私たちの生活に欠かせない技術となった『フリーズドライ』とは?

今回は、現在の私たちの生活を考えた場合、非常に身近で欠かせない技術となっている『フリーズドライ』について簡単にご紹介したいと思います。

皆さんも『フリーズドライ』という言葉を一度は耳にしたことがあると思います。フリーズドライは、一度凍結させた食品を真空状態にし乾燥させる「真空凍結乾燥法」のことで、この手法で加工された食品はお湯や水を注ぐだけで元の食品の状態に戻すことができ、忙しい時でもお手軽においしい料理ができあがるのが大きなメリットです。具体例をご紹介すると、カップ麺やお湯をかけるだけでお味噌汁になる加工食品など、私たちの普段の生活の中でも非常に身近な部分に使われている技術となっています。

この記事では、今や人間の生活に欠かせない技術となっている『フリーズドライ』の基礎知識やメリットを解説していきたいと思います。

フリーズドライのメカニズム

それではまず、フリーズドライがどのような技術なのか?という基礎知識からご紹介しておきましょう。農林水産省のサイトでは、以下のような説明がされています。

フリーズドライ食品は、一度凍結させた食品を真空状態で水分を乾燥させる「真空凍結乾燥法」で加工されたもので、食べる時はお湯や水をそそいで元の食品の状態に戻して利用します。南極探検隊や自衛隊など厳しい環境の中で過ごす人たちの保存食(乾燥野菜)の加工に利用されていましたが、カップ麺の需要の伸びに合わせて飛躍的に発達しました。
特徴としては、「復元性に優れている」「栄養価の損失が少ない」「元の色や味、香りの変化が少ない」「持ち運びに便利」「常温で長期保存が可能」などがあります。
現在は、様々な製品が生産され、健康食品や高級みそ汁、雑炊、デザート、宇宙食などの分野まで拡大しています。多くの食品がフリーズドライ化されていますが、凍結乾燥時に組織が壊れお湯で戻す際にうまく戻らない食品や、糖分が多く凍結しにくい食品はフリーズドライ食品には向かないようです。
引用:農林水産省公式サイト

フリーズドライは、別名で「凍結乾燥」あるいは「冷凍乾燥」などとも呼ばれるのですが、その名前の通り、食品を冷凍した状態で乾燥させるという加工方法です。

フリーズドライの手順

それでは、私たちが普段の生活の中でお世話になっているフリーズドライ食品がどのような手順で作られているのかも簡単にご紹介しておきましょう。

  1. 水分を含んだ状態の食品を-30℃程度で急速に冷凍します。急速に冷凍することによって食品の味や食感を維持することができます。
  2. 減圧し、真空状態にして水分を昇華させて乾燥させます。水は圧力が低い状態では、温度に関わらず気体となるため、食品が凍っている状態で真空状態にすると、食品中の水分が氷から直接気体の水蒸気に変化し、外部へ逃げていくのです。
  3. 上記の手順で、水分が取り除かれて乾燥した状態の食品がフリーズドライ食品です。これにより長期間の保存が可能になります。

通常の状況下では、氷は「氷(固体)→水(液体)→水蒸気(気体)」と変化するのですが、真空状態であれば昇華の現象により「氷(固体)→水蒸気(気体)」と変化するのです。したがって、フリーズドライでは、食品を加熱する必要がないため、食品の色・香り・味の変化をおさえ、栄養価の損失も少なくすることができると言われています。

フリーズドライのメリットと注意点

ここからは、フリーズドライ食品のメリットやいくつかの注意点についてご紹介していきましょう。

フリーズドライのメリット

フリーズドライ食品のメリットとして以下のような事が挙げられます。

  • 常温で長期保存が可能
    フリーズドライにすることで、食品中には水分がほとんど含まれなくなります。したがって、フリーズドライ食品は酵素や微生物の作用を抑制することができ、不用な添加物などなくても品質を落とさず長期保存することが可能になるのです。
  • 高い復元性がある
    フリーズドライ食品は、お湯や水を注ぐだけで、乾燥前のできたてに近い状態に戻すことができるという高い復元性がメリットです。
  • 携帯に便利
    フリーズドライ食品は小型かつ軽量で、非常に輸送性に優れているのも大きなメリットと言われています。上述した「常温での長期保存が可能」という特徴があるため、登山や長期キャンプなどのアウトドア用の装備や、非常食などとしても活躍しています。
  • 味や食感・色彩、栄養価の損失が少ない
    フリーズドライは、上述したように、乾燥時に加熱の工程がありません。そのため、食品の組織や栄養成分の劣化がほとんどありません。

フリーズドライの注意点

フリーズドライ食品は、上述のようなメリットがあるため、手間もなく私たちの食卓に彩を与えてくれるとても便利なものです。常温での長期保存が可能という特徴もあるため、日常生活以外の場面でも活躍するようになっているのですが、いくつかの注意点も指摘されているのです。
ここでは、フリーズドライの注意点もご紹介しておきます。

適切な保管方法を守る必要がある
フリーズドライ食品は、常温下で長期保存が可能とご紹介しましたが、これは適切な包装をし、空気との接触が遮断できている場合に限ります。というのも、フリーズドライを施すと、食品に空洞部分ができてしまうため、表面積が大きくなってしまうのです。表面積が大きくなってしまうということは、適切な包装がなされていない状態では、空気に触れる面積が増え酸化の影響を受けやすくなってしまいます。食品の酸化は、風味や色、匂いの劣化の原因となりますので、包材の研究など保存技術の向上も必要になります。

まとめ

今回は、私たちの日常生活にも非常に身近なものとなっているフリーズドライについてご紹介してきました。フリーズドライ食品は、お湯や水をかけるだけですぐに食べられるようになるという手軽さで、私たちの生活に欠かせないものとなっています。さらに、常温でも長期保存可能なことや栄養価を損なわずに保存できるなどの特徴を持つことから、万一の際に使える非常食としても活躍する技術となっているのです。
しかし、適切な包装でしっかりと空気と遮断しなければ、品質が低下してしまう…リスクがあります。また、食感や色、栄養価の損失が少ないと言われていますが、生野菜のみずみずしい食感をそのまま保存するなどは難しく、食品によっては食感や色などテクスチャーが変化してしまう点は注意点ですが、最近では、医療分野でも使用されるようになるなど、今後もますます欠かせない技術になることでしょう。