物流業界でも広がるSNSの活用とその方法とは?

FacebookやTwitter、LINEにInstagramなど、今や私たちの日常生活はSNSなしには語れないほど根付いていると言っても過言ではないでしょう。特に30代ぐらいまでの若者世代であれば、複数のSNSにアカウントを作っており、情報の発信だけでなく、最新情報の取得もSNS上で行っているという方が多くなっています。

こういった状況もあり、現在では、さまざまな業界の企業が積極的にSNSを活用したマーケティングを行うようになっており、美容業界や通販業界などになると、SNSでの広告展開が企業の売り上げを左右するような時代になっています。それでは、物流業界でのSNS活用についてはどうでしょうか?

正直な話、「物流業界とSNSはあまり関係性が無いのでは…」とイメージしてしまう方が多いと思います。しかし、ここにきてユーザーの利便性を向上させる目的や、採用活動などにSNSを積極的に利用する物流企業が多くなっていると言われています。そこでこの記事では、一般の方からすれば、活用方法があまりないと考えられがちな物流業界でのSNSについて、実際にどのように活用され始めているのかを解説していきます。

採用活動にSNSを利用する物流企業が増加

企業のSNS活用において、最もイメージしやすいのが採用活動でしょう。現在では、多くの企業が自社のPRや採用活動を目的としてSNSの活用を始めています。

これは、上述したように、若手世代であれば、ほとんどの人がSNSを利用しており、さらに情報の取得もSNSからと言う方が多くなっているためです。そして、物流業界でも、採用活動にSNSを利用する企業が急増しています。と言うのも、現在物流業界が抱える大きな課題として、トラックドライバーなどの高齢化があるからです。
実は、厚生労働省『賃金構造基本統計調査』によると、令和2年度のトラックドライバーの平均年齢は、中小型トラックで46.4歳、大型トラックで49.4歳と、いずれも全産業平均の43.2歳を大きく上回る結果となっており、今後も平均年齢は上がり続けると予想されています。特に大型トラック運転手については、平成27年時点の調査で、40歳以上のドライバーが8割近くを占めているなど、深刻な高齢化が進んでいるわけです。

そこで、物流企業の中には、運送業界に若手人材を呼び込むため、SNSを活用した採用活動を積極的に行う企業が増加しており、採用応募数を増やしている企業が登場していると言われます。

参考資料:国土交通省「物流を取り巻く現状について
参考:物流ニュース「SNS中心の求人 トラックYouTuberも在籍

採用活動以外のSNS活用について

採用活動へのSNS活用は、「若手人材の多くがSNSを利用している」という背景があることから、当然の対策だと考えられるでしょう。そして近年では、採用活動や企業PRだけでなく、ユーザーの利便性向上や配達員の負担軽減などを目的としたSNSの活用方法が登場してきています。

ここでは、物流業界ではじまっている、効果的なSNS活用事例をいくつかピックアップしてご紹介していきます。

SNS活用で再配達関連業務の円滑化

EC市場の拡大に伴い、物流業界の大きな悩みの種となっているのが再配達の増加です。近年のインターネットを利用した通信販売の伸びとともに宅配便の取扱個数は急伸しており、国土交通省の調査によると2013年度から2017年度の5年間を見ても、この期間だけで取扱個数が約6.1億個も急伸しています。そして、荷物の配送を行う配達員の大きな負担となっているのが、不在による再配達です。

コロナ問題が表面化する以前は、なんと取り扱い荷物の約2割が不在による再配達扱いとなっていたとされ、配達員の労働環境悪化の大きな要因となっています。なお、直近の再配達率に関しては、以下のような結果になっています。

引用:国土交通省「宅配便の再配達率サンプル調査

コロナ禍の現在、感染拡大防止などを目的に、人々の在宅時間が長くなっていると言われています。ただ、在宅時間が長くなっている現在でも1割以上の荷物は再配達となっているというのが現状です。さらに、緊急事態宣言下と比較した場合、2021年4月度の再配達率は、再び増加に転じているなど、国土交通省が「総合物流施策大綱」において掲げている、宅配便の再配達率の削減目標(2020年度10%程度→2025年度7.5%程度)の達成には程遠い状況と言えます。

こういった状況の中、大手宅配業者であるヤマト運輸では、SNSを活用した「再配達関連業務の円滑化」をスタートしています。ヤマト運輸では、SNS大手のLINEと提携し、荷物を届けた際に、不在で受け取り手がいなかった場合、LINEにて顧客に「不在通知」を連絡するというシステムを導入しています。そして、LINEで不在通知を受け取った顧客は、そのままLINE利用して再配達依頼が可能になり、従来の再配達依頼を大幅に簡易化できることから、ユーザーの利便性まで高めることができています。

ヤマト運輸のLINE活用については、再配達以外にも、受け取り場所の指定や配達状況の確認などがSNS上で出来るようになっていますので、公式サイトから詳細を確認しておきましょう。

> ヤマト運輸のLINE宅配の詳細

動画を活用したブランドイメージの向上

ここ数年、物流業界でのSNS活用では、youtubeなどにおいて、動画を活用してブランドイメージの向上を目指すという事例が目立っています。皆さんも、近年、物流企業が自社のイメージ向上を目的とした動画を作成しているという実感があるのではないでしょうか?

これについては、筆者の想像になるのですが、若手世代に対して物流業界そのもののイメージが悪くなっているという考えから、業界そのもののイメージ向上を目指し、採用に繋げていくという意識があるのではないかと考えられます。上述したように、現在の物流業界は、EC市場の急伸の影響を受け、年々取り扱う荷物の量が増加し続けています。ただし、再配達などの増加やドライバー不足などと言った業界全体の問題から、労働環境は年々悪化していると言われています。そのため、就活を行う若手人材からは「物流業界の仕事はきつい、過酷…」と言ったイメージが定着してしまい、若手人材の採用に苦戦しているわけです。

一方、物流業界の中身を見てみると、積極的な自動化やロボット化、IT技術の導入が行われており、一昔前までの物流業界とは全く異なる労働環境になっている企業も多くなっています。さらに、ドライバーの労働環境改善のための法整備が進んでいるなど、一般の方が持っているイメージとはかなりかけ離れた改革が進んでいるのも事実です。
そこで、物流業界各社は、業界特有の悪いイメージを払しょくする目的で、積極的にブランドイメージ向上のための動画展開をスタートしているのだと思います。以下に、参考として、物流各社が公開している動画をいくつかピックアップしておきますので、ぜひ確認してみてください。

このように、外から見ているだけではなかなか分からない物流業界の中身や福利厚生、やりがいなどをアピールし、業界全体のイメージ向上を目指すような動画展開が行われています。

まとめ

今回は、物流業界でも取り組まれ始めたSNSの活用について、どのような場面でSNSが利用されているのかをご紹介してきました。物流業界と聞くと、SNSなどとは少し遠い業界で、あまりSNSを積極活用するような業界ではないというイメージの方が多いかもしれません。

しかし、人手不足や従業員の高齢化が深刻化している物流業界こそ、若手人材の獲得のため、積極的なSNS活用が必要と考えられはじめ、実際にここ数年、採用活動にSNSを利用する企業が増加しています。もちろん、まだまだSNSの使い方すら分からない…という物流企業も多いと思いますので、まずは同業他社がどういった対策に取り組んでいるのかを知るところからスタートしてみてはいかがでしょう。