ロボットの導入で解消できると期待される工場の課題とは?

今回は、ロボットによる自動化で、解消できると期待される製造現場の課題について考えてみたいと思います。

一般家庭などにも導入が始まっているロボットですが、工場や倉庫などでは、現場が抱えるさまざまな課題を解決できる技術として、年々その注目度が高くなっています。例えば、さまざまな製品を製造する工場などでは「生産性の向上」が永遠のテーマになるのですが、生産性の向上を実現するためにはさまざまな課題を解決しなければいけません。また、製造現場では、深刻な人手不足が社会問題になっており、生産性向上の前に労働力をどのようにして確保するのか…といった根本的な問題も表面化しているのです。

ロボットによる自動化は、このような製造現場が抱えるさまざまな課題を解決する救世主のような扱いを受けるようになっています。しかし、工場によって取り扱う製品は異なりますし、それぞれの施設が抱えている課題も千差万別で、ロボットを導入すれば全ての課題が解消できるわけではないのです。
そこでこの記事では、製造現場へのロボットの導入で「どのような課題解決が可能なのか?」ということをご紹介します。

製造現場が抱える課題とその解決策

それでは、ロボットによる自動化で解消が期待できると言われている代表的な製造現場の課題をいくつかご紹介していきましょう。

課題① 人間にとって危険または過酷な作業環境が存在する

工場などの製造現場の仕事は、『3K』というイメージを持っている方が多いことでしょう。3Kとは「きつい」「汚い」「危険」の頭文字をとったもので、工場の仕事は「とにかくしんどい…」というイメージが根強いことから、若者に敬遠される仕事にもなっているのです。この3Kというイメージは、製造業の『人材不足』に深くかかわっていることですので、なんとしても解消したい課題と考えている企業は多いと思います。

実際に、さまざまな製品を製造する工場の作業環境を考えた場合、取扱製品の関係で空調設備が使用できないため室内温度が高かったり、高所での作業が必要とされる場合もあるなど、作業員にとって危険を伴う…という場面も多いのです。企業側からすれば、危険な作業を行わせる場合には、人の安全を確保するための対策が必要になるため、安全対策のために多大なコストがかかるのも悩みの種になっていることでしょう。他にも、高温下での作業の場合、作業員の健康を考えて頻繁に休憩を入れる必要があるなど、生産効率の面でも、あまり好ましくありません。
こういった製造現場特有の『3K』に関しては、ロボットが救世主になるのです。

ロボットによる課題解決
製造現場で勤務する人間にとって「危険」「過酷」な作業に関しては、ロボットの導入による自動化で解決することが可能です。ロボットは、高温で過酷な作業現場だとしても、何の問題もなく継続的に稼働することができます。したがって、人間が働くときのように、頻繁な休憩なども必要なく、生産性の向上も期待できるでしょう。また、安全対策のためにかけるコストも必要なくなります。
ロボットの導入による自動化を実現した場合、過酷な作業はロボットに任せ、人はロボットのメンテナンスなどの作業に従事することになります。実は、これも製造現場にとっては非常に大きなメリットで、過酷な作業環境の改善が実現するということは、新しい若手人材確保のための手段としても有効なのです。

課題② 熟練工の技術継承

製造業界で特に不足していると言われているのは、高い技術を持った熟練工です。上述したように、製造業界のイメージから新たな人材の確保に苦戦している工場などでは、熟練工が培った技術をどのようにして継承していくのか…という課題が表面化しているのです。当然、高品質な製品の生産には熟練工の技術が必要になるのですが、高齢化による熟練工の退職や、若手の育成が間に合っていない…という企業も多いのです。

熟練工が長い年月をかけて磨いてきた技術というのは、若手人材を確保して教えればすぐにできるようになるというものでもありません。作業工程やマニュアルなどをしっかりと教えたとしても、若手が熟練工と同じ水準の作業ができるようになるためには長い時間がかかってしまうのです。特に最近では、技術を継承させるための人材確保すらままならない…という話も良く耳にし、非常に深刻な課題と言えるのです。

ロボットによる課題解決
一昔前までは、熟練工の繊細な作業はロボットでは再現できない…と考えられてきました。しかし近年では、ロボットの性能が飛躍的に向上し、単純作業だけでなくかなり繊細な作業も問題なくこなすロボットが登場しています。例えば、金属やプラスチックのパーツを扱う工場で求められる仕事に「バリ取り」というものがあります。バリ取りは、製品本体を傷つけず、かつ正確にバリ部分を取り除く必要があり、バリの大きさや形状が製品ごとに異なるため、自動化が難しい作業とされていました。しかし現在では、バリ取りロボットが登場し、これを導入する工場も増加していると言われています。バリ取りロボットの導入で、熟練工が15分かけていた作業が30秒程度まで短縮できたというケースもあるそうです。
最近では、伝統工芸の職人技をデータ化し、ロボットに継承させる試みもスタートしており、今やロボットにできない作業の方が少なくなっていると言われているのです。

課題③ 長時間労働

ロボットによる自動化は、工場などの製造現場における長時間労働の課題も解決できます。

製造現場では、長時間の単調な作業を強いられるということが当たり前ですが、人は単調な作業を長時間行うと、集中力が低下してしまい、人為的ミスのリスクが高くなってしまうのです。集中力の低下は、作業効率の低下も招いてしまいますし、長い時間作業を行ったとしても、逆に生産性は低下してしまう…なんて状態となる危険もあります。

ロボットによる課題解決
ロボットによる自動化は、長時間の単調な作業でも生産効率を落とすことが無いという点や、人間に関しても最も生産性の高い作業が行えるようになるというメリットが存在します。ロボットにとって、単調な作業というのは最も得意とする部分でもありますので、どれだけ長時間稼働させたとしても、ミスの心配がありません。したがって、単調な生産業務の自動化はミスの減少と生産性の向上、両方が期待できるのです。
人間にとっても、よりレベルの高い作業に従事できるようになるため、キャリアアップも目指しやすくなるでしょう。

まとめ

今回はロボットの導入による自動化で、製造現場のどのような課題が解消できるのか?ということについてご紹介しました。もちろん、製造する製品はさまざまなものがありますので、工場によって抱えている課題は異なると思います。しかしこの記事でご紹介したような、人材不足の解消や生産性の向上については全ての製造現場が望んでいることでしょう。

一昔前までのロボットであれば、「できる作業」も限られていたのですが、ロボットの性能は飛躍的に向上しており、現在では「できない作業」の方が少なくなっていると言われています。まずは、自社が抱える課題がどのようなものなのかをしっかりと分析し、それを解決に導くことができるロボットがあるのかを探してみることから始めましょう。