今回は、工場の運営に付き物ともいえる、近隣住民との騒音トラブル。その騒音を防ぐための対策についてご紹介します。工場を稼働する場合には、機械の稼働音や作業音がどうしても発生してしまいますので、近隣住民との思わぬ騒音トラブルを引き起こしてしまうことがあります。実際に、環境省の調査によると、「騒音に関するクレームや苦情」が自治体に持ち込まれる件数は、平成21年以降5年連続で増加し、平成27年に多少減少に転じたものの、現在でも年間16,000件以上の苦情が入るなど、ほぼ横ばいとなっています。
特に、工場が住宅街と隣接している場合には、日常的にクレームが寄せられる可能性も高く、そういったクレームを「仕方ないから…」などと無視してしまったのでは、周辺住民との関係が険悪になってしまい、立ち退きにまで発展してしまう危険性もあります。当然、近隣住民との関係悪化は、事業の運営に支障が出てしまうことになりますので、工場運営者であれば誰もが避けたいものだと思います。
本来、工場から発生する騒音は、近隣住民とのトラブルに発展する前に、何らかの対策を施すことが重要となります。そこで今回は、工場で進められる騒音対策についていくつかご紹介します。
参考資料:環境省『平成29年度騒音規制法施行状況調査結果』
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工場に必要になる騒音対策の種類
それではまず、工場における騒音対策にはどのようなものがあるのでしょうか?一口に工場と言っても、取扱製品によって使用する設備が異なり、それに合わせて必要になる騒音対策も異なります。工場の騒音対策は、大まかに分類すると、以下の3種類があるでしょう。
- 騒音の音源に施す対策
- 工場建屋自体に施す対策
- 工場建屋でなく、その周囲に施す騒音対策
騒音対策を進める場合には、まず音源となっている部分に騒音対策を施してみて、それでも騒音が出るようなら「工場建屋への対策⇒工場建屋周辺での対策」と進んでいくのが一般的です。以下でそれぞれの騒音対策についてもう少し詳しく解説しましょう。
それぞれの騒音対策について
それでは、上述した3段階の騒音対策について、それぞれどのような手法があるのか見ていきましょう。
レベル1 音源に施す対策について
それではまず、騒音の音源へ施す防音対策についてです。この部分は工場などで発生する騒音における、最も基本となる対策になります。さまざまな製品を製造する工場では、プレス機械やせん断機、木材加工機械など、稼働に騒音を伴う機械が使用されることも多くあります。したがって、まずは騒音の発生源となる機械を特定し、そこに防音対策を施すことがスタートになります。これにより、工場内部から漏れる騒音レベルを低減させることが期待でき、工場内で作業する従業員の作業環境も改善できます。
具体的な対策例をいくつかあげておきましょう。
レベル2 工場建屋自体に施す対策について
製造機械など、騒音の音源に対する防音対策を進めても、騒音が軽減されない…軽減されたがまだクレームが来る…と言った場合、工場建屋自体に何らかの防音対策をする必要があるでしょう。防音工事専門の業者に依頼するなど、適切な防音対策を進めことで、大きな防音効果を期待できます。
具体的な対策例は以下のようなものです。
レベル3 工場建屋周囲に施す騒音対策
上述のような、音源への騒音対策や、工場建屋自体に防音対策を進めたのにかかわらず、それでも十分な騒音対策とならなかった場合には、建屋周辺でも防音対策を進めなければいけません。
工場建屋周辺の騒音対策としては、防音壁と呼ばれる壁を建てることが最も多く使われる方法となります。建物を囲むように壁を建てた場合、周辺へ直接音が届かないように遮音することができますので、近隣住民への騒音対策としては非常に有効だと言われています。こういった防音壁による騒音対策は、一般的に「外部で発生している音を25db程度下げる能力がある」と言われていますので、非常に有効な手法と言えるでしょう。
なお、工場と近隣建物との距離が非常に近く、壁を建てるスペースがない…という場合には、工場内に壁を作り遮音するという方法になるようです。
まとめ
今回は、工場の騒音対策についてご紹介しました。本稿でご紹介したように、工場における騒音対策は、騒音の音源に施す簡単な対策から、工場建屋自体に進める大掛かりな工事まで、さまざまな手段があるのです。
工場の騒音対策と聞くと、近隣住民とのトラブルを防ぐために進めるものだと考えがちですが、作業現場で騒音が低減されることは、そこで働く従業員の作業環境を改善することにもつながりますので、より良い職場を目指すためには定期的に工場内の騒音をチェックし、可能な部分から対策を進めていくのがオススメです。
冒頭でもご紹介したように、近隣住民とのトラブルは工場の運営を困難にする問題にまで発展してしまう可能性もあるため、「工場なのだからある程度の騒音は当たり前だ!」などといった考えを持つのではなく、周辺住民の生活環境のことも十分に配慮した体制作りがとても重要になると思います。