工場事故で考えられる人的原因とは?

私たちの日常生活は、さまざまな製品があるおかげで成り立っています。例えば、遠距離移動を楽にしてくれる自動車や、日々の生活を便利にしてくれる家電製品、日々の生活を彩ってくれる衣類など、みなさんもさまざまなモノに生活を支えられていることでしょう。そして、こういった製品のほとんどは、工場で生産され、私たちの手元に届けられています。

日常生活の中で、当たり前のように使っているさまざまな製品ですが、これらの製造工程には取り扱う材料や設備によって、危険を伴う場合もあります。みなさんも、テレビや新聞などで、工場の設備に巻き込まれて従業員が怪我をしてしまった…といったニュースを目にしたことがあるのではないでしょうか?
もちろん、人々の生活を下支えする工場は、従業員の安全を守り、安定的な製品の供給をするため、さまざまな安全対策を施した上で稼働しています。しかし、これだけ技術が進化した現在でも、工場での事故は無くなっていないのが現状です。それでは、「作業には危険が伴う」という認識があり、それに対する安全策も施されている工場で、事故が無くならないのはなぜなのでしょうか?この記事では、工場で起こる事故の原因について考えてみたいと思います。

工場事故は人的原因も考えられる!

工場で何らかの事故が発生したと聞けば、「機械や設備に何らかの不具合があったのかな?」と考える方が多いのではないでしょうか。日本国内には、築年数が数十年を経過しているような古い工場が多いのも確かですが、工場の事故はこういった施設・設備の老朽化のみが原因ではありません。

そもそも、さまざまな危険性が考えられる工場は、国や自治体の規制も厳しく、さまざまな法令に従って運営を行わなければいけません。当然、厳しい法令をクリアするためには、施設や設備の老朽化をそのまま放置することはできませんし、各工場は規制や法令をクリアするために施設・設備の更新はきちんと行っているはずです。
それでは、規制や法令に従って運営されているはずの工場で、事故が無くならないのは何が原因なのでしょうか?実は、工場で発生する事故は『人的原因』が大きいとも言われています。以下で、工場事故の原因となる人的原因をご紹介しておきます。

危険回避のノウハウが伝わっていない

工場では、大勢の人が働いています。そして、長い年月をかけて築いてきたノウハウを下の世代に受け継いでいくことが非常に重要です。

近年では、熟練工の高い技術の継承をどうするのか…ということが注目されていますが、下に受け継がなければならないノウハウは製造のための技術だけではありません。上述したように、工場では取り扱う材料や設備など、さまざまな場所に危険が潜んでいるのですが、経験の少ない従業員は「何が危険なのか?」というノウハウを持っていません。つまり、現場で危険と感じることや事故につながる要因などに関しても、人から人へきちんと受け継いでいかなければいけません。

こういった現場での危険性が受け継がれていない場合、「何が危険なのか?」を分からないまま作業を進めることになりますので、安全に工場を稼働させることができなくなり、事故が発生してしまうリスクが高くなります。近年では、製造現場での人材不足解消のため、さまざまな最新テクノロジーが導入され、手作業で行う工程が減少し、工場の危険性が減っているように思えます。しかし、取り扱う材料の危険性などは変わりませんし、安全に作業を行うためのノウハウを受け継いでいく仕組みづくりが重要です。

コスト削減ばかりに注目している…

どのような工場であっても、より多くの利益を上げるために『コスト削減』が永遠のテーマとなっています。例えば、最新設備の導入や、作業効率の向上、生産性の向上など、今も昔も変わらずに常に頭を悩ませる問題となっています。

しかし、こういったコスト削減ばかりに注目した結果、工場事故に発展してしまう…という事例も少なく無いと言われています。コスト削減の中で、工場事故に関連する問題といえば『人員の削減』です。例えば、高い技術が求められる作業について、誰でも簡単に操作が可能な設備を導入することで、人員の削減を目指すという手法はよく耳にします。
こういった場合、作業マニュアルを簡素化すれば、正規雇用を減らし、アルバイトやパートの雇用を増やして工場を稼働させるということも可能になります。しかし、こういったコスト削減方法は、人的原因による工場事故のリスクが高まるというデメリットも潜んでいます。アルバイトやパート雇用の場合、そもそも責任能力が低くなってしまい、伝えられたマニュアル通りの作業を進めるだけになることも多く、想定外の事態が発生してしまえばパニックになり、事故につながってしまう…というリスクが高くなります。

工場では、『コスト削減』の注目度が非常に高いのですが、利益を上げるための対策で「事故発生確率を高めてしまうかも?」という視点を持って、どの部分のコストを削減するのか十分に検討する必要があります。

まとめ

今回は、工場で発生する事故について、工場事故で考えられる『人的原因』についてご紹介してきました。

工場で発生する事故というものは、施設や使用設備の老朽化が原因となり発生するものというイメージがありますが、そもそも危険回避のためのノウハウが下の世代に継承されていない…という場合や、コスト削減による人員削減で、想定外の事態に対処できる人材が減っているなど、工場で働く『人』が原因となって起こる事故も非常に多いと言われています。さまざまな危険が潜む工場などは、厳しい規制をクリアしたうえで稼働していますので、単純な設備の老朽化などで事故が発生してしまう…などということの方が少ないと考えた方が良いでしょう。

工場事故を防ぐためには、どういった点に事故のリスクがあるのかをしっかりと検討し、リスク管理をしていく必要があると考えましょう。