自動運転にはレベルがあるって知っていますか?自動運転の定義をご紹介します。

最近、テレビなどの大手メディアでも『自動運転』という言葉を頻繁に耳にするようになってきました。言葉だけ聞けば、自動車の運転をAIなどが行ってくれ、人間は座席に座っているだけで目的地に到着するなど、映画の中の世界をイメージしている人が多いのではないでしょうか?
しかし、実際には一口に自動運転と言っても、そこにはレベルが存在しており、そのレベルによって想定されている内容が全く異なるのです。そこでこの記事では、自動運転に設定されている各レベルによる違いについてご紹介していきたいと思います。

自動運転の基礎知識

自動運転の到達点は、目的地さえ設定しておけば、人間の運転者がいなくても、自動車自らが安全に目的地まで運転していくというものでしょう。このような技術が完全に運用できるようになれば、トラックドライバー不足にあえぐ物流業界では、まさに救世主と言える技術になるでしょう。
それでは、そもそも『自動運転』の定義とはどのようなものになっているのでしょうか?日本における自動運転の定義は、日本政府が決めたものを採用しているのではなく、アメリカの非営利団体「SAE International」が策定したものを採用しています。SAEは、J3016という文書の中で「自動運転」の定義を紹介しており、その中で「誰がどの操作を行うのか?」ということによって、自動運転のレベルを0~5までの6段階に分けているのです。
そしてこのレベルの中でも、『自動運転』と認められるのはレベル3以上のものと定義しており、それ未満のレベル1やレベル2に関しては『運転支援』と明確に区別しているのです。このような区別は、消費者に自動運転に関する誤解を与えないためだと言われています。
ちなみに、J3016に興味がある方は技術内容を変更することなしに翻訳されたテクニカルペーパーがありますので、そちらで確認してみましょう。

参考資料:公益社団法人自動車技術会「自動車用運転自動化システムのレベル分類及び定義

SAEについて
SAE Internationalは、『Society of Automotive Engineers』の略で、1905年に設立された団体が母体となっており、あらゆる乗り物の標準化機構です。

自動運転のレベルによる違い

それでは6段階に分類されているレベル別の内容を見ていきましょう。

レベル0 ドライバーが全ての操作を行う

まずはレベル『0』の定義です。これに関しては自動運転でも運転支援でもなく、運転に必要になるタスク全てをドライバー自身が実施する場合のことです。
つまり、現在街中を普通に走行している自動車の多くがレベル0に当たります。

レベル1 ステアリング操作、加減速どちらかのサポートを行う

レベル1は上述したように、自動運転ではなく運転支援に当たるものです。ドライバーが自動車の運転を行う時、以下のような支援を行う自動車はレベル1に該当します。

  • 自動車が車線を逸脱しそうなことを検知し、ステアリングを補正する
  • 先行車との車間距離を一定に保つため、自動でスピードの調整を行うACC
上記のように、自動車に搭載されているシステムが、ステアリングの補正や、スピードの調整どちらかをサポートし、ドライバーがもう一方をコントロールする技術が搭載された自動車です。

ACCとは
ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)は高速道路などの長距離移動の時に、あらかじめ設定した車速内でクルマが自動的に加減速の支援を行います。前走車との車間距離を維持しながら追従走行を支援することで、ドライバーの運転負荷を軽減する機能です。
引用:HONDA公式サイトより

レベル2 ステアリング操作、加減速どちらもサポートする

次はレベル2です。レベル2に関しても自動運転ではなく、運転支援に分類されます。レベル1のものより、自動車に搭載されたシステムが支援する内容が多くなります。

  • 自動車が車線を逸脱しそうなことを検知し、ステアリングを補正する
  • 先行車との車間距離を一定に保つため、自動でスピードの調整を行うACC
レベル2の場合は、上記のステアリング補正やスピード調整をどちらもサポートする技術が搭載された自動車となります。上述のように、これも「運転支援」技術となるのですが、最近では便宜上「自動運転レベル2」などと呼ばれる場合があります。
最近の自動車にはこういった技術が搭載されているものが多いです。

レベル3 特定の場所でシステムが全て操作、緊急時は運転者が操作

いよいよレベル3からは自動運転と呼ばれるものになります。

レベル3は、高速道路など、特定の状況下においてはシステムが交通状況などを認知し、運転に必要な操作を全て担うものです。ただし、緊急時やシステムが作動困難な時にはドライバーが対応を行うことを想定しています。
なお、日本国内ではレベル3に該当する自動運転が許可されていないため、市販車でこの機能を持っている自動車は販売されていません。ドイツでは、「Audi A8」が世界初となるレベル3の自動運転を搭載していますが、日本では運転できないため販売未定です。

レベル4 特定の場所でシステムが全て操作

高速道路など、特定の場所に限り、システムが交通状況などを認知して運転に関わる操作全てを担います。レベル3との違いは、緊急時の対応などもシステム側で行うという点です。
このレベルになると、世界中どのメーカーにおいても市販段階の開発まで至っておらず、コンセプトカーやテスト走行の段階です。

レベル5 場所の限定などもなく全てシステムが操作する

最後はレベル5です。これは、場所の制限などなく、システムが交通状況などを認知し、運転に関わる操作全てを行うものです。もちろん、緊急時の対応などもシステム側で対応します。
このレベル5まで到達すると、人間のドライバーは運転に関する操作をする必要がなくなり、映画の世界のような自動車が実現すると言うことです。こうなってくると、ハンドルやアクセルペダルなど、車内に必要になる装備も変わってしまいますので、自動車の姿も大きく変わることになるでしょう。
ただし、市販段階でレベル5の自動車の開発に至っているメーカーはありません。

まとめ

今回は、注目度が高くなっている『自動運転』のレベルについてご紹介しました。自動運転に関しては、とにかく運転に関する操作を人間がしなくても良くなる自動車だと単純に考えている人も多いですが、そこにたどり着くまでには、やはり多くの課題を解決するための段階が必要になるのです。
現在、高速道路上で先行車に追随する技術が登場しており、これが自動運転なのだと考えている人も多いのですが、実は定義的にはまだ『運転支援』の段階なのです。自動運転は、人材不足が深刻化している物流業界待望の技術なのでしょうが、法律的にもクリアしなければならない問題もまだ多く、本格的な運用にはまだまだ時間がかかるのではないかというのが筆者の考えです。
しかし、人為的ミスのない自動運転であれば、渋滞の緩和や事故の減少なども期待できるため、できるだけ早く実現してほしいものだと思います。