昨年から続く新型コロナウイルス問題は、私たちの社会生活に大きな変化をもたらせています。例えば、テレワークや在宅勤務と言った新たな働き方の導入や、web会議ツールの浸透など、国内企業の仕事現場では、さまざまな部分に変化の兆しが見られています。
なかでも、非常に大きな影響を受けているのが飲食業界です。新型コロナウイルスが初めて発見されてから既に1年半以上が経過した現在(2021年8月)でも、一部の都道府県は緊急事態宣言下にあり、飲食店の時短営業や酒類の提供禁止など、飲食店にとって非常に厳しい制限が課せられています。さらに、営業を行う場合でも、飛沫防止パーテーションやCO2モニターの設置など、徹底した感染防止対策を行うことが求められており、売り上げは低下しているのに感染対策用の設備投資が必要になるなど…、本当に厳しい状況に追い込まれています。
新型コロナウイルスのような感染症問題に関しては、「人との接触を減らす」ということが最も重要とされているため、ここにきて、飲食業界での非接触化が一気に注目されるようになっています。店員との接触が少なくなれば、それだけ感染リスクが減らせるということで、安全な食の提供を実現する決め手になるかもしれません。そこでこの記事では、実際に飲食業界で導入され始めている「非接触化事例」をいくつかご紹介します。
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『非接触化』は客からも好印象
新型コロナウイルスの影響で、飲食業界は大きな変化を求められるようになっています。時短営業が当たり前となっている現在では、もともと店内飲食のみで営業していた店舗でも、売り上げを作るためにデリバリーサービスをスタートせざるを得なくなったという声が良く聞こえてきます。実際に、コロナ問題以降、ウーバーイーツや出前館を始めとしたフードデリバリーサービスが一気に広がりをみせ、ここ1年間でこういったサービスを利用したという方は非常に多いのではないでしょうか。
さらに、店内飲食に関しても、「人と人との接触を減らす」ということで、客や従業員の感染リスクを可能な限り減らす対策を行うお店が増えています。もちろん、設備投資にはそれなりのコストがかかってしまいますので、「店内の非接触化が顧客にどういったイメージを与えるのか?」は非常に興味深い事だと思います。
ここでは、株式会社New Innovationsが行ったアンケート調査結果をご紹介しておきます。
非接触化が顧客に安心感を与える
飲食店での非接触化にもさまざまな手法が考えられます。コロナ禍で増加しているのは、自分のスマホでQRコードを読み取れば注文ができるようなシステムであったり、席に設置されたタッチパネルで注文する、自動レジで会計を行うなど、店舗によっては入店から退店するまでに、お店の従業員と一切の会話をしなくても良いようなシステムになっています。これは店舗側にも、店内に配置する従業員の数を減らすことで、その分人件費を大幅に削減することができるなどのメリットがあります。
それでは、こういった非接触化されたシステムは、顧客にどういった印象を与えているのでしょうか?株式会社New Innovationsが行った「飲食物の提供において非接触であることに安心を感じますか?」という質問に対して、以下のような結果になっています。
- とても安心:26.9%
- やや安心:51.2%
- あまり安心ではない:9.3%
- 全く安心ではない:2.5%
- わからない:10.2%
なんとこのアンケート結果では、「とても安心」と「やや安心」が合わせて78.1%と、約8割の顧客が安心感を得られていると答えています。
参考データ:飲食体験に関するアンケート
飲食店での非接触化事例
それでは、実際に導入が始まっている飲食店での非接触化事例をご紹介していきましょう。「飲食店での非接触化」と聞くと、『PayPay(ペイペイ)』などのQRコード決済や交通系ICカードを利用した非接触IC決済など、会計時の接触を無くすものをイメージする方が多いのですが、飲食店での非接触化はこの程度ではありません。ここでは回転寿司チェーン『スシロー』の非接触化に関するいくつかの取り組み事例をご紹介します。
スシローの非接触化
まずは、スシローの非接触化をご紹介しておきましょう。コロナ禍以後にスシローに行ったことがある人であれば、「感染症対策のためにここまでの非接触化をしているのか!?」と驚いたかもしれません。しかし実は、スシローの非接触化に関しては新型コロナウイルス対策として導入されたわけではなく、創業者の理念である『おいしくて安い』を実現するため、ムダをそぎおとした結果、非接触化に行き着いたそうです。
スシローでは、来店客が専用システムで受付を行う自動案内システムが導入されており、店員と接触することなく席に案内してもらうことができます。スマートホンアプリなどで事前予約しておけば、待ち時間なども発生しにくく、待合室に不特定多数の人が集まることもありません。さらに、セルフレジが導入されており、座席で渡された会計札(QRコード)をかざすと、レジスタッフと対面することなく会計を済ませることができるようになっています。
テレビのワイドショーなどでも「一度も店員と接触しない店舗」と取り上げられ話題となりました。なお、上述したように、こういった対策は、感染予防が目的ではなく、もともと効率化・省人化を目指していた結果、それが感染症対策になっていたとのことです。
参考:スシローの安全対策
スシローはテイクアウトも非接触化
さらにテイクアウトの場合は「自動土産ロッカー」を導入することで受け渡しも非接触化されています。インターネット、電話、FAXなどで注文を行い、来店時間の指定を行っておけば、ロッカーに商品が入れられており、店舗スタッフと対面することなく商品の受け取りができるという仕組みです。また、セルフレジを利用することで、人との接触もなく会計を済ませることができます。
他社でもスマホを使った注文システムが増加
最近では、テーブルなどにQRコードを設置しておき、顧客がそれを読み取ることで、それぞれのスマホから注文ができるようなシステムを導入する店舗が増えています。各テーブルにタッチパネルを設置するシステムはコロナ過以前から見受けられますが、この方法の場合、システム導入のための初期コストが高くなりますし、不特定多数の人が触れる端末になるため「逆に衛生的にどうなの?」と考えてしまう方もいるでしょう。
しかし、各個人のスマホから注文ができるシステムであれば、端末代などの初期コストを抑えられ、より安心感を与えられるということからも、導入する店舗が増えているようです。
> 参考のシステム「SmartMenu」
まとめ
今回は、コロナ禍の現在、飲食店で進む非接触化対策についてご紹介してきました。新型コロナウイルスなどの感染症は、人との接触を減らすということが重要とされているため、飲食店などでも店舗スタッフと対面する機会を可能な限り減らすためのシステムが考案されるようになっています。
スシローなどは、非常に早い段階から非接触化が行われていたというイメージがあると思いますが、これはあくまでも「安く提供する」ための省人化・効率化をどんどん推し進めていたところ、新型コロナウイルス問題の登場により、感染症対策の観点からも注目を集めました。
今後も、さらに快適に非接触化を実現する新しい技術が登場すると考えられます。最新動向は逐一チェックしておきましょう。