再注目されているサプライチェーンマネジメント(SCM)とは?今、注目される背景や導入のメリットについて

近年では、EC市場の拡大に伴い「B to C」を中心とした物流需要が急拡大していることから、物流業界では人的・物的インフラ共にひっ迫していると言われています。そこで、「製品を製造し、エンドユーザーの手元に届くまでのプロセス」を、さらに効率化させるメソッドとして『サプライチェーンマネジメント(SCM)』が再注目されるようになっています。

サプライチェーンマネジメントは、「全体最適」を目指す経営管理手法として2000年頃に一大ブームを起こしたという歴史があります。それでは、このサプライチェーンマネジメントが、再び注目されるようになってきなのなぜでしょうか?
この記事では、現在、再注目を浴びていると言われているサプライチェーンマネジメントの基礎知識や、再注目されるようになってきた背景について考えてみたいと思います。

サプライチェーンマネジメント(SCM)とは?

それではまず、『サプライチェーンマネジメント(SCM)』の基礎知識から簡単に解説していきましょう。そもそも「サプライチェーン」とは、製造現場での原材料の調達から、実際に製品が製造され、それが消費者の手元に届くまでの「生産・流通プロセス」のことを指しています。具体的には、「製品の原材料・部品の調達⇒製造⇒物流・流通⇒販売・消費」まで、全体の一連の流れのことを指しており、日本語に直訳すると「供給連鎖」になると言われています。

物流業界では、『ロジスティクス』と呼ばれる用語も良く耳にするようになっていますが、これはもともと軍隊用語であり、「前線によりスピーディーに物資を届けるため」のマネジメントプロセスを指しています。企業活動においては、「原材料の調達・製造・販売・物流」と言ったプロセスの最適化を目指すものとされています。
こう聞くと、サプライチェーンマネジメントとロジスティクスは非常に似通っていると思えますが、ロジスティクスが社内に閉じているのに対し、サプライチェーンマネジメントは企業間の垣根を超えて、取引先企業も含めて一つの組織として捉え、業務プロセス上のあらゆる情報を管理しコスト削減や納期短縮などを目的とすると言う点が大きく異なります。
ちなみに、米国のサプライチェーンカウンシルでは、以下のように定義されています。

「価値提供活動の初めから終わりまで、つまり原材料の供給者から最終需要者に至る全過程の個々の業務プロセスを、一つのビジネスプロセスとしてとらえ直し、企業や組織の壁を越えてプロセスの全体最適化を継続的に行い、製品・サービスの顧客付加価値を高め、企業に高収益をもたらす戦略的な経営管理手法」
引用:Wikipedia

サプライチェーンマネジメントは、サプライヤーやメーカー、物流に小売りなど、それぞれの関係性を1つ1つ最適化するのではなく、サプライチェーン全体として最適化を図るものとなります。

サプライチェーンマネジメントが再注目される背景

それでは、近年、多くの企業でサプライチェーンマネジメント(SCM)の構築・再構築が進んでいる背景に何があるのかについても考えてみましょう。この背景には、大きく以下の3つが考えられると言われています。

  1. グローバル化
  2. 労働環境の変化(人材不足など)
  3. 流通市場の変化

それぞれの理由について、以下でもう少し詳しくご紹介しておきます。

グローバル化について

一昔前までのように、サプライヤーも生産拠点もパートナーも全て国内にあるという時代であれば、マネジメントが多少適当になってもビジネスとしては回っていくと考えられました。しかし、どんどんグローバル化が進む現在では、生産、調達、販売などをめぐる世界規模のネットワークが張りめぐらされるようになっています。
したがって、国内外にまたがるサプライチェーンについて、一元的なプロセスでマネジメントしていかなければ、熾烈を極める企業間競争に後れを取ってしまう…と考えられるようになり、サプライチェーンマネジメントが再注目されるようになったと言われています。

労働環境の変化(人材不足など)

少子高齢化などの影響で、労働人口の減少による人手・人材不足がさまざまな業界で深刻化しています。
こういった状況の中、EC市場は年々拡大しており、個人向けの配送需要の増加などから、物流の配達員(トラックドライバーなど)の不足が問題視されるようになっています。ここ数年では、配送需要はあるものの、トラックドライバーが確保できずに倒産してしまう企業があるほどです。
そこで、各企業はより効率的な物流の在り方が求められるようになり、サプライチェーンマネジメントによる、無駄の排除、仕入れ量の適正化、配達タイミングの最適化などを実現しなければ、物流の未来が暗いと考えられるようになっているわけです。

流通市場の変化

EC事業者など、『BtoC』事業者は、日々目まぐるしく変わる消費トレンドの中で、欠品と過剰在庫の極小化に躍起になっていると言われています。特に、amazonなどのように、販売と配送が一体化したビジネスモデルの台頭が著しく、現在のビジネスでは販売と配送が切っても切り離せない時代となっているわけです。
したがって、事業者側は、販売と物流の一元管理強化を求めるようになっており、サプライチェーンマネジメントによる総合的な管理体制構築が強く求められていると言われています。

サプライチェーンマネジメント導入のメリット

それでは最後に、サプライチェーンマネジメントを導入することで、どういったメリットが考えられるのかも簡単にご紹介しておきましょう。

  • 情報の一元化
    サプライチェーンマネジメントの導入による情報の一元化ができれば、属人的業務の排除につながり、適切な人材配置を促進できると言われています。
  • 在庫管理の最適化
    「材料の仕入れ⇒販売」まで、サプライチェーン全体をつなぐことで、非常に高い精度で在庫を予測できるようになります。その結果として、在庫の回転率向上、キャッシュフローの改善など、さまざまなメリットが得られるでしょう。
  • コスト削減
    サプライチェーンマネジメントは、各企業間のひずみやボトルネックを可視化し、それを最適化することで無駄を排除することが可能になり、コストカットの実現が期待できます。

まとめ

今回は、近年再注目されていると言われるサプライチェーンマネジメントの基礎知識についてご紹介してきました。製造拠点のグローバル化や、EC市場の拡大によって多品種少量生産の注文などが多頻度化している中、製造業や物流業は大きな変革が求められるようになっています。

さまざまなデータの可視化や一元管理ができるようになることは、企業にとって非常に大きなメリットになるのだと考えられます。大企業の中には、独自のシステムを構築して、サプライチェーン全体で連携しているケースが多くなってきています。もちろん、中小企業でも関連会社と協力し、スピーディな情報共有やデータ交換が可能なネットワークの構築を目指す動きが増加していると言われています。