今回は、さまざまな食品を取り扱うことになる食品工場や飲食店に勤務する方がおさえておきたい『洗浄』と『除菌』の基礎知識についてご紹介します。
異物混入や食中毒が絶対にあってはならない食品工場や飲食店などでは、施設内で働く従業員に『洗浄』や『除菌』の重要性を徹底的に教育していることだと思います。しかし、『洗浄』や『除菌』というものは、普段の生活の中でも非常に身近な行いであることから、意外と見落とされがちな間違いも多いと言われています。
そこで今回は、『洗浄』や『除菌』について、しっかりと理解しておきたいポイントをご紹介します。
洗浄と除菌の関係
それでは、食品を取り扱う施設が絶対に抑えておかなければならない『洗浄と除菌の関係』から簡単にご紹介しておきます。
食品工場や飲食店など、何らかの食品を取り扱う施設では『洗浄』と『除菌』が非常に重要になります。そもそも細菌などの微生物は、人間の目では確認できないほど小さく、少しでも付着していると一気に増殖し、食中毒などの食品事故を引き起こしてしまいます。それでは、食品関連施設で重要とされる『洗浄』と『除菌』の目的とはどのようなものなのでしょうか?
まず一つ目の目的としては、食器や調理器具などに付着している食品由来の目に見える汚れを洗い流すこと。そして二つ目は、食器洗剤などを利用して油脂やたんぱく質汚れを洗い流すことです。
これらの汚れが残っていると、有害な細菌や微生物が繁殖するための栄養分となってしまうほか、次に使う食品に色やにおいが移ってしまう危険があります。また、アレルギー成分が付着したままになってしまうと、次の食材に付着してしまいそれを口にした人を危険にさらしてしまう可能性もあるのです。もちろん、目に見える汚れが食器に残っていた場合には、お客様が不快な思いをしてしまうことになり、企業の信用を失ってしまう危険もあるでしょう。
食品工場や飲食店などでは、洗浄後に残った目に見えない微生物を除去する、または人体に害のない程度まで減らすことが『除菌』の目的となります。実は、上で紹介した洗浄だけでは、食器や調理器具などに付着した細菌などの微生物を全て除去することはできないのです。そのため、洗浄後に、洗浄では落としきれなかった微生物に対する除菌が必要になるのです。
このように、食品関連施設においては、洗浄と除菌がお互いをカバーするような密接な関係になっています。
特に見落とされがちな問題として、「後から除菌するから、洗浄はほどほどで良い…」などと言った考えです。上述したように、洗浄だけでは細かい微生物が落としきれないのは確かですが、洗浄と除菌をしっかり理解せずに大量の洗い残しがあるような状態になってしまうと除菌の効果もなくなってしまうのです。
例えば、洗浄が不十分な状態で除菌を行った場合に、残った汚れが微生物と除菌剤の接触を妨害してしまうことになり除菌効果がなくなったり、汚れと除菌剤が反応して除菌力が低下したりすることがあります。つまり、食品関連施設で、食中毒などの食品事故を防ぐためには、正しい『洗浄』と『除菌』の意味を理解しておかなければいけないのです。
除菌のためには正しい洗浄が大切
ここまでの説明で分かるように、食品工場や飲食店などで食中毒などの食品事故を防ぐためには、正しい洗浄を行うことが非常に重要になるのです。
ここでは、正しい洗浄を行うためにおさえておきたいポイントをご紹介します。
汚れに合わせて適切な洗浄剤を選ぶ
洗浄を行う場合には、何らかの洗剤を利用することになると思いますが、洗剤は何でも良いわけではないのです。洗浄後の除菌のことも考えれば、汚れの種類に合わせて、最適な洗剤を選択し洗い残しを防がなければなりません。
参考として、食品工場などでよくある汚れに適した洗浄方法をご紹介します。
- 食品由来の軽い汚れの洗浄
油、たんぱく質、でんぷんなど、食品由来の軽い汚れを洗浄する場合、中性洗剤が効果的です。中性洗剤をつけたブラシやスポンジで、しっかりと擦り洗いを行うことで、洗い残しを防止できるでしょう。 - 油脂などの軽い汚れの洗浄
油分を含んだ汚れに関しては、弱アルカリ性の洗剤が効果的です。まずは、汚れが付着した食器類に洗剤を塗布し、3~5分程度時間を置きましょう。そうすることで油脂汚れが分解されますので、洗い残しを防止できます。 - 油脂やタンパク質などのしつこい汚れの洗浄
頑固な油汚れや、加熱などでこびりついてしまったしつこい汚れの洗浄はアルカリ洗剤が効果的です。特にしつこい汚れに関しては、塩素系除菌剤が配合された強力な塩素系アルカリ洗剤を使用すると良いでしょう。しつこい汚れを落とすには、まず洗剤を塗布し、10~30分程度時間を置き、その後擦り洗いすると良いでしょう。なお、洗浄剤の温度を上げるとより効果的になると言われています。
除菌を効果的に行うためには、上記のようにしっかりと洗い残しが無いように洗浄しなければいけません。ただし、汚れの洗い残しにばかり注目し、洗剤の洗い残しがあっては意味がありませんので、しっかりと濯ぎ洗いにも注意しましょう。
食品関連施設で食品事故を防ぐためには、正しい洗浄と除菌の知識を持ち、決められた手順でしっかりと行うことが重要です。したがって、決められたルールがきちんと守られているのか、定期的にチェックを行うようにしましょう。
まとめ
今回は、食品工場や飲食店など、さまざまな食品を取り扱う施設で、食品事故を防ぐためにおさえておきたい『洗浄』と『除菌』の基礎知識についてご紹介してきました。食品工場や飲食店などであれば、細菌などの微生物に関しては非常に敏感になっていることだと思います。当然、施設内での洗浄や除菌はしっかりと行うように指示していると思いますが、この記事でご紹介したような、洗浄と除菌の関係性などは意外と見落とされがちなのです。
実際に、この記事を見た人の中にも、「後から除菌すれば良いから、洗浄はほどほどで良い…」と考えていた人もいるのではないでしょうか?しかし、この考えは間違っており、正しく洗浄ができていなかった場合、後からしっかりと除菌を行ったとしても、本来除菌剤が持つ効力が発揮できず、細菌などの微生物が残ってしまうリスクがあるのです。上述したように、洗浄と除菌は非常に密接な関係があり、どちらも適切に行えるようにしなければ、食品事故リスクを無くすことはできないと覚えておきましょう。
なお、以下のような調理器具は、特に洗い残しが多くなると言われていますので、注意しましょう。
- 包丁、お玉など、調理器具の柄の付け根部分
- フォークの隙間やスプーンのくぼみ部分
- ざるの網目やボールの縁の裏側部分