最近話題のIoT。導入に失敗しないために注意したいポイント

昨今、工場や倉庫などでは、「工場(倉庫)の自動化」「工場のIoT化」「見える化」などと言ったキーワードがよく聞かれるようになっており、このサイトに訪問していただいている方の中にも、『自動化』や『IoT』と言ったワードを使って検索されてきている方が多いようです。実際に、物流の拠点となる倉庫や製造を担う工場などでは、急速に自動化やIoT化の波が来ていると言われており、生産性の向上や業務効率化、人材の最適化などを考えた場合にはIoTの導入が必要不可欠になってくると予測されています。
しかし、実際には、せっかくIoTを導入しても失敗に終わることも珍しくないと言われています。多くの企業がIoTの導入を検討しているものの、IoTなどの最先端技術の導入には、当然多額のイニシャルコストがかかってしまうことになりますし、導入後の運用も考えると無闇矢鱈に導入するわけにもいきません。
そこで今回は、IoTプロジェクトを成功に導くために注意しなければいけないポイントについて考えていきたいと思います。

IoT導入を失敗しないためのポイント

近年、さまざまな企業がIoTの導入に踏み出しているという話をよく耳にし、「自社もIoT導入を急がなければ…」と不安に駆られている方も多いかと思います。特にインターネットなどで公表されるIoT事例は、成功事例ばかりが紹介されている印象ですので、多くの方はIoT導入後の成果にばかり目が向いてしまいがちです。しかし、工場や倉庫などにおいて、今までにない技術を導入するのですから、当然、成功事例ばかりでなく数多くの失敗事例も存在しているのです。
実際に、2017年にアメリカのシスコシステムズが発表した「IoT(Internet of Things)プロジェクトの戦略や方向性の策定に携わったITリーダーや経営層に対して行った調査結果(2017年4月実施、回答者1845人)」では、携わったIoTプロジェクトが「完全に成功した」と答えた企業・組織は、全体の26%にとどまっており、なんと全体の60%は『PoC(概念実証/導入前実機検証)』の段階で中止されているのです。
このように、IoTの導入は、成功の割合がまだまだ少なく、失敗しないためには事前に十分な検討を行うことが必要だということがわかります。それではどういった事に注意をすれば良いのか以下で見ていきましょう。

参考:シスコシステムズが公表したデータ

導入の目的を明確に

IoTを導入する場合に重要なのが「何のためにそれを導入するのか?」という目的を明確にすることです。例えば、企業が何らかのITシステムを導入する場合、事業運営に関わる課題を解決することが目的となります。そのため、ITシステムはあくまでも課題解決の手段であり、「導入そのもの」が目的となることはありません。
IoTも同様で、導入する目的が不明確なまま、何らかの技術を導入したとしても、生産性の向上や業務効率化などの成果に結びつくことはほとんどないでしょう。近年、多くの企業がIoTの導入を行っているため、同業他社の成功事例を耳にして「自社もIoTを導入しなければ競争に負けてしまう…」などと言った漠然とした不安を理由に導入したとしても、その技術をうまく使いこなせないのであれば、無駄な投資になってしまうことでしょう。
工場や倉庫に関わらず、どのような業界の企業だとしても、それぞれの企業ごとに異なる課題というものがあるはずです。したがって、まずは自社の課題を明確にして、その課題を「解決する手段」としてIoTの導入を検討するという順序が正しいと言えます。目的が明確になれば、IoTの導入による成果の検証などもスムーズに進めることができるようになります。
IoT技術は、あくまでも「自社の課題を解決するための手段」ということを頭に入れ、明確な目的のもとプロジェクトを進めることが成功への近道になるはずです。

リスク回避も重要

上述したように、成功事例もあるIoTの導入ですが、現状まだまだ成功率が高くないのが実情です。そのような状況下で、いきなり大規模なプロジェクトをスタートしてしまうのは、非常に大きなリスクを抱えることとなってしまいます。したがって、できるだけリスクを少なくするためには、スモールスタートをおすすめします。

スモールスタートで小規模なプロジェクトに着手した場合であれば、万一失敗したとしても、経営に対する負担を小さくすることができます。また、試行錯誤でより良いプロジェクトを目指す場合にも、負担が小さければ恐れずに挑戦することができ、失敗からより良い結果に導くこともできるでしょう。さらに、小規模なプロジェクトであれば、スピーディーに物事を進めることができるのもメリットの一つとなります。プロジェクトを進める際に表面化するさまざまな問題に、迅速に対応することができます。
何らかの課題を解決するために、IoTの導入を検討した場合には、全ての課題を一気に解決しようとするのではなく、できることから徐々に進めていくのが良いのかもしれません。

パートナー企業との協力が重要

上述したシスコシステムズの調査結果の中では、IoTプロジェクトの主な成功要因として「社内外のパートナーシップ」という点を約半数の方があげています。IoTプロジェクトを成功に導くには、導入する企業の努力だけでなく、協力してくれるパートナー企業との共創が非常に重要になるのです。

例えば、工場や倉庫において、何らかの課題解決のためIoT導入を実現しようとした場合、果たして他社の力を借りずに自社の人員だけでできるものでしょうか?当然、IoTの導入には、工場や倉庫の運営に関する知識だけでなく、ITやシステム開発などの知識やスキル、経験が必要になってきます。ただでさえ人材不足が問題となっている工場や倉庫で、IoT導入のためのさまざまなスキルと経験を持ち合わせた人材を、社内リソースだけで賄うのは非常に困難なことだと考えられます。もちろん、パートナー企業に任せっきりにしてしまうのも好ましくありませんが、それぞれの強みを生かしながら協力してプロジェクトを進めていけるような協力会社を見つけることがとても重要となります。

まとめ

今回は、工場や倉庫など、さまざまな企業でIoT導入を進める場合に注意しておきたいポイントをご紹介しました。IoTは、工場や倉庫において、生産性の向上や業務効率化、人材不足の救世主などともてはやされており、多くの企業が導入を検討していることだと思います。確かに、IoTを導入して、さまざまな課題を解決できたという成功事例も非常に多く存在しており、政府の資料などでも積極的に公表されています。そのため、IoTの導入はそこまで難しいものではなく、必ず自社の助けになってくれるものだと考えている方も多いのではないでしょうか?

本稿でご紹介したように、さまざまな業界で大注目となっているIoTですが、まだまだ成功率に関しては高いとは言えず、失敗したときのリスクというのも考えておかなければならない物なのです。特に、競合他社のIoT導入の話を聞いて、「自社も導入しなければおいて行かれる…」と、目的も明確にしないままプロジェクトを進めてしまうと、高確率で失敗してしまうこととなるでしょう。
成功したときには大きな成果が得られるものですが、IoTの導入は目的ではなく、あくまでも課題解決の手段だということを忘れないようにしましょう。

IoT倉庫工場自動化