倉庫における保管温度の基礎知識。3温度帯や4温度帯って何?

今回は、さまざまな製品の保管を行う倉庫について、ぜひ押さえておきたい『保管温度帯』について簡単に解説していきたいと思います。

皆さんは、さまざまな物品の保管を行う倉庫において、何に注意しておけば良いと思いますか?こう聞かれると、「より多くの物品を保管するための面積!」や「作業効率が上がるようなレイアウト!」などと言った事に注目する方が多いと思います。もちろん、倉庫の面積や棚や通路などのレイアウトが非常に重要なのは間違いないのですが、保管する物品によっては保管時の温度に注目しなければいけない場合があります。

特に、食品物流を中心とした配送の場合は、保管時の温度指定などがあり、『常温(ドライ)・冷蔵(チルド)・冷凍(フローズン)』の3温度帯が一般的に使われています。そして、これに『定温』を加えたものが「4温度帯」となるのですが、この記事では、3温度帯や4温度帯がどのような物なのかを簡単にご紹介しておきます。

食品物流の基本『3温度帯』について

それでは、食品物流において基本とされている『3温度帯』がどのようなものなのかについて簡単にご紹介していきましょう。上述したように、3温度帯は『常温(ドライ)・冷蔵(チルド)・冷凍(フローズン)』の3つの温度帯のことを指しており、それぞれの温度管理の基準(温度指定)は以下の通りとなっています。

  • 常温(ドライ)・・・10℃~15℃(または20℃)
  • 冷蔵(チルド)・・・-5℃~5℃
  • 冷凍(フローズン)・・・-15℃以下

これだけで見ると、意外に大雑把な分類に思えますが、3温度帯は食品によってさらに細分化されています。その分類は以下の通りです。

  • 加温・・・20℃以上(ピザ、フライ類など)
  • 常温(夏場の高温期は「常温」と呼ばれる)・・・10~20℃(チョコレート菓子、米、マヨネーズ、ドレッシングなど)
  • 冷蔵(チルド)・・・-5℃~5℃(乳製品、精肉など)
  • 氷温・・・-3℃~0℃(鮮魚、漬物など)
  • パーシャル・・・-3℃(鮮魚類など)
     
    ※倉庫業法では、C3級(0℃~10℃)、C2級(0℃~-10℃)、C1級(-10℃~-20℃)というように、さらに細かく区分されています。
  • 冷凍(C1級)・・・-20℃~-10℃(パン生地、調理用冷凍食品〈-18℃〉など)
  • F1級・・・-30℃~-20℃(アイスクリーム類〈-25℃〉)
  • F2級・・・-40℃~-30℃
  • 超冷凍(F3級)・・・-50℃~-40℃(冷凍マグロなど)
  • F4級・・・-50℃以下

上記のように、3温度帯も、食品によってかなり細分化されています。

参考情報:日本通運公式サイト

『4温度帯』とは?

3温度帯がどのような物なのかは理解していただけたと思います。それでは冒頭部分でも少し触れた「4温度帯」についても簡単に触れておきましょう。

4温度帯と言うものは、上記の3温度帯に「10℃~20℃」の一定の温度と湿度が保たれた温度帯を加えたものです。別記事になりますが、一定の温度と湿度を保つ倉庫のことを『定温倉庫』と呼ぶのですが、要はこの温度帯を加えて4温度帯と呼んでいるのです。定温倉庫については、以下の関連記事をご確認ください。

なお、『定温』に関しては、取り扱う商品によって指定の定温温度が変わりますので、配送業者で定義されている温度が異なる場合もあります。したがって、保管する物品、配送業者、それぞれの指定温度をしっかりと確認し、指定の「定温」で扱う必要があります。定温で取り扱う商品は、ワインやチョコレートなど、温度変化などに弱いデリケートな食材や高温や低温に弱い薬品や化粧品、結露の発生が厳禁な精密機器などです。

定温倉庫ってどんな倉庫?

保管温度帯から見た倉庫の種類

ここまでは、主に食品物流で使われる3温度帯と4温度帯について解説してきました。これらの保管温度帯の違いから考えると、実際の物流倉庫がどのような分類をされているのかもよくわかるのではないでしょうか。保管温度帯を基準に見ると、物流倉庫は以下の4種類に分類することが可能です。

  • 常温倉庫
    常温倉庫は、温度管理などはほとんど行わず、屋外の気温で保管可能な物品を保管する倉庫です。例えば、家具や建材、段ボールなどが主な保管物品となります。
  • 定温倉庫
    定温倉庫は、10~20℃の一定の保管温度帯を保つ倉庫のことです。定温倉庫で保管する物品の代表例は、ワインや生鮮野菜、精密機器などです。ちなみに、生鮮果実・生鮮野菜は、定温倉庫の登場によって、長期保存が可能になったと言われています。
  • 冷蔵倉庫
    10℃以下の保管温度帯を保つ倉庫を、倉庫業法施行規則では『冷蔵倉庫』と呼びます。なお、冷蔵倉庫も、保管温度帯によって7種類に分類されています。冷蔵倉庫の詳細については、以前紹介した「冷蔵保管と冷凍保管の区分をおさえておこう(公開時【12-05】にリンク)」という記事をご参照ください。
  • 冷凍倉庫
    冷凍倉庫は、冷凍~超低温の保管温度帯を維持する倉庫を指しています。ただし、倉庫業法施行規則の定義では、冷凍倉庫も冷蔵倉庫の一部と言う扱いになります。「-20℃以下を維持するF級(フローズン級)」の保管温度帯となる倉庫のことを、便宜上「冷凍倉庫」と呼んでいます。

結露しない冷蔵・冷凍庫についてはこちら

まとめ

今回は、倉庫の保管温度帯の基礎知識についてご紹介してきました。インターネット通販などでも、生鮮食品や冷凍食品が普通に販売されるようになってきた昨今では、保管する物品の特性に合わせて保管温度を調整できることが非常に重要になっています。

例えば、木材や家具などを保管する場合であれば、多少の温度変化で製品が悪くなることなどあまりありませんし、そこまで保管温度を気にするようなことは無いでしょう。しかし、これが食品の保管となると、適切な保管温度帯を守らなければ、すぐに商品が傷んでしまい、最悪の場合、食品事故を引き起こしてしまうことにもなりかねません。
今後もEC市場はどんどん拡大を続けると予想されていますし、さまざまな物品の保管に対応するためには、保管温度帯のこともしっかりと考えておく必要があるでしょう。