内定辞退が起こる理由は?内定辞退を防止するためにすべきこととは?

近年、日本国内では少子高齢化などの影響もあり、労働力不足が深刻な社会問題となっています。企業の存続を考えた場合、毎年どれだけ優秀な人材を確保できるのか?ということは、非常に重要な課題となるでしょうし、思うような採用活動ができなければ、事業の現状維持すら難しくなっていくことでしょう。実際に、最近では中小企業の『人手不足倒産』が増加しており、東京商工リサーチによると、2018年度の人手不足関連倒産は400件に上り、前年度比で考えると28.6%も増加していたと発表されています。

このような状況の中、就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアが、学生の内定辞退率を予測して企業に販売していたということが非常に大きな問題となっています。企業からすれば、多額のコストをかけて新卒採用活動を行うのですから、せっかく内定を出した学生たちに『内定辞退』されてしまうと、かけたコストが無駄になって困ってしまうわけです。そのため、この内定辞退率を予測したデータを、そうそうたる大企業が購入していたという事実がわかり、衝撃のニュースとして話題となっています。もちろん、学生側からすれば、自分の同意もなしに勝手に内定辞退予測をされ、それが採用に不利益を与えてしまっていたのだとすれば、許せることではないでしょう。就職活動は、その人の将来を左右しかねない人生の大きなポイントとなるため、こういった手法はやはり望ましくないと筆者も考えます。

それでは、企業が採用した人材の『内定辞退』を防ぐにはどうすれば良いのでしょうか?それにはまず、「なぜ内定辞退が起こってしまうのか?」を考え、それに関する対策を進めるべきでしょう。ここでは、一般的に多いと言われる内定辞退の理由と、その対策をご紹介します。

内定辞退が起こってしまう理由は?

『内定辞退』とは、採用選考を経て企業から受け取った内定を辞退することを指しています。企業が行う採用活動は、書類選考に始まり、複数回の面接などを経てやっと内定にたどり着くなど、学生も企業側も時間とコストをかけて行うものです。しかし、さまざまな課程を経てやっともらえる内定なのですが、一定数の内定辞退が発生してしまうものなのです。これは、企業にとっても学生にとっても残念な結果に思えるのですが、必ずといって良いほど内定辞退が出てしまうのはなぜなのでしょうか?

内定をもらった企業が第一志望ではなかった

近年の就職活動は『売り手市場』などと言われるように、どちらかというと学生側に有利な状況となっています。学生が就職活動を行う時には、数十社の採用試験を受けることも珍しくなく、同じ業界だけで考えても第一志望~第五志望ぐらいまでの希望を決めて応募するのが普通です。
したがって、早くに内定をもらっていたとしても、後から第一志望の企業から内定が出てしまった場合には、先に出ていた内定を辞退する可能性が高くなるのです。複数の企業の採用試験を受けている…公務員試験を受けている…といった場合でも、面接時にはそれを正直に言ってしまうと「内定がもらえないのでは…?」と考えて、企業には隠している例も多くあります。

採用試験で企業に悪い印象を抱いた

近年の就職活動は、学生側が企業を選ぶという側面が強くなっています。そのため、選考時の面接などで、面接官や人事担当の態度に悪い印象を持った、訪問したオフィスの雰囲気で悪い印象を受けた…などを理由に内定を辞退する人もいるようです。
さらに、内定が出た後、インターネットで企業の情報を調べてみると、悪い評判がたくさん出ていた…と言った理由でも、悪印象を抱き、内定辞退につながるケースもあるようです。

他の内定者に馴染めない…

内定後には、内定者研修や内定承諾書を書く機会が設けられているなど、入社後に一緒に働くこととなる他の内定者と親しくなる機会が作られます。しかし、こういった機会が逆に「他の内定者と馴染めない…」「一緒にやっていけないのでは…」という不安を与え、内定辞退につながるケースがあるようです。
すでに社会人として働いている人からすれば、「そんな子供みたいな理由で内定辞退なんかする?」と疑問に感じてしまう人も多いのでしょうが、まだ実際の社内の様子が分からない学生にとっては、他の内定者との状況が、社内の人間関係の縮図のように思えてしまうわけです。

時間経過とともに考えが変わった…

新卒採用の場合、内定が出ればすぐに働き始めるわけでなく、実際に入社するまで数ケ月間の期間が空いてしまいます。そのため、その空白期間中に、いろいろと考えてしまい、就職への意識が薄れてしまったり、他の体験をしたことにより別の業界に興味を持ってしなうなどの可能性があるのです。

内定辞退を防止するための対策は?

それでは、内定辞退を防止するためにはどうすれば良いのでしょうか?もちろん、何らかの対策を行えば、「絶対に内定辞退を防げる!」という訳ではありませんが、何の対策も行わない状態よりは確実に内定辞退が起きてしまう確率は下がるはずです。
ここでは、内定辞退防止に有効と言われるいくつかの手法をご紹介します。

歓迎の姿勢を見せる…

意外と重要なのが、企業として『学生を歓迎している』という姿勢を見せることです。新卒採用を行う場合には、複数の課程を経るものですが、淡々と採用活動のフローを進めるのではなく、きちんと自社の採用試験を受けに来てくれている学生を歓迎していることを伝えるのは重要です。どういった学生にしても、実際の会社の雰囲気などはつかめていませんし、漠然とした不安を抱えているはずです。したがって、会社が目指しているビジョンや仕事のやりがいなど、少しでも学生の不安を払拭できるような情報を真摯に提供する必要があるでしょう。

不安は早めに解消する…

近年の就職活動では、企業の福利厚生を重視するという学生が非常に多いと言われています。特に、女性の方であれば、出産や育児後も仕事が続けられるか…企業として育児のサポートはあるのか…などと言った不安を抱えている人は多いことでしょう。したがって、学生が実際に抱えていそうな不安はできるだけ早めに解消してあげることが重要です。
例えば、女子学生の場合であれば、実際に現場で活躍している女性社員と話す機会を設ける、勤務地や転勤に不安を感じている学生には、転勤を経験したことがある社員と話す機会を設けるなどの対策が考えられます。こういった就職活動時の不安を的確に把握し、早めに対処してあげることで、学生側は安心することができますし、また社員を大切にしてくれる企業だという印象を与えることができるでしょう。
最近では、SNSを利用して、内定者と連絡を密にとり、学生の不安を早めにヒアリングできるようにする…などの対策をとる企業が登場しています。

内定者にプレッシャーを与えすぎない…

企業によっては、内定者向けにインターンシップや、入社までの課題を与えるところがあるでしょう。しかし、学生側からすると、どういった意図で行われる課題かが分からなければ、プレッシャーに感じてしまい入社を不安に思うようになってしまうことがあります。
企業からすれば、インターンシップはあくまでも「入社後にスムーズに馴染んでもらうための機会」として設けているのかもしれませんが、学生にそれが理解できていなければ意味がありません。したがって、インターンシップなどで内定者を迎える場合には、どういった意図で行うのかを現場にもきちんと認識させ、学生の育成を優先させる体制を作っておくのが重要です。内定者にも、失敗を恐れるのではなく積極的にチャレンジすれば良いことをメッセージとして伝えておくと良いでしょう。なお、内定者課題に関しては、その良し悪しの評価を過度に行うのは避けた方が良いでしょう。

まとめ

今回は、企業の採用活動について、内定辞退者が出てしまう原因やその対策についてご紹介しました。冒頭でもご紹介したように、日本国内では労働力不足が深刻化しており、さまざまな業界で採用活動が激化しています。学生側からすれば、より条件の良い企業に入社したいと考えるのは当たり前のことですから、内定辞退者が一定数出てしまうのは致し方ないことかもしれません。しかし、「内定辞退は出てしまうものだ…」と考え、何の対策も行わなければ、今後さらに人材不足が深刻化すると予測される日本では、困ったことになりかねません。

まずは、自社の魅力をできるだけ正確に学生に伝える、また、学生を本当に歓迎しているのだということを伝えるような対策から行ってみてはいかがでしょうか。