近年、さまざまな業界で『DX(デジタルトランスフォーメーション)』が推進されているという情報を耳にする機会が多くなっていると思います。実際に、日本政府では、2018年5月に「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」と言うものを立ち上げており、世界的な競争力を維持して日本経済を成長させるため、日本全体のDXへの取り組みを進めています。
そして、日本国内の産業界でDXが推進される中、コロナ問題発生以降、外食産業で急速にDX化を推し進めていこうという動きが広がっています。外食産業でのDXへの取り組み例は、飲食店でのロボットの活用が目立つようになっており、コロナ禍で人との接触を減らし感染拡大防止をしながら、従業員の労働生産性や顧客の利便性向上まで目指せる対策として期待されています。
そこでこの記事では、コロナ禍で急速に拡大している外食産業でのDXへの取り組み事例をいくつかご紹介していきます。なお、「DXって何?」と言う方がいれば、以前、別の記事で解説していますので、まずはそちらの記事をご確認ください。
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Contents
外食業界でのDX取り組み事例
近年では、さまざまな業界でロボットの活用による省人化、業務効率改善が目指されています。そして、外食産業においても、ロボットによる無人配膳などの実証実験が積極的に行われるようになっており、さらに今年に入り、調理までをロボットが行う完全無人のレストランが試験的にオープンしています。
そこでここでは、コロナ禍で急速に推し進められている外食産業でのDXについて、いくつかの事例をご紹介していきましょう。
スマート案内ロボット『KettyBot』
まずは、新型コロナウイルスの感染拡大防止をロボットにより実現しようとしている株式会社SGSTが展開するサービスロボット「KettyBot」です。人との接触を減らす事が求められている現在、飲食店やレジャー施設、医療機関向けのロボットによる非接触サービス化が推し進められています。
そして、2021年12月から、外食大手のワタミグループが運営する「焼肉の和民」の一部店舗で、スマート案内機能を搭載したサービスロボット「KettyBot」が導入されています。このロボットは、来店したお客様を席まで案内し、ロボットに搭載された大画面のサイネージを利用して、店舗やサービスの詳細を説明、さらにはファーストオーダーをとるという業務を担うそうです。
『KettyBot』の導入により、お客様の案内からファーストオーダーまでを無人化することができ、コロナ対策と従業員の業務効率化を一気に実現しています。
運搬・配膳ロボット『Lanky Porte』
次は、配膳や下げ膳など、飲食店でのホール業務の無人化を実現できる運搬・配膳ロボット『Lanky Porte』です。現在、実証実験に協力してくれる飲食店を募集中とのことですが、2021年8月に食堂「道楽や ねこん家」で行われた実証実験の様子が公式サイトで紹介されていますので、ぜひ確認してみてはいかがでしょうか。
この配膳ロボットは、出来上がった料理を棚へ載せて、頭部のディスプレイより配送先のテーブルをタップするだけで、お客様のテーブルまで料理を運ぶ仕組みとなっています。さらに、ロボットから「お済みのお皿がございましたら、私の棚へお載せください」という音声アナウンスが流れますので、顧客が戸惑うことなく下げ膳業務が完了します。
小規模な飲食店などであれば、配膳をロボットに任せるだけで、調理や会計業務に注力できるようになるため、かなりの業務負担が軽減されると期待されています。
羽田イノベーションシティにロボットレストラン登場
最後は、つい先日オープンしたロボットレストランです。これは、2022年4月20日に川崎重工業が自社のロボットを実証するスペースとしてオープンさせたもので、一般客もロボットレストランを体感できる場所として注目されています。
このロボットレストランは、調理から配膳、顧客が食べ終わった後の食器の回収やゴミ捨て、テーブル拭きまで、レストラン業務の全てをロボットが行うという、未来の飲食の形を体験できるスペースとなっています。
来店した顧客は、テーブル上に設置されたQRコードから専用サイトを開き、注文と決済を行います。そうすれば、調理場に設置された産業用ロボットが、レトルト食品の湯煎やレンジ加熱を行い、冷蔵庫からサラダを出してトーレーにのせるようになっています。出来上がったトレーは、自走式の配膳ロボットが顧客のテーブルまで運びます。そして、配膳ロボットには、2本腕がついており、料理の提供はもちろん、食後の食器の回収やテーブルの片づけまで自動化するという画期的なレストランになっています。飲食店で活用されている他の配膳ロボットは、顧客のテーブルまで行くだけで、料理の受け取りは顧客の手で行うというロボットが多いのですが、このレストランでは、テーブルに提供するまでをロボットが行っています。現状、提供されているメニューはまだ少ないですが、未来の飲食店を体験できる面白い場所なのではないでしょうか。
まとめ
今回は、コロナ禍で急速に広がっている飲食業界でのDXの取り組み事例をご紹介してきました。飲食業界でのDXについては、コロナ禍以前からもさまざまな取り組みは行われていました。ただ、コロナ禍以前の飲食店でのDXを考えると、各テーブルにタブレットなどを設置し、その機械から注文ができるようになるなど、非常に限定的な対策が多かったように思えます。
これが、非接触化が非常に重要視されるコロナ禍の状況で、飲食業界へのロボットの導入が急激に推し進められるようになっています。飲食店のロボットによる自動化は、感染症対策に役立つだけでなく、少子高齢化による人手不足の解消などにも役立つ技術だと期待されています。
今後、いろいろな場所で、ロボットレストランが試験的にオープンしていくと予想できます。近くにできた時には、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか?