販での買い物が当たり前となっている近年では、在庫を保管するための倉庫が非常に重要となっています。大手企業の中には、自社商品に適した温度帯で保管できる大規模倉庫を建設する場合もありますが、自社倉庫を所有していない企業の多くは、『営業倉庫』を借りて商品の保管を行います。営業倉庫を選定する場合には、物流業務にかかるコストが注目されがちなのですが、大切な商品を安全に保管するためには「商品に適した温度帯で保管できる倉庫なのか?」ということを確認する必要があります。
一口に『倉庫』と言っても、保管温度帯などの違いから「常温倉庫」「定温(低温)倉庫」「冷蔵倉庫」「冷凍倉庫」「除湿倉庫」に分類することができます。ここでは、それぞれの倉庫の特徴や保管に適した物品について簡単に解説します。
常温倉庫の特徴
まずは『常温倉庫』です。名称から分かるように、倉庫内の温度調節などは行わず、外気温と変わらない温度で保管する施設となります。最も一般的な倉庫と言えるもので、倉庫内の保管温度は、夏は暑く冬は寒いなど、四季の影響を受けることになります。
さらに、倉庫の立地条件によっては、保管条件にも影響を及ぼすことがあります。例えば、海の近くにある倉庫であれば、湿気が高い潮風の影響を受けることになるため、錆びてしまうような商品や湿気の影響を受けやすい商品の保管には適していません。
常温倉庫は、温度調節をする設備が不要でそこまで高い機能を求められませんので、さまざまな規模の倉庫が存在しています。また、下で紹介する高機能倉庫と比較すれば、安価で保管を委託できる点などがメリットになります。
定温(低温)倉庫の特徴
『定温(低温)倉庫』は、文字通り「倉庫内の温度を一定に保つことができる倉庫」の事を指しています。この倉庫は、温度や湿度の変化によって、商品の品質に影響が出てしまい品質低下をおこしてしまうような商品について、倉庫内を一定の温度と湿度に保つことで、品質を維持したまま保管することを目的としています。
なお、定温倉庫は、保管する物品に合わせて温度調節を行い、一定範囲内の温度を保ちます。一般的に、「10℃~20℃」の範囲内の温度に保つ倉庫が定温倉庫と呼ばれます。ただし、倉庫業法施行規則では、10℃以下で商品を保管する冷蔵倉庫を除いて、それ以外の一定の保管温度を保つ倉庫を『定温倉庫』と呼んでいます。
冷蔵倉庫の特徴
このサイトでも何度かご紹介している『冷蔵倉庫』は、「+10℃以下の低温で保管する施設」の事を指しています。冷蔵倉庫は、保管温度別に以下のような7つの階級に分けられています。
区分 | 保管温度帯 |
---|---|
C3級 | +10℃以下~-2℃未満 |
C2級 | -2℃以下~-10℃未満 |
C1級 | -10℃以下~-20℃未満 |
F1級 | -20℃以下~-30℃未満 |
F2級 | -30℃以下~-40℃未満 |
F3級 | -40℃以下~-50℃未満 |
F4級 | -50℃以下 |
冷蔵倉庫は、「10℃以下から-20℃未満」の倉庫を『C級(チルド)』、「−20℃以下」のものを『F級(フローズン)』と分類しています。なお、分かりやすいように倉庫内の温度が「-20℃以下」となる倉庫は『冷凍倉庫』と呼ばれる場合もあります。
冷凍倉庫の特徴
上述したように、「+10℃以下の低温で保管する施設」は冷蔵倉庫に分類されます。冷凍倉庫は、その中でも『F級(フローズン)』に分類される、特に室内温度が低く保たれている倉庫を指しています。
除湿倉庫の特徴
除湿倉庫は、上で紹介している『温度』で区分した倉庫には当てはまりません。この倉庫は、カビの発生や酸化、腐食などの原因となる『湿度』を調整できる機能を持った倉庫です。一般的に、温度の影響はそこまで受けないものの、湿度に弱い物品を保管するための倉庫となります。
梅雨時期や夏場などは高湿度になりやすい日本ですが、こういった時期でも湿度調整が可能で、商品を保護できる機能を持った倉庫となります。温度区分は基本的にはないのですが、年間を通して「15℃~25℃」の範囲内に設定れている倉庫が多いです。
まとめ
今回は、保管温度帯によって区分される倉庫の特徴やそれぞれの倉庫に適した保管物品についてご紹介してきました。年々拡大を続けるEC市場では、「手に入らないものはない」と思えるほどさまざまな商品が取り扱われるようになっています。どのような商品に関しても、購入者の手元に届くまでには、一時的に在庫を保管する倉庫が非常に重要な役割を担っています。
しかし、それぞれの商品には、品質を保つための適した保管温度というものがありますので、倉庫に求められる機能が年々多様化していっています。倉庫には、「保管する物品を安全に保管する」だけでなく、「品質を保たなければいけない」という役割りがありますので、現在のような区分の倉庫が存在するようになっています。
今後も、ネット通販などで取り扱われる商品は増えていく一方と考えられますので、自社に必要な倉庫はどういったものなのかをよく検討し、機能性倉庫の建設を検討してみましょう。
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