近年、インターネット通販(Eコマース)の利用者が急増していることもあり、物流業界の人手不足はますます深刻化しているとも言われています。これは、単純に注文数が増加していることもありますが、最近では生鮮食品の通販なども一般化し、物流倉庫で取り扱う商品の種類が急増したことも原因の一つだと考えられます。従来の物流倉庫では、従業員が倉庫内を移動し、必要な商品をピッキング・梱包し、発送作業を行うというのが一般的な流れでしたが、現在のように膨大な種類の商品を抱える物流倉庫では、作業員への負担が大きくなっていると言われています。さらに、商品の種類、作業量が増えてしまうということは、それだけ人為的ミスが増加してしまう可能性も高くなってしまいますので、正確な作業が必要とされる物流業界では人手不足への対応が今後の大きな課題となっています。
こういった物流業界の課題を解決するため、近年注目されているのが『搬送ロボット』です。搬送ロボットは、人間に代わって商品や部品を運搬することができるロボットであり、物流業務の自動化や省人化を進めるための技術として、倉庫や製造工場への導入が進んでいます。少子高齢化が社会問題となっている日本で、今後さらに人材の確保が難しくなると言われている物流業界ですので、労働力不足を改善するために搬送ロボットの需要が高くなると予想できます。
そこで今回は、大手企業などですでに導入が進んでいる搬送ロボットには、どのような物があるのかをご紹介します。
Contents
搬送ロボットを導入することにより得られるメリット
まずは、搬送ロボットを導入した場合、実際にどのようなメリットが得られるのかについて考えていきましょう。今後、さらなる人手不足に直面すると予想されている物流業界では、さまざまな課題を解決するため、搬送ロボットへの期待は大きいのではないでしょうか。
倉庫の省人化・無人化ができる
人手不足が深刻な物流業界において、搬送ロボットの導入は非常に大きなメリットとなります。従来であれば、人間が倉庫内を移動してピッキングを行っていたものが、搬送ロボットに任せることにより、省人化・無人化することが可能になります。もちろん、その分だけ人件費を削減出来ますので、経費削減にもつながります。
さらに、人間では運ぶことができないような重いものでも、ロボットの労働力であればスムーズに運ぶことができ、作業の効率化にもつながります。
人為的ミスがなくなる
人間によるピッキング・梱包作業では、人為的ミスの可能性がゼロではありません。特に近年では、取扱製品の種類が急増していることもあり、ピッキング・梱包時の人為的ミスのリスクは高くなっていると考えられるでしょう。搬送ロボットを導入すれば、プログラムにより安定したパフォーマンスを実現しますので、こういったミスを削減できます。
人材の最適化ができる
物流倉庫での出荷作業は、主に「運搬」「ピッキング・梱包」に分けることができます。従来の方法であれば、出荷効率を上げるために、多くの人員を配置し、人海戦術で大量の注文をさばくのが普通でした。しかし、搬送ロボットを導入すれば、「移動」「運搬」をロボットが担ってくれるため、倉庫作業員は「ピッキング・梱包」だけに専念することができます。
これにより、倉庫内の単純作業に割いていた人件費を、他の用途に当てることができるようになるため、優秀な人材にはより高度な仕事を任せることができるようになるなど、人材の最適化を進めることが可能となります。
倉庫のスペースを最大限利用できる
近年、日本国内の一部の倉庫では、「AutoStore(オートストア)」のような自動倉庫システムが導入されています。
こういったタイプのロボットは、従来の物流倉庫のように従業員が移動するための通路を確保する必要が無いため、倉庫のスペースを最大限、有効利用することができるのです。自動倉庫システムに関しては、以前『最新のピッキングロボット『オートストア』はここまで来た!』という記事で詳しく紹介していますので、併せてそちらの記事も確認してみましょう。
世界で活躍する搬送ロボットをご紹介!
それでは、現在さまざまな物流倉庫で活躍する搬送ロボットをいくつかご紹介していきたいと思います。
アマゾンの倉庫内で活躍する『KIVA(キバ)』
まずは、amazonの倉庫内で利用されていることが有名な『KIVA(キバ)』です。この搬送ロボットは、「人がラックまで商品を取りに歩くのではなく、商品を並べたラックをなるべく近くまで運んでくる」というのがコンプトとなっており、注文から発送までの時間を大幅に短縮することを実現しています。
ただしこの『KIVA(キバ)』は、搬送ロボットのメリットとしてよく上げられる「人材不足を補う」や「作業の効率化」だけを目的としたものではなく、短時間で倉庫を構築することも目的としていると言われます。通常、倉庫建設には、物流作業を効率化するためマテリアル・ハンドリングの導入や棚の設置など、大掛かりな工事が必要となります。しかし、『KIVA(キバ)』のような搬送ロボットを利用すれば、そういった工事も必要最小限となり、すぐに倉庫作業を稼働することができると考えられているのです。
ニトリが導入した『Butler(バトラー)』
『Butler(バトラー)』は、2017年にニトリの西日本通販配送センターで日本で初めて導入され話題となった無人搬送ロボットです。この搬送ロボットは、インドの企業が開発したもので、ピッキングの自動化や商品棚を作業者の元へ正確に搬送することで、作業効率の大幅アップが期待できるものです。
因みに、日本ではGROUND株式会社が『Butler(バトラー)』の独占販売権を持っていますので、詳細は公式サイトを確認してみましょう。
日立が提案する搬送ロボット『Racrew(ラックル)』
最後は、日本企業の日立が開発した『Racrew(ラックル)』です。『Racrew(ラックル)』は、1日に数万件以上のオーダー受ける事業者向け工具通販で有名なモノタロウの物流センターで活躍しています。
この搬送ロボットは、上で紹介した『KIVA(キバ)』や『Butler(バトラー)』と同じく、商品棚を作業者の元まで正確に運んでくれることにより、ピッキング作業の大幅な効率化を実現するものです。モノタロウの倉庫内では、154台のロボットが1日に約1,300kmの距離を移動することにより、従来のピッキング作業と比較して約2倍の生産性の向上を実現したと発表されています。
まとめ
今回は、人手不足がますます深刻化している物流業界で、近年大注目の搬送ロボットについてご紹介してきました。最近では、インターネットを利用すれば、手軽に何でも手に入る時代になり、ネット通販市場は、今でも毎年10%ずつの拡大が続いているとも言われています。しかし、そのネット通販市場を支える物流業界では、日々増加する商品の種類やサイズの違いもあり、もはや人海戦術ではどうすることも出来ない局面に来ているとまで言われています。
さらに、日本国内では少子高齢化の問題もあり、物流業界の人手不足は時が経つとともにより深刻になっていくと予測されています。したがって、手遅れにならないうちに、自社倉庫の自動化や省人化に向けたシステム作りを進めることは、今後の事業継続のために、とても大切なポイントとなるのではないかと考えます。