食品工場の建設プロジェクトでは、様々な法令に配慮が必要です!

今回は、食品工場の建設プロジェクトにおいて、チェックすべき関連法規についてご紹介していきたいと思います。食品工場の建設プロジェクトでは、建設にかかるコストやスケジュール管理などが非常に重要な要素となりますが、建設計画前のフェーズで、地方独自の条例、製造品目によって関係する許認可・法令など、関連法規をチェックすることも非常に重要なポイントとなります。
特に食品工場というものは、取扱製品の保存性や包装形態、取引先から求められる衛生管理レベルなどに応じて求められるスペックも千差万別です。したがって、事業の方向性を総合的に考慮して、最適な工場建設プロジェクトを進めるためには、配慮しなければならない法令がたくさんあるのです。
そこで本稿では、食品工場の建設プロジェクトを円滑に進めていくために、建設前のフェーズでチェックしておくべき法令をご紹介します。

チェックしておくべき関連法規について

それでは、食品工場の建設プロジェクトでチェックしておくべき関連法規をご紹介していきましょう。

※一部は「工場建設に必要な法律・条令や手続きについてご紹介」でもご紹介しています。

工場立地法

一定規模以上の特定工場を建設する場合には、生産施設の面積を一定割合に抑え、一定割合以上の緑地を整備することを義務付ける『工場立地法』に注意しなければいけません。ここで言う特定工場とは、以下の2つの条件を満たす工場です。

  • 業種:製造業、電気・ガス・熱供給業(水力、地熱及び太陽光発電所は除く)
  • 規模:敷地面積 9,000㎡以上 又は 建築面積 3,000㎡以上
工場立地法は、簡単に言うと「工場の建設時は、公害や環境破壊などを防ぐため、積極的に地球の環境づくりに参加しましょう」という法律ですが、詳細は別記事にまとめていますので、以下をご参照ください。
工場立地法ってご存知ですか?いつ、なぜ出来たのかを知っておきましょう!

都市計画法

都市計画法は、以下の目的のために作られた法律です。

都市計画の内容及びその決定手続、都市計画制限、都市計画事業その他都市計画に関し必要な事項を定めることにより、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、もつて国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。
引用:国土交通省 都市計画法より

都市計画法は、建築基準法と密接な関係があり、都市における建築を規制するものとなります。工場建設時には、建ぺい率や容積率が都市計画法で決められ、前面道路幅員等に応じた制限が建築基準法によって加わります。

大気汚染防止法

この法律は、国民の健康を保護するとともに、生活環境を保全することなどを目的として昭和43年に制定されたものです。制度の概要は以下のようになっています。

大気汚染防止法では、固定発生源(工場や事業場)から排出又は飛散する大気汚染物質について、物質の種類ごと、施設の種類・規模ごとに排出基準等が定められており、大気汚染物質の排出者等はこの基準を守らなければならない。
引用:環境省 大気汚染防止法の概要より

食品工場ではあまり関係なさそうに思えますが、決して無視できない法律です。

水質汚濁防止法

水質汚濁防止法は、文字どおり水質の汚濁を防止する法律です。そもそも水質汚濁とは、人為的な活動が原因で河川や沿岸海域など、公共の水域が汚れてしまうことを指しています。近年では、法律が整備され、汚水を直接川や海に流さないようなシステムとなっていますが、日本には過去に水質汚濁が原因で「水俣病」や「イタイイタイ病」という公害病が発生した苦い記憶があります。
そのため、水質汚濁防止法で『特定施設』に定められている場所は、使用した水を河川に放出する際に厳しい制限が設けられています。水質汚濁防止法の制度概要は、以下のように定められています。

水質汚濁防止法では、工場や事業場から排出される水質汚濁物質について、物質の種類ごとに排水基準が定められており、水質汚濁物質の排出者等はこの基準を守らなければならない。
引用:環境省 水質汚濁防止法関係資料より

悪臭防止法

悪臭防止法の目的は以下のように定められています。

悪臭防止法は、規制地域内の工場・事業場の事業活動に伴って発生する悪臭について必要な規制を行うこと等により生活環境を保全し、国民の健康の保護に資することを目的とする。
引用:環境省 悪臭防止法の概要より

一般的に「不快なにおい」のことを悪臭といいます。しかし、「不快なにおい」について一様な定義は難しいものです。好みのにおいというものは、人それぞれ違い、例え同じ人であっても状況によって感じ方が違うものです。例えば、食品工場で考えた場合、よく口にする好きな食品のにおいであっても、それを毎日かいでいると、うんざりする気持ちになる人も多いことでしょう。
したがって、水質の汚濁や大気の汚染などと同様に、『悪臭』も公害と判断されますので、悪臭防止法もチェックする必要があります。

上記以外の法令について

食品工場の建設プロジェクトでは、上記のような様々な法令を遵守しなければいけません。また、上記以外にもチェックしておかなければいけない法令もありますので、以下でまとめてご紹介します。

振動規制法 工場及び事業場における事業活動並びに建設工事に伴って発生する相当範囲にわたる振動について必要な規制を行うとともに、道路交通振動に係る要請の措置を定めること等により、生活環境を保全し、国民の健康の保護に資することを目的とする。
参考:e-Gov
騒音規制法 工場及び事業場における事業活動並びに建設工事に伴つて発生する相当範囲にわたる騒音について必要な規制を行なうとともに、自動車騒音に係る許容限度を定めること等により、生活環境を保全し、国民の健康の保護に資することを目的とする。
参考:e-Gov
省エネ法 省エネ法の下、エネルギーの使用の合理化に努めるとともに、電気の需要の平準化に資する措置を講ずるよう努めなければなりません。
参考:資源エネルギー庁資料より
食品リサイクル法 食品関連事業者(製造、流通、外食等)による食品循環資源の再生利用等を促進することが目的。
参考:農林水産省HPより

まとめ

今回は、食品工場の建設プロジェクトにおいてチェックしておかなければならない様々な法令をご紹介してきました。このように食品工場を建設するには、建築基準法に基づく確認申請をはじめとして開発許可申請、工場立地法届出などさまざまな手続きが必要となります。こういった手続きを進める場合には、高い専門知識が必要になるため、自社の従業員で法令を調べて各種申請を進めるのは現実的ではないかもしれません。
食品工場の建設プロジェクトは、行政機関との協議で、事業者として主張するべき局面に出くわすことも多いため、経験豊富なコンサルタントや建築士、建設会社などに相談することをオススメします。

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