近年、製造現場である工場では『人手不足』が深刻な問題となっています。もちろん、物流関連など、その他の業界でも人手不足が深刻化しているというニュースが取り上げられることもありますが、そもそも人材育成に多大な時間のかかる製造業では、団塊世代の大量退職なども重なり、今後の事業継続すら困難な企業もあると言われています。
このような状況下で、人手不足の解決策として注目されているのが、工場へのロボット導入による自動化です。製造現場へのロボット導入は、今まで人が行っていた作業を自動化することで、業務の効率化はもちろん、品質向上や生産性のUPなど、さまざまなメリットがあると言われています。しかし、一口に「製造現場へのロボット導入」と言っても、工場によって取扱製品や作業環境も異なるため、抱えている課題は千差万別です。したがって、実際に工場へのロボット導入を考えた場合には、ロボットによる自動化で「どのような課題が解決に導けるのか?」ということをきちんと知っておかなければならないでしょう。
最近では、ロボットの低価格化や補助金制度の充実により、中小企業でのロボット導入のハードルも下がってきていると言われています。ただし、ロボットによる作業は万能ではないため、「自社の課題を解決するためにはどのようなロボットが必要なのか?」ということをしっかりと考え導入を進めなければいけません。
そこで本稿では、ロボット導入によって得られると言われる一般的なメリットと、解決できると言われる課題をご紹介します。
Contents
ロボットを導入することのメリットとは?
平成30年7月に経済産業省が発表した資料では、製造業における94%以上の大企業・中小企業で人手不足が顕在化しているとの調査結果が出ています。さらに、その中の32%の企業は「ビジネスにも影響が出ている」と回答しています。
工場では、高い品質の維持や生産性の向上が永遠の課題とされていますが、深刻な人手不足によって品質の維持どころか事業継続すら困難な状況に陥っている企業も少なくはないでしょう。さらに、少子高齢化による労働人口の減少や、製造業界自体のイメージもあり、今後も人材確保が難しいと言われています。したがって、最近ではさまざまな課題解決に役立つと言われるロボットの需要が高まっているのです。
それでは、工場などの製造現場にロボットを導入すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?以下にロボット導入によるメリットの一例を挙げてみましょう。
- 人手不足の解消
今まで人が行っていた作業をロボットに任せることができます。 - 生産性の向上
ロボットによる自動化は、作業効率の向上をもたらし、結果的に生産性の向上にも役立ちます。 - 品質の向上、安定化
ロボットによる自動化は、人的ミスもないため、24時間体制で高い品質を維持したまま、安定的な生産が可能です。 - トレーサビリティ向上
生産データ収集によって不良品の発生原因の追跡が容易になります。 - コスト削減
人件費の削減や、労働力不足の地方でも工場の稼働が可能になるため、コスト削減につながります。
参考資料:経済産業省『製造業における人手不足の現状』
ロボット導入で解決できる課題とは?
それでは上記のメリットを踏まえたうえで、『ロボット導入で解決に導ける課題』についてもう少し具体的に見ていきましょう。
人にとっては危険な作業環境でもロボットなら効率よく作業できる
製造業の工場は『きつい・汚い・危険』の頭文字をとった3Kという言葉があるように、人間にとっては危険を伴う作業環境も少なくありません。
例えば、室内温度が高温になるような作業現場では、熱中症対策のため頻繁に休憩を入れる必要がありますし、高所作業を伴う場合には、作業員の安全確保のため特別な装備を用意するなど、作業効率が多少悪くなったとしても作業員の安全を優先する必要があります。つまり、こういった『人にとって危険な作業環境』は、安全確保の工程が必要になり、生産効率も低下し、それなりのコストも必要になってしまうことが課題となるのです。
製造現場での人手不足は、上述した『きつい・汚い・危険』の3Kのイメージが深くかかわっているため、ロボット導入により『工場の作業は過酷…』というイメージの払しょくができれば、新しい人材の確保も期待できるのではないでしょうか。
長時間労働による人的ミスの解決
工場での作業には、製品の品質確認や仕分け、部品ごとの梱包など、人海戦術で行う単純作業も少なくありません。しかし、人間は、単調な作業を長時間続けると集中力が低下してしまうものです。したがって、工場などの製造現場では、集中力の低下による人為的ミスの増加が常に課題となります。
したがって、こういった単純作業の自動化は、人員の最適化にもつながり、生産性向上も期待できます。
まとめ
今回は、工場にロボットを導入することのメリットや、ロボット導入によって解決できる課題についてご紹介してきました。日本は、昔から『ものづくり大国』と呼ばれているように、製造業界が日本の経済を支えていたといっても過言ではないでしょう。しかし、現在では、『過酷な作業現場』『危険な作業現場』といったイメージや少子高齢化による労働力不足もあり、業界全体が深刻な人材不足の課題を抱えていると言われています。こういった課題を解決する一つの方法である『ロボットによる工場の自動化』は、今後も注目を集めることでしょう。
ただし、ロボットの導入には多額のイニシャルコストがかかるのも事実ですので、まずは、自社の課題をきちんと洗い出し「それに対応できるロボットはどのような物なのか?」ということをきちんと考えなければいけません。むやみやたらにロボットを導入したとしても、適切な運用ができなければ期待するほどの効果を得ることは難しいものです。したがって、ロボットの導入を考えた場合には、現状の作業手順をもう一度見直してみて、どこに改善点があるのかを社内で話し合ってみるのも良いのではないでしょうか。
本稿でご紹介したように、ロボット導入による自動化は、さまざまな課題を解決に導くことができるものですので、ロボットを導入する際は、既存の作業手順に固執するのではなく、「より良い職場」にするため、幅広く可能性を検討することがオススメです。