最近よく聞く『産業用ロボット』。その種類と活用事例をご紹介します!

今回は、テレビのニュースや新聞などのメディアでも耳にすることが多くなってきた『産業用ロボット』について、「そもそも産業用ロボットってなに?」や「どういった場面で活躍しているのか?」という基礎知識についてご紹介していきます。
一般生活の中でも、外出中に自動で室内の掃除をしてくれる自動掃除ロボットや、お店の入り口で店内の紹介をしてくれるような案内ロボットなど、私たちの普段の生活の中にも急速にロボットの普及が進んでいるように思えます。ロボットの普及は、個人の生活を便利にする目的だけではなく、工場や倉庫での作業において『人を助ける機械』として利用されるものも多く開発されています。皆さんも、ものすごいスピードで正確な作業を行う『ロボットアーム』などをテレビやネットニュースで見たことがあると思います。
それでは、こういった『人を助ける機械』はどのようなケースで活用されているのでしょうか?今回は、工場や倉庫で活用される産業用ロボットの種類や、実際の活用事例をご紹介していきます。

そもそも『産業用ロボット』の定義って?

最近では、様々な場所で『人の手助け』をしてくれるロボットが活躍するようになっています。上述したように、飲食店で接客を行う案内ロボットや、一般住宅において無人で作業を行うようなロボットもありますが、こういったロボットの全てが『産業用ロボット』に分類されわけではなく、産業用ロボットにもきちんと定義があります。まずは、簡単にですが『産業用ロボット』の定義をご紹介しておきましょう。

自動制御による各種機能を有する機械が産業用ロボット

産業用ロボットは、日本工業規格(JIS)『JIS B 0134』によって「自動制御によるマニピュレーション機能または移動機能を持ち、各種の作業をプログラムにより実行でき、産業に使用される機械」と定義されています。これをもう少しかみ砕いて説明すると、「食品工場やその他製造工場において、製造の自動化のために用いられるロボットが産業用ロボットである」という感じです。
産業用ロボットは、多目的な用途に適応するマニピュレータ(機械の腕)とプログラムで制御される複数の軸(人間の関節のような物)で構成されており、人の手の動きのように掴む・離すといった制御が可能です。もちろん、一つのロボットで全ての作業を担うことは難しいですが、ライン作業の各工程に必要なロボットを導入すれば、ライン作業のすべてをロボットに任せる事ができるようになります。したがって、従来は人を各工程に配置していたものが、ロボットのオペレーティングや運用のみの人員だけで作業を回すことができるようになり、人件費の削減が見込めます。また、過酷な労働環境をロボットに任せることで、従業員の危険や負担を減らすことでき、疲労からの人為的ミスの減少など、製品品質の均一化も図れるようになります。

『産業用ロボット』の種類

工場の自動化には欠かせない『産業用ロボット』ですが、ひとくちに『産業用ロボット』といっても様々な種類が存在しています。もちろん、ロボットの種類によって得意な作業が異なりますので、主な産業用ロボットの種類と特徴はつかんでおいた方が良いでしょう。

  • 垂直多関節ロボット
    現在、最も多く活用されているのがこのタイプです。垂直多関節ロボットは、人間の腕のような形状をしており、自由度の高い3次元的な動きが可能です。一般的に『ロボットアーム』と呼ばれるタイプの産業用ロボットがこれです。
    このタイプは、汎用性が非常に高いため、搬送から溶接や塗装、組立まで非常に幅広い工程で利用できるのが特徴です。
  • 水平多関節ロボット(スカラロボット)
    水平方向にアームが作業するタイプの産業用ロボットです。このタイプのロボットは、平面的ですが正確かつ高速な動きができますので、基盤の組み立てや部品の押し込み作業に適していると言われています。また、垂直多関節ロボットと比較すると、シンプルな構造になるため、「制御がしやすい・強度が高い」という点が特徴となります。因みに英語では「selective compliance assembly robot arm」となるため、頭文字をとって『SCARA(スカラ)ロボット』とも呼ばれます。
  • パラレルリンクロボット
    並列なリンク機構を介して1点の動きを決める方法をパラレルメカニズムというのですが、この機構を応用したロボットをパラレルリンクロボットと呼びます。複数のアームで最終出力先を制御するため、高精度・高出力な動作が可能になるのが特徴です。ただし、可動範囲が狭い、重量物の扱いができないという難点があるため、主に食品の選定や整列に活用されます。
  • 直交ロボット
    単軸直動ユニットを組み合わせたシンプルな機構で、直線的な動作が特徴の産業用ロボットです。このタイプは、構造が非常にシンプルなので、誤作動も少なく、低出力で省エネというメリットがあります。また、直線的な移動のみなので作業が限定されるロボットなのですが、構造がシンプルな分、他のロボットと組み合わせる場合に自由度が高いのが特徴です。近年では、多関節ロボットとの組み合わせで、製造ラインの自動化に活用されるケースが増えています。

『産業用ロボット』の活用事例

それでは最後に、産業用ロボットがどのような場面で利用され、どのような効果をもたらしているのかをご紹介します。ここでご紹介する導入事例は、経済産業省の『平成29年度ロボット導入実証事業』の採用事例となります。

画像処理技術により重量計算を行う焼鳥整列ロボットシステム

従来は、製品規格を合わせるため、熟練の作業員が目視によって重量・形状などを判断し、手作業によって加工を行っていました。このような作業は、自動化・生産性の改善が困難だと思われていたのですが、熟練作業員の目視で担っていた作業を3次元画像処理が可能なセンサーで行い材料を選別、2台のスカラロボットで串挿し機に投入するシステムを導入しました。これによって、従来3人体制で行っていた作業が1人で出来るようになり、一人あたりの生産性は2.5倍向上しました。

協働ロボットとパラレルリンクロボットを組み合わせたラベル貼付システム

この工場では、商品出荷時に人が手作業で製品にラベルの貼りつけを行っていました。基本的に作業は、多人数による分散作業で進めるため、精度のバラツキ、貼付ミスが問題となります。そこで、これらの問題を解消するため、協働ロボットとパラレルリンクロボットを組み合わせたラベル貼付システムを導入しました。システムの導入により、従来の方法では作業員5名で9時間かかっていた作業が2名にまで省人化することに成功しました。さらに、貼付精度のバラツキも解消し製品品質の向上に役立っています。

事例参考:『ロボット導入実証事業 事例紹介ハンドブック2018』

まとめ

今回は、様々な場面で耳にすることが増えている『産業用ロボット』について、その基礎知識や活用事例についてご紹介してきました。産業用ロボットがどんどん進化している現在では、ロボットの導入で「人の仕事が奪われるのではないか?」といった不安の声を上げる人も増加しているように思えます。しかし、産業用ロボットの目的は、あくまでも『人の手助けをする』事ですので、あまり敏感になりすぎる必要はないと考えます。

ロボットによる自動化は、正確で高速な作業を可能にし、人為的ミスを減少させるでしょう。また、従業員の負担減少や生産性の向上につながる効果も確実に期待できるでしょう。もちろん、自社の課題を明確にしないままロボットの導入をしたのであれば、何の成果も得られない結果になることもあるでしょう。したがって、ロボット導入を考えた時には、きちんと自社の課題を追求し、事前準備を進めるようにしましょう。

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